昭和40年代に定番だったケーキあれこれ [喫茶店・レストラン・カフェ]

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昭和40年代、ケーキはまだ 喫茶店では、ケーキ屋併設の喫茶室以外では、どこにもなく、又、ケーキというもの自体が、日常的に食するものではなく、誕生日かクリスマスか 知人が特別感を持った日の土産として買ってきてくれるのみだった。

ケーキのラインナップは、大抵、ショートケーキ モンブラン スワン タヌキ サバラン アップルパイ、そんなところだったと記憶している。

ショートケーキは、苺ショートが出るのは春先だけで、その他の季節は、確か マスクメロンのスライスが乗せられている事が多かった。
当時 苺は、春にしか出回らない食材で、ちなみに クリスマスケーキも誕生日のケーキも、ホールケーキはバタークリームかチョコレートの二択だった。

モンブランは、カステラの土台にトッピングのニョロニョロはきんとんみたいにまっ黄色で、上には これまたまっ黄色な甘露煮の栗が鎮座していた。
味もきんとんそのもので、今思い返すと、あれは「半和菓子」だった。

そして、スワン。
これはシュークリームの上部のシューを半分に切ってスワンの羽の様にクリームに刺して スワンの首を模した「S」の字型のシュー生地をクリームの端っこにつけたものだった。
スワン形にせずに 単に「シュークリーム」という商品名で出していた店も少なくなかったが、私は、一寸工夫して あの美しいスワンに見立てる という意匠に、幼心に惚れ惚れしていた。
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それから、タヌキ。
これもまたカステラの土台に生クリームを雪だるま状に絞り チョコレートでコーティングし 目鼻をチマチマッと描き チョコレートの薄く丸く小さな耳をつけて タヌキの姿にしたもの。
店によっては「タヌ公」「ポン太」「タヌ吉」、そんなネーミングを与えられていたりもしていた。
私はどうも、見た目もネーミングもお洒落度が低いので、このケーキは食べる気にはなれなかった。

あとは、サバラン。
砂糖とホワイトラムを加えた水を熱しラムのアルコールを飛ばし ブリオッシュにたぷたぷに浸し、ブリオッシュの首の所を切って生クリームを少量挟みこんだもの。
私は幼い頃からラムの香りが無性に好きで、このサバランが圧倒的に好みだった。

最後に、アップルパイ。
これが一番 今現在売られているものと違いが少ないように思うが、やはり 現在のと比較すると、パイ生地のサクサク度 焼きリンゴのシャクシャク度が低かったように思う。

以上、昭和40年代に街によく在ったケーキ屋のケーキというのは、こういったものだった。
尤も、横浜や神戸や どこかの一流ホテルで修行をしてきた職人さんが開いた店には、世間一般的にはもっと時代が下ってから登場するケーキが並んでいたのかも知れないが。

だから、当時は、チーズケーキもミルクレープもコーヒーゼリーも無かった。
それらが一般的に市民権を得たのは、1970年代である。
ティラミスなんてのはもっと後で、1980年代バブル期だった。

あれらのケーキ、カステラを使ったものはパサパサでキメが粗く、生クリームを使ったものは、どへっと重たい食感がした。
したがって今食べると、決して「美味しい!」とは声を上げられない代物だと思うが、懐かしい「気分」先行で、も一度口にしてみたい気もしないでもない。

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