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喫茶店常連客として敗北を感じたとき [喫茶店・レストラン・カフェ]

あっし・ぼんぼち、中学1年の時から喫茶店マニアをやっておりやして、中高の6年間は、家庭教師の来る日以外は必ず、1日に一度ないしはニ度、あちこちの喫茶店の扉を押してまいりやした。

あっしが中高生だった時代は喫茶店全盛期で、街じゅうに喫茶店が溢れていた というのもあり、それはもう様々な喫茶店に行く事が、マニアとしての目標であり、これ以上はないという享しみでやした。
けれど数年前から、街から喫茶店が激減してしまったことや 自分好みの喫茶店の雰囲気が極めて明確になった事から、ほんの10店ばかりの特別お気に入りの店ばかりに通うようになり、そこで店主から「アナタは常連客です」と認められ、常連度を高めてゆくことに、喫茶店マニアとしての至福と誇りを覚えるようになっておりやした。
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過去記事「喫茶店で自分は常連だと実感するとき」にも綴ったように、あっしが喫茶店で、店主から暗黙のうちに「アナタは常連です」と認定されたと認識するのは、あっし一人を店に残し 店主が買物や両替へ行って お留守番を頼まれる事でやした。
それが 喫茶店常連客としての最高峰、山でいうと富士山の頂上だ と、それ以上の常連度の高さというのはあるワケがない と、信じてやみやせんでやした。
過去にお留守番を頼まれた店は4店あり、あっしは4店の店から、富士山の頂上に立てる旗を頂いたのだと 悦にいってやした。

ーーーところが!でやす!
これまでに2度ほどお留守番を頼まれたお気に入りの店の一店で、あっしがいつもどおりにコーヒーをすすっていると、開けられたままのレジ前に立った しょっちゅう顔を見る40代のリーマンと思われる男が、こんな言葉を発したのでやす。
「1000円入れとくから、250円の釣り 貰っとくね。まいどっ!」
男は慣れた手付きで札を入れ硬貨を摘み取りスタスタと店を出、マスターはカウンターの奥のそのまた向こうのガス台で、背中を向けてフライパンを振りながら、チラと振り向きもせずにこう返しやした。
「へぃ〜〜〜 まいどぉ〜〜〜」。
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あっしは手にしたカップがカチャカチャと震え あまりのめまいにソファに倒れ込みそうになりやした。
ーーーこっこっこんな高さの常連度があったとは!!!
マスターは、あっしが金を払う時は、いつもレジ前に出て来てくださって、「ハイ、○○円のお預りですから○○円のお返しです。毎度ありがとうございます。」と、丁寧に確認をし 丁寧に会釈をし あっしを見送ってくださるのでやす。
あっしが富士山の頂上だと思いこんでいた山は、実は高尾山(東京の小学生が必ず遠足で登る山)に過ぎなかったのだと 火を見るより明らかに眼前に見せつけられたのでやす。

しかーし!
キャリア45年もの喫茶店マニア・ぼんぼち、このままソファに倒れ込んで泡を吹いて気を失うワケにはいきやせん。
あっしは姿勢を立て直しやした。
真の喫茶店常連としての標高が、一瞬にして 霧が晴れたが如く判明した今、今日からは真の喫茶店常連の富士山の頂上を目指し、いつの日か 富士山頂上に旗を立てるのでやす!
がむばるぞ!おー!!

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国分寺にあったレストラン喫茶「アースホール」 [喫茶店・レストラン・カフェ]

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私が二十七才の時、母親は突然の病で死に、その後何ヶ月かの間、私は仕事らしい仕事もせずに ただぶらぶらと遊んでいた。
毎日 何をしていたかというと、その時住んでいた東京郊外の国立の家から歩いてゆける 隣街の立川や府中や国分寺の喫茶店に くつろぎに行っていたのである。

中でも殊に 私の内に印象深い店が、国分寺にあった「アースホール」である。
アースホールは、住所は国分寺市ではあったが最寄り駅は国立駅で、国立駅北口を出て少し北上し 続いて北東へのだらだら坂をのぼる途中に、まるで アメリカの片田舎のレストハウスのような、木造りだったかコンクリートだったかはもはや記憶におぼろだが、とにかく白いニ階建ての建物だった。

景気が良かった時代だったからか、大抵の店が「いらっしゃいませ」すら言わずに こちらが世間話のひとつも振ろうものなら あからさまに嫌ぁな顔をしてそっぽを向く店員が殆どだった中、アースホールのマスターは大変礼儀正しく 丁寧な接客をしてくださった。 四十代半ばと思われる 長髪に髭でぼうぼうに顔を囲った 二重まぶたの豊かな黒々とした瞳のマスターだった。

私はランチタイム遅くに行くことが多く、しばしばマスターと二人きりになった。
マスターは、最初の何度目かは さしさわりのないありていな話しをしてきたが、ある時、「僕は以前ヒッピーだったんです。それでインドに住んでいたんです」と仰った。
そして、「貴女はお仕事は何をなさっている方なのですか?」真っ直ぐに私に向いた。
「少し前まで画家をやっていましたが、今は何もやってません」と答えると、マスターは目を輝かせ、「そうでしたか!表現者でいらしたのですね!! 実は僕はインドから帰ってしばらくの間、音楽活動をしていたんです」
店の奥からシングルレコードを一枚取り出し、見せてくださった。
ジャケットには、マスターの顔のアップが、夕暮れのような色合いで写され、豊かな黒い瞳がこちらを見つめていた。

そのダイヤローグをきっかけに、マスターは真摯な態度で「表現者同志で語り合いましょう!」と、以降、店を訪れる度に、このテーマについてはどう解釈するか 等、話題を提供し、マスターは音楽の観点から、私は美術のそれから、理論的にかつ穏やかに論じ合った。 非常に実のある有意義な時間だった。

又 いつかのある日ーーー
ランチメニューが完売したのか、マスターがまかないを二人分作ってくださり、食べさせていただいたこともあった。
カシミール地方のカレーをマスター流にアレンジした というカレーだった。
噛む度にスパイスが弾け心地よく、プレーンヨーグルトが乗っているのも面白いな と思った。

それ以前の時代は日本でカレーというと、イギリス経由で入って来た洋食としてのカレーか、蕎麦屋か食堂のカレーか、家庭のカレーか、インド人が経営している本場モノのインドカレーかのいずれしか無かったが、日本人が直接インドに行き 日本人の舌に合う様にアレンジしたカレーというのは、この時代には、元ヒッピーが所々で営っていた喫茶店やカレー屋だけだったと 私は記憶している。
加えてこれは私の分析であるが、現在そこここのカフェで「ウチのオリジナルカレーです!」と推されているカレーの源流というのは、このアースホールのまかないカレーに代表される様な、元ヒッピーの作るカレーであったと 結論づけずにはおれない。

何ヶ月か後ーーー
私は国立のカクテルラウンジでアルバイトを始め 起きる時間が夕方になったので、アースホールから足が遠のいてしまった。

時は経ち、三十八才になった時ーーー
私は国立の街を離れることになった。
引っ越しの前、三、四ヶ月は再び何もしないでぶらぶらしている期間が出来たので、懐かしさと期待と諦めとを軽く握った拳に込め 国立駅北口・北東へのだらだら坂をのぼったが、あの白い建物は、跡形もなく無くなっていた。

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飲食店で見た非常識な客ワースト5 [喫茶店・レストラン・カフェ]

私は外で飲み食いするのが大好きなので、毎日 様々な飲食店に出向いています。
たいていは心地よいひとときを過ごし 気分よく店を後にするのですが、稀に「あぁ、見たくない光景を見てしまった、、、」と不快になってしまうことがあります。
今回は、私が今までの人生で 偶然目の当たりにしてしまった 飲食店での非常識な客ワースト5を挙げようと思います。

第5位
ジャズを聴かせる大人の雰囲気のレストラン&バーにてーーー
私と友人の隣のテーブルの30代後半くらいのカップル。
男性が女性をひざの上に抱きかかえ キスをし続けていました。
チュッ!という軽い感じではなく ブチューーーッ!!レロレロと。
女性のほうもまんざらでもない様で、少しも抵抗する動きは見られませんでした。
私が正面に座っている友人と話をしようとすると どうしても 終始二人が目に入ってしまう位置だったので、友人に「後ろ、見てみ!」と振り向かせると、友人も 呆れて苦笑していました。
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第4位
そう広いキャパではない個人経営の喫茶店にてーーー
私がカップを片手にくつろいでいると、初老の男性が同年配の男女を引き連れ「11人だけど入れるよね」と入ってきました。
マスターが「申し訳ありません、11名様だとちょっと入りきれません」と断ると、男性は客席を指し、「あのテーブルとそこのテーブルをくっつけて あの椅子とそこの客の前の椅子を持ってきて、ソファには詰めれば○人は座れるから11人座れるじゃないか!」と憮然と発しました。
マスターが「それはちょっと、、、まことに申し訳ありませんが、、、」と再度断るも、男性は、「さっ!入った入った!」と マスターの言葉を一切無視して 仲間をぞろぞろと店内に引き入れました。
マスターは呆然とし、そして仕方なく注文を取っていました。

第3位
イマドキのオシャレなカフェにてーーー
私から近い席に着いた若い両親が、幼稚園生くらいの年齢の子供を テーブルの上に立たせてあやしていました。
そのカフェは、幼児向けのフォークやカップや椅子も用意されているなど 幼児を積極的に迎え入れる方針ではありましたが、そういった方針の店なら何をやっても構わないというものではないでしょう。
私がしばしば用事があって行く街に在ったので その度に利用していたカフェだったのですが、スタッフさんは何も注意をしなかったので、以来、その店に行くのをやめました。

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第2位
私が20代後半の頃アルバイトをしていたカクテルラウンジでは、こんな人がいましたーーー
社会的地位のあるらしい50代の男性。
私がカウンターの中で仕事をしながら テーブル席で飲むその男性をちらちら見ていたら、男性は、突然立ちあがりました。
トイレにでも行くのかな?と思っていると、しばらくその場で棒立ちになっていました。
そして、ソファの上にゲェェェーーーと大量に吐瀉物を吐き、謝りの言葉の一言もないどころか 何くわぬ顔で会計をして帰って行きました。
走ってトイレに駆け込めば 間に合う時間は確実にあったのに、、、
あれは、何か気に食わぬことがあってのマスターに対する嫌がらせだったのだろうか?と 今だに首を傾げずにはおれません。

第1位
某駅ビルのレストラン街の中華レストランにてーーー
私が定食を食べていると、私の目線の先のテーブルで、すでに食事を了えたおじいさんが 口から入れ歯を外し 冷やタンの中で入れ歯をジャブジャブ洗い始めました。
冷やタンの水は、みるみるモロモロとした食べ物の欠片がうずまき 黄土色に濁ってゆきました。
傍らには奥様と思われるおばあさんがいましたが、いつもやっていることなのか 当たり前の顔をして眺めていました。
食べ始めたばかりだった私は、続きを食べる気が全く失せ、その中華レストランを出ずにはおれませんでした。

様々な人が訪れる飲食店、稀に この様にとんでもない非常識な人が来るものですね。
店の人や他のお客さんに見られてどう思われるか、気にならないのでしょうか?
みなさんも、飲食店で、ここに挙げた人達に匹敵するような人を見たことありますか?

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日本語ハ難シイ?・Ⅰ [喫茶店・レストラン・カフェ]

我が家の近所に、味はどうということのない 店員さんがインド人のインド料理店がある。
そこの店員さんは、商店街など 店の外でばったり会った時にも笑顔で挨拶してくれるので、私はその気持ちが嬉しく、週に一、二度は その店でランチを食べている。

ランチは840円で、いつも1000円札を渡し160円の釣りをポンと貰って帰って来る。
が、ある時 1000円札がなく10000円札を出した。
店員さんは1000円札の束を取り出し 釣りを一枚づつ数え始めた。
「イチ ニ サン ゴ ロク ナナ ハチ・・・・・」
「?・・・・」、私は眉をしかめて「んんっ?」と言った。
店員さんは、もう一度 最初から数え始めた。
「イチ ニ サン ゴ ロク ナナ ハチ・・・・」
私が「4が抜けてるよ」と指摘すると、彼は「アッ!!」という顔をして、「イチ ニ サン・・・・ヨン・・・・ゴ ロク ナナ ハチ キュウ」と 9枚の1000円札と160円を渡してくれた。
私は彼が、まったく悪意があってやった事ではないと十二分に見抜けたので、なんだか微笑ましく「ふふふふ」と思った。

それから何度目か後にその店に行った時----
私がレジ近くのテーブルで食べていると、10000円札を出している客がいた。
例の店員さんが1000円札を数え始めた。
「イチ ニ サン ゴ ロク ナナ ハチ キュウ」
客はまるで気づかずに、8枚の1000円札と160円を受け取って店を出て行った。
私は、ちぎったナンを片手に一人 コロコロと笑ってしまった。
店員さんは、その日の閉店後、レジをしめて売り上げ計算をした時に、「アレ?何デ合ワナインダロウ?」と 首を傾げたことだろう。

インドは数学が得意な国なわけだし、早く 4を抜かさずに勘定出来るようになるといいねー!

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高円寺「ぽえむ」---喫茶店マニアイチオシの名店 [喫茶店・レストラン・カフェ]

私は中学一年の時からの喫茶店マニアで、昔は、ありとあらゆる喫茶店を探索して楽しんでいましたが、近年は、「ここぞ!」 と納得できた店に通い詰める派のマニアです。
店員さんに顔を覚えていただいたり ミルクや砂糖は入れないことを覚えていただいたり お気に入りの席を覚えていただいたり・・・・・・・そういった事に、「あぁ、自分はマニアだなぁ~」 と悦に入るようになりました。

そんな私が 最近、最も足しげく通っている喫茶店に 高円寺の「ぽえむ」があります。
----ぽえむは、フランチャイズのチェーン店ですが、ドリンクメニューは同じであっても フード&スイーツメニューやBGMや接客方針は店店により異なり、限りなく個人経営店に近い 個性溢れるチェーン店です。
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何故、私が最近 高円寺ぽえむに通い詰めているかというと----
そのきっかけとなったのが、BGMが 私の大好物のブルースや60Sロックである場合が殆どだと気づいたからです。
高円寺ぽえむには 二十年近く前から ごくたまに行ってはいたのですが、いつも手前側のスペースに座り、そこはBGMが聴こえなく、わりと最近 初めて奥のスペースに陣取った時に、そういう音楽が流れていると知ったのです。
飲み屋さんならいざ知らず、純然たる喫茶店で オールディーズではなくこのジャンルを流しているというのは 極めて稀です。
この要因によって、私は、「高円寺ぽえむに通ってみよう!」 と思いました。

通い始めて観察していると----、店員さんの接客態度が実に見事です。
言葉も所作も静かで丁寧で、私がブラックで飲む事をすぐに覚えてくださり、入店時に、「いらっしゃいませ!」に加えて 「こんにちは!」 と仰ってくださる事も、礼儀を重んじる中にも親しみがこもっていて とても好感が持て、思わずこちらも、「こんにちは!」 と返さずにおれなくなります。
営業時間が長く定休日が少ないので、店員さんは幾人もいらっしゃるのですが、どの店員さんもきちんとしておられて ガッカリの時間帯・曜日がないです。
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そして、ぽえむは100種類のコーヒーがある事がウリなくらいですから、コーヒーのお味も最高です。
ブレンドだけでも何種類もあり、私は、「チョコレートのような香りのする」 と説明書きの添えられた 「ダビンチ」というのを所望する事が多いです。
長時間居て、「もう一杯飲もう!」 という場合は、せっかくだから違うものをと、「フレンチロースト」を頼みます。
こうして二杯飲んで、味や香りの違いを楽しむのも一興です。
又、夕方以降 カフェインの強いものを摂れない時間帯には、紅茶やジュース類も充実しているために、何を飲もうか困らないのも気が効いていてありがたいです。

内装は、レンガと茶色の木造りで、あちこちにクオリティの高い抽象の水墨画が飾られ、決して広くはないながらも 心地良く落ち着ける空間です。
黒板には店員さん手書きのメニューがイラスト付きで描かれ、ここにも 店員さん達のやる気とお客さんを迎える気持ちの温かさがうかがえます。

と、先日----
高円寺のアーケードをぷらぷらと歩いていたら、後ろから早足で追い越し 振り返り にっこり会釈する若い男性がいました。
マスクをされていたので、一瞬 誰だか解からなかったのですが、もう一度会釈をされた瞬間、「あぁ!」 と解し、私も笑顔で会釈を返しました。
----高円寺ぽえむの店員さんだったのです。
店の外で常連客に逢った時にも すかさず挨拶する・・・・・・
これこそ、接客業のカガミだと感服しました。
人混みにまぎれてゆく店長さんの後ろ姿を眺めながら、「これから より足しげく 高円寺ぽえむに通おう!」 と、私が心に誓ったのは言うまでもありません。

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新宿に在ったマンモス喫茶「カトレア」 [喫茶店・レストラン・カフェ]

私は中学一年の時から喫茶店マニアだったので、家庭教師の来る日以外は毎日必ず ありとあらゆる喫茶店の扉を押してきたが、たいていそれは たった一人での享しみだった。
が、この店だけは 学友達と共にした。
マンモス喫茶「カトレア」。

カトレア.jpg新宿東口の ちょうど紀伊国屋書店の地下辺りに在り、ゆうに百席を越える客席が だだっ広いフロアに整然と並んでいた。
「マンモス」と冠するだけに、雰囲気で客を呼ぶ店ではなく どれだけ大人数の団体でも入れることをウリにしている店だった。
あらゆる職業の人をターゲットにしているためか、値段もかなり安かったように記憶している。
安いだけに、ケーキセットのケーキが なんとロールケーキだった。
イマドキのクリームやフルーツたっぷりのお洒落で贅沢なそれではなく、スーパーで五切れ分くらいの長いのを百円で売っている そういう菓子パンの類に分類される チープなロールケーキだった。

カトレア1.jpg一人で入ることもあったが、強烈に記憶に残っているのは、部活の先輩や後輩達と二十人余りでなだれ込んだことである。
中高一貫教育の学校だったので、部活も中高一緒で大人数だったのだ。
演劇部だったので 次回の学内公演の演目は何にするかなどを、スタニスラフスキーの「ス」の字も知らないくせに 「部内会議」と称して真剣に意見を述べ合ったりしていた。

カトレアを利用するのは我々演劇部だけではなかった様で、どこかの部のちょっと気の強い先輩が 「アルバイトのウェイターの誰それの態度は悪くてけしからん」というような抗議を店長にして、バイトウェイターの一人をクビにした という噂が流れてきたりもした。

私は大人になり、様々なタイプの喫茶店から 独自の雰囲気があったり何らかの意匠を凝らした喫茶店に好んで通うようになり、カトレアからは遠ざかってしまった。

それから何年か経ち、新宿地下を歩いている時-----
マンモス喫茶「カトレア」は なくなっていることに気づいた。
カトレアは完全に、私の中高生時代の想い出の一つへと 過去完了してしまった。


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不味かったケーキ [喫茶店・レストラン・カフェ]

普段は歩かない街を散策していた時、小腹がすいたのでケーキを食べることにした。
私は甘い物には別段うるさくないので、そこそこの味で小腹が満たされればそれで良いと思い、交差点の角に見つけたレストラン喫茶に入った。

他に客はいなかった。
「あの・・・・・ケーキのメニューはありますか?」
席についた私は、初老のママさんに尋ねた。
「ケーキなら ここの棚に並んでるから選んでね。 うちのケーキは美味しいわよぉ~! 特にね、これが本格的ドイツ風のでオススメよ!」
と、茶色に焼かれたボリゥムのある一品を指すので それを頼むことにした。

運ばれてきた本格的ドイツ風は、三色のカラフルなソースが添えられていた。
一口、口に含む。
・・・・・・・・・・・・・・・・不味いっ!!
今までの生涯でこんなにも不味いケーキに遭遇したのは初めてだった。
中学生が家庭科の授業で作ったケーキより明らかに低レベルの どうやったらこれほど不味く作ることができるのだろう?と首を真横に傾げたくなるほど ねっとりと小麦粉が重く べったりと甘すぎるケーキだった。
ソースをからめて味をごまかして食べようと思い、ソースをちょっと舐めてみる。
一舐めで、手作りではないと解かる 祭りの出店のクレープに塗られるソースのような チープでキッチュな不味さだった。

と、ママさんが近づいてきた。
「うちのケーキ、美味しいでしょ!美味しいでしょ!!すっごく美味しいでしょぉぉぉぉ~~!!!」
大型ブルドーザーが突進してきて大量の土砂をザザザーーー!!っと眼前に落してゆくような 力強い 自信に満ち満ちた勢いで発した。
「はっ?!・・・・・・えっ?!・・・・・・・えぇ・・・・まぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・美味しい・・・・・です・・・・はぁ」
私は、しどろもどろに小声で返した。
この様な態度で来られて、「いいえっ!不味かったですっっ!!」と 正直に真実を答えられる日本人がいるだろうか?
おそらく99.99パーセントの人は、私と同じ反応をし、そして心の中で「この店には もぅ二度と来るまい」と誓うのではなかろうか?

「そうなのよねーーー!!みんな美味しいって言うのよねーー!! うちの店のケーキを食べたら他の店のケーキなんて食べる気がしなくなるって みんな言うのよねーーー!!」
ママさんは、フロアじゅうに響き渡るほどの大声で弾むように遠ざかって行った。
終始、客は入って来なかった。
(下の写真が不味かったケーキ、実物)

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立川にも在った喫茶店「ボア」 [喫茶店・レストラン・カフェ]

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吉祥寺の駅近くの喫茶店ボアが閉店したというので、残念がる喫茶店マニアは非常に多い。
しかしどうしてだか、立川に在ったボアを、惜しみ懐かしむマニアには 出逢ったことがない。
何故だろう??? ボア立川店だって、東京喫茶店史に遺り続けるに値する 素敵な店だったのに・・・・・・。

ボア立川店は、立川高島屋の中二階に入っていた。
まだ高島屋が現在の場所ではなく、立川駅北口を出てすぐの所に在った時である。
一階が靴売り場。 その脇の階段をあがると、左側にレジ 正面の客席は、靴売り場を見おろせるように大きなガラス窓が嵌められていた。
そして左手に客席スペースは広がり、その奥が厨房になっていた。
赤いゆったりとしたソファには白いレースの掛け物が掛けられていた。
壁には、店のトレードマークである東郷青児の 霧にけぶる曇天の空の下のようなグレーの濃淡で描かれた 頭部の大きなたおやかな女性像の額が飾られていた。
私と弟は両親に連れられて、ほぼ毎日曜日、八王子のほうで食事をした帰りがけに 立川高島屋で買い物をし、衣類やら食器やらの入った袋をソファの両脇に置き、パフェにするかサンデーにするか迷ったものだった。
ボア立川店は、そんな純喫茶然とした喫茶店だった。-----無論、デパートの中に特殊喫茶が入っているわけはないのだが。

私の脳裏には、未だにそのままになっているボア吉祥寺店の看板の前を通る度に、吉祥寺店のくっきりとした思い出のみならず、立川店の紗のかかった映像が立ち現れる。

喫茶店マニア諸氏、ほんのちょっと前のことを惜しみ懐かしむのも 明確な思い出が数多く遺っていて楽しいが、もう一歩 時空をさかのぼって ひと昔前の店に思いを馳せて、淡い記憶の断片を引き出しつなぎ合わせるのも 乙なものではないだろうか?

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タグ:ボア 喫茶店
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西荻窪の喫茶店ビーインがテレビに紹介されて [喫茶店・レストラン・カフェ]

私が行きつけの西荻窪の喫茶店の一つに ビーインという店がある。
一杯一杯丁寧にサイフォンで淹れてくれる コーヒーの美味しい フードメニューも数多くある レトロ感溢れる内装の マスターお一人で勢よく仕切られている良店である。

先日 テレビを観ていたら、バラエティ番組にビーインが紹介されていた。
三人のタレントさんがそれぞれにフードメニューを頼み、街の飲食店の紹介としては長めと言える 5~6分は放映されていた。

ビーイン.JPG私は翌々日ビーインに行くや、マスターに、「テレビ観ましたよ。 けっこう長い時間出てましたね」と、紹介されて良かったですね!というニュアンスで言った。
するとマスターは、「ありがとうございます。 それがですね・・・・・・」と、こんな話を打ち明けてくれたのだった。

ビーイン西荻窪.JPG取材はなんと 日をおいて三度も来たのだそうだ。
その内、店の一番のウリであるコーヒーをサイフォンで淹れている様子をキャメラで追い、取材のタレントさんも一口飲むなり「美味しい!」と発したところも捉えていたという。
しかし 放映されたものを観たら、三日間の取材日数に対してはあまりにも短い放映時間で、肝心のコーヒーに関する部分が全てカットされていた-----というのである。

私は、内情を聞いてみないと解からないものだなぁ と思った。
そして、ビーインのマスターが気の毒に思われた。

飲食店は忙しい営業時間を割いて 取材に協力する。
それならテレビ局も、取材する店がいったい何を看板にしている店なのか、放映するにあたって何を前面に押し出すのが適正か、考えるべきではないだろうか?

これはディレクター及びその上に立つプロデューサーの責任だろう。
バラエティ番組など 読んでは捨てられる週刊誌のような存在・・・・・そういう感覚で作っているのかも知れない。
しかしもう少し、協力する側の事情や感情も考慮すべきなのではないだろうか?

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注文を取りに来なかった店員 [喫茶店・レストラン・カフェ]

私・ぼんぼちは喫茶店マニアで、中学生の頃からありとあらゆる喫茶店の扉を押してまいりました。
喫茶店は、私の最高のくつろぎの場です。
しかし、その喫茶店で 楽しい思いばかりをしてきたわけではありません。
無愛想な店員 つっけんどんな店員 客を小馬鹿にした態度の店員・・・・・
気分の悪いことにも多々出食わしてきました。
中でも強烈に負の印象に残っているのは これです。
----注文を取りに来なかった店員。
そういう店員が、二人いました。

どちらも、私が高校生の時のことです。
まず一人目は------
入店し席につき、店員がお冷やを持って注文を取りに来るのを待ちました。
けれど、いくら待っても来ません。
店員はすぐ見える位置に居て、私はアイコンタクトで「お願いします。注文取りに来てください」と意思表示をしました。
が、店員は、私をはっきりと見ていながら その位置に立ったまま動こうとしません。
私は何度も、アイコンタクトをとりました。
しかし店員は、私を認識していながら動きません。
するうち、店員が動いた・・・・・と思ったら、他のお客さんの器を片付けたりお冷やを継ぎ足したりし始めました。
喫茶店.jpg私は、店員が動きながらこちらを見る度に、アイコンタクトをくり返しました。
それが20分は続いたでしょうか?
近くの席に居た男性のお客さんが、「なんであのお客さんの注文を取りに行かないんですか?さっきから呼んでますよ」と、助け舟を出してくれました。
そこで初めて店員は、お冷やを持ってやって来ました。
けれどその時、「待たせてしまって申し訳ありませんでした」という言葉も態度もみぢんもありませんでした。

もう一人目は----喫茶店2.JPG
二階建ての店の二階席に座った時のことです。
むろん、二階フロア担当の店員はいました。
そこでも前述の店と同じように、何度アイコンタクトをとろうが、お冷やも持って来なければ注文も取りに来ませんでした。
店は、少しも忙しいわけではありませんでした。
アイコンタクトの行為を20分以上続けました。
しかし店員は、こちらを見るものの やっては来ません。
私はついに怒り心頭し、階段をトントンと駆け降りました。
一階のレジの所に店長と思しき中年男性がいたので、「なんでこの店は、お冷やも持って来ないし 注文も取りに来ないんですかっっっ!!」と訴え、扉に手を掛けました。
店長らしき男性は、「お客さん、ちょっとお待ちになってください!」と 慌てた様子で私を引き止めようとしましたが、私は、「もぅいいですっっっ!!!」と 小走りに店を出ました。
今思い返すと、店長らしき男性と一緒に二階へあがって、何故 注文を取りに来なかったのかを問いただせばよかったと思います。
もう一店の店も、「アナタはなんで ずっと注文を取りに来なかったんですか?」と怒ってやればよかったと。

今の私だったら、声を荒げ怒りをぶつけるところですが、まだ子供であった高校生の私には それができる勇気がありませんでした。
それにしてもその二人の店員が、何故ゆえどうして注文を取りに来なかったのか、いまだにさっぱり解かりません。


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