反体制の男・ゴジ!!!  [映画・演劇雑記]

十年近く前、銀座の交差点地下の劇場に 監督であるゴジさん(長谷川和彦氏)の トークショー付き「太陽を盗んだ男」を観に行ったことがある。
その時は、相米慎二監督追悼特集の一作品として再映されたのだった。
相米氏は、若かりし頃「太陽を盗んだ男」の助監督の内の一人だったから という理由だった。

太陽1.jpg虚無に生きる男が原爆を作り 国家に挑戦状を叩きつけ、最後は主人公もろとも吹き飛ぶという シノプシスからして型破りな 今となっては「伝説のカルトムービー」と呼ばれるこの作品が 劇場初公開されたのは、1979年である。
自分は、公開早々 学校帰りに渋谷の劇場に 一人でトコトコと観に行っており、又 その少し前に創られ 氏が全話 脚本を担当した 三億円事件を元に起こされたTBSドラマ「悪魔のようなあいつ」も欠かさず楽しんでいたので、両作品から浮かび上がる 浮遊感 破滅に向かう幻想 そして 何よりも 並々ならぬ反体制のエネルギーに、「この表現者は どんな人物なのだろう?」と 興味を覚えずにはおれないものがあったのだ。

トークショーが行われるのは、その日のラストの上映の前 2、30分程ということであった。太陽2.jpg
舞台には焼酎が置かれ、ゴジさんが登場した。
サングラス姿で ノシノシと巨体を揺らしつつ「おぅ!みんな!!」と 客席に手を挙げた。
我々観客一同は 拍手で迎え、立松和平原作「遠雷」の脚本の荒井晴彦氏が聞き手となり、さっそくトークが始められた。

と、ゴジさんは 本格的にロックでガンガン吞み始めた。
そして、相米氏の想い出話しをちょっとだけし、自身の作品のファン層が気になるのか、観客に 世代や「太陽---」を観るのは何度めかを挙手させ 統計をとっていた。

する内、劇場の人が 「あの~ 長谷川監督、もうそろそろ 本編上映時刻なので・・・」と 舞台下から呼びかけると、「い~じゃね~か~~」と かまわず続けた。
荒井氏は、聞き手の仕事よりも ゴジさんのグラスを空にしない事に 忙しくなっているようだった。

話しは撮影秘話へ展開し、また劇場の人が 「あのぉ~ 上映終了予定時間から逆算すると、終電に間に合わなくなってしまうお客様が出てしまう可能性があるので、そろそろ・・・」と 来ると、「本編なんて DVDでいつでも観れるだろ~~」と ますます グラスと舌を独走させた。
その後の再三の 劇場側の呼びかけにも応じず、果ては、ゆうに200人以上は居ると思われる観客全員に向かって 「おぅ!おめ~ら!! この後、オレらがどこて吞んでるか ここに電話して教えとっから みんな 後で来いや!!!」 太々とした腕を ブン!と振った。

予定時間を2時間近く過ぎ ゴジさんが舞台からノシノシと去るや、劇場の人は 「大変申し訳ありませんっ! 本日、本編を最後までご覧になれないお客様には、次回 無料でご鑑賞できるチケットをお配りいたしますので お申しつけください。 本当に申し訳ありませんっっっ!!」と 深々と 頭を下げていた。
自分は 何とか終電に間に合いそうなので、ラストまで観て帰ることにした。

本編を観ることを目的に来た人や劇場の人には 気の毒だと思ったが、自分は 素のゴジさんの人となりを目の当たりにできて 何だか とてもラッキーな気持ちでいっぱいだった。
そして、特典映像として 今日のような裏話が延々入っているというDVDを 是非 購入しようと決めた。

ゴジさんの後にくっついていって 夜の銀座の飲み屋に場所を変えた話しの続きを 聞いてみたい気もちょっとあったが、自分には それを実行する勇気はなかった。
実際 ついていったファンは、どのくらいいたのだろう?

と、スクリーン前の暗幕が開かれ ブザーが鳴り 照明が落とされた。

太陽3.jpg

      ----「太陽を盗んだ男」本編感想は、一つ短歌を挟んで7月28日公開でやす----
nice!(326)  コメント(39)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 326

コメント 39

hatumi30331

面白い話しに、夢中で読んでしまいました。
私なら・・・・ついて行ったかも?(笑)
映画の感想も楽しみにしています。
by hatumi30331 (2010-07-22 07:37) 

あら

豪快ですねw
by あら (2010-07-22 10:27) 

ぼんぼちぼちぼち

hatumi30331 さん

この話も 誰れかに言いたくて仕方がなかったもののひとつでやす。
ついていかれたかも・・・でやすか!
勇気ありやすなぁ~
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-22 10:49) 

ぼんぼちぼちぼち

あらさん

この話を 学校で脚本を学んだ人に話したところ
「ゴジさんらしいよね~」と笑ってやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-22 10:52) 

サフィー

ご訪問&ありがとうございました。
とても面白くて読ませていただきました。
by サフィー (2010-07-22 11:33) 

t-yahiro

本日はご訪問及びナイスありがとうございました。
ぼんぼちぼちぼちさんの記事の面白さというか
文章の構成と言うか・・いつも読みやすいなぁと
実感しています。私、唯一話せる母国語に問題が
あるので非常に羨ましく思います笑
by t-yahiro (2010-07-22 21:18) 

gwan3

豪快ですね。
焼酎がなかったら、どんな話をされていたのかもちょっと気になります^^
by gwan3 (2010-07-22 21:42) 

水無月

すごい体験をしましたね。
このことをラッキーと感じるぼんぼちぼちぼちさんも素敵です。
by 水無月 (2010-07-22 21:49) 

ぼんぼちぼちぼち

サフィーさん
t-yahiro さん

そう評していただけるとは 嬉しい限りでやす・ぺこりっ。
稚拙ながらも いつも 解り易さ・読み易さ に あっしなりに心を砕いているので 
今回の書き方もこれで良かったのだなー と安心しやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-22 21:58) 

ぼんぼちぼちぼち

gwan3 さん

あー 確かに。
麦茶だったら どんな展開になっていたんでやしょうか・・・(◎o◎)
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-22 22:02) 

ぼんぼちぼちぼち

水無月さん

DVDの特典映像として入っているゴジさんのインタビューを観るたびに
あの時のことを思い出して笑ってしまいやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-22 22:12) 

もとこさん。

反体制の男って、ピースさんにしてもゴジさんにしても、クールだったり豪快だったりしてカッコイイですけど、最後は自己陶酔って言うオチがあるみたいですね。
by もとこさん。 (2010-07-22 23:03) 

空兵

反体制の男は、やはり時間にルーズですね(笑)
by 空兵 (2010-07-23 00:28) 

Taddy

この映画のDVD持ってます。
しかしこの監督、反体制気取りでただの怠け者って感じです、普通にやってりゃあと3、4本は世に残る作品作ってたかもしれないですからね。
by Taddy (2010-07-23 06:22) 

ぼんぼちぼちぼち

もとこさん。さん

ピースさんにしろゴジさんにしろ そのオチに 人間くささを覚えて ふふ・・・と思うあっしでやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-23 10:47) 

ぼんぼちぼちぼち

空兵さん

確かに、前々回記事のピースさんの話といい 「時間を守らない」が共通項でやしたね~・笑
新たにまた 反体制の人と出逢ったら そこのとこ観察してみやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-23 10:55) 

ぼんぼちぼちぼち

Taddy さん

ゴジさんは、その後 「連合赤軍」に材をとった作品を創ろうと 何年間もあたためておられたようでやす。
しかし、同材の作品が 他の監督によって 撮られてしまったんでやす。

ファンとしては、三本目のゴジ監督作品を観たいという気持ちもありやすが
一生のうちに「太陽---」のような映画を創ることができた というだけでも 凄いなぁ と思いやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-23 11:07) 

レン

長谷川監督の無頼伝は、ほんと伝説です・・・

アニメ映画「ヱヴァンゲリオン・破」の中で、菅原文太演じる
山下警部のテーマが、流れてきたときは絶句しました。
by レン (2010-07-23 11:58) 

recchu

脚本書いてらしたんですね
まったく驚くべきところでないのですが(^^)

何か内面的なことや
反社会、反体勢、メッセージ的なコトを表現しようと思ったら
どこかタカを外さないとやりきれないところもあるのではないでしょうか
実際自分も呑めば記事投稿出来る とかありますし^^;
感受性が豊かだったり感性が鋭ければ
それだけ反応が気になったり打たれ弱かったりもすると思います
ゴジさん
長谷川和彦氏 ピンとこなくて情けない限りですが
焼酎のビンぶら下げて舞台に上がる時点で
お話なさりたかったのでしょうね
フィルムに納めたのであれば再生がききます
でも、作家さんのトークは一度きり
その日のハコの代金有志で分割してもいいぐらいのコトですよね~(^^)

そうはいっても
作品は作品なのかな
観る側にすれば
いろんな人と立場とシチュエーションと ありますものね。。
by recchu (2010-07-23 12:04) 

ぼんぼちぼちぼち

レンさん

そ~でやすね~
ゴジ伝説の証言者の一人となれたことは あっしの人生の貴重な想い出となりやした。

へー、山下警部のテーマが流れたんでやすか!
興味深い情報をありがとーでやす(◎o◎)/
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-23 18:07) 

ぼんぼちぼちぼち

recchu さん

ゴジさんの書かれた脚本では 他には 映画「青春の蹉跌」を観やした。
その脚本も 観念的で刹那的で とても惹かれるものがありやした。
また、もう一本の監督作品「青春の殺人者」も やはり 通底する信念の唸る名作だと思いやした。

その日のハコの代金有志で分割してもいい・・・
あー あっしは、それくらい貴重な時間に感じやしたね~



by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-23 18:35) 

さぼてん

確かTVで観ました、ジュリーが格好良かったんですよねぇ。
文太さんの「ローリングストーンズなんぞ、」の台詞もよく覚えてます(笑)
by さぼてん (2010-07-24 11:02) 

なぎ猫

え〜、長谷川監督のトークショーですか〜?すごい貴重ですねえ。いいなあ、私も聞いてみたい!新作はもう制作されないのでしょうかね。
by なぎ猫 (2010-07-24 12:54) 

yakko

こんにちは。
壮絶な(?_?)体験でしたね〜〜〜ヾ(℃゜)々
by yakko (2010-07-24 15:43) 

ぼんぼちぼちぼち

さぼてんさん

屋上で ジュリー演じる城戸誠にピストルを向けられて「ローリングストーンズなんぞ来やせんっ!」てとこでやすね♪

文太さんとジュリーは 正反対の雰囲気を持っておられるから
互いに引き立てあってて良かったでやすね。
それにしても ジュリーは ああいう浮遊感のある孤独な役 ピッタリでやすね~
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-24 18:22) 

ぼんぼちぼちぼち

なぎ猫さん

つくづく 行って良かったな~と思いやす。

新作、創られてほしいでやすね~
創られたら まっ先に劇場に観に行きたいでやす(◎o◎)/
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-24 18:31) 

b.b.mk2

公開当時、僕は高1でした。
沢田研二が主演だというのと、原爆を作って脅迫っていうことだけは友人から聞いた記憶があります。ただ当時売れっ子だったジュリーの映画にしては、ほとんどマスコミで取り上げられていなかったのを不思議に思った記憶があります。僕が知らなかっただけかも知れませんが、内容が内容だからだったのかなあ。ゴジさんって方、豪快ですね。それはやはりラッキーでしょう!飲み屋まで行かなきゃ(笑)。僕は昔から何故か吉田拓郎が好きなのですが、昔、神戸国際にコンサートに来て長々と「今の若い奴らはだからダメなんだよ」と延々としゃべって、ほとんど唄わずに帰ったっていう真偽が定かではない伝説があるのですが、その場に居たらラッキーだったなと思いましたもん。最近の彼はちょっと・・・ですけどネ。(笑)
by b.b.mk2 (2010-07-24 21:45) 

ぼんぼちぼちぼち

yakko さん

劇場側のかたがたは、冗談抜きでソーゼツな一夜だったと思いやす。 お気の毒でやす。
あっしはドキドキしながらも 「DVDで いつでも観れるだろ、話しのほうが面白いよな。本編観ずに みんな飲みに行こうや」と
ご自身の作品を 観れない方向に持ってゆかれるのが 可笑しくて笑ってしまってやした。

by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-24 22:25) 

ぼんぼちぼちぼち

b.b.mk2 さん

そうでやすね。
あの作品は、商業映画としては ちょっと解釈が難しいというのもあるからかも知れやせん。
公開当時、あっしは表層のストーリーを追うことは出来ても
テーマまでは理解出来やせんでやした。

拓郎さんがお好きなのでやすね♪
「高円寺」という曲があったのを思い出しやした。
拓郎さん そういう伝説をお持ちなのでやすね~
やっぱりファンは 居合わせたいでやすよね。

今は亡き 高田渡さんは ステージ上で居眠りをするという伝説をお持ちだったようで それを目の当たりに出来たファンのかたは ラッキー!と喜んだそうでやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-24 22:38) 

akipon

カミさんが好きで、家に「悪魔のようなあいつ」のDVDがあります。

正直に言うと、映画に限らずどの分野でもそうなんですが
作品よりも本人の武勇伝の方が有名になってしまうのには抵抗があるんですよ。
本人がハチャメチャでも、それ以上にマイッタ!と思わせるようなものを残されると、無条件に許せてしまえるのですが・・・
by akipon (2010-07-24 22:42) 

ぼんぼちぼちぼち

akipon さん

あー、それは あっしも同感でやすね~
表現者は 作品に どれほどの仕事を残したか だと思うので。
この「太陽---」は、それ以上にマイッタ!の作品なので 大好きでやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-25 00:00) 

びわ

名作ですよね。
久しぶりに見直したくなりました♪
by びわ (2010-07-26 14:19) 

ぼんぼちぼちぼち

びわさん

そうでやすね~♪

最近でも 時々、何らかの特集に入って 劇場で映られてやすね。
この画像は、あのトークショーから何年か後に映られた 自由が丘の劇場での「ヘヴィメタルムービー特集」の時のチラシでやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-26 18:15) 

よいこ

なんだかすごい体験ですね。
監督のファンなら心頭しちゃうでしょうね。
こんな人だからこそ、すごい映画を作るんだなってわかるような気がします。
この先、ゆとり世代の、マニュアル文化の子供たちには、なかなか出てこないタイプの人でしょうねぇ
by よいこ (2010-07-27 14:27) 

ぼんぼちぼちぼち

よいこさん

確かに!
もう ああいうタイプのかたは 殆ど出現しない時代でやしょうね。
明日 28日公開の「太陽---」の感想文は 世代の違いに力点を置いて書いておりやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-27 23:12) 

のり

すごい!面白い!貴重な体験ですね。
私もそんなのを体験してみたい。
by のり (2010-07-28 00:49) 

ぼんぼちぼちぼち

のりさん

ほんとに貴重な体験でやした。
他には、松本俊夫氏と塚本晋也氏のトークショーに行ったことがありやすが
両氏とも 時間通りにきちんと終えられてやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2010-07-28 11:31) 

さきしなのてるりん

ふーん、人の時間は気にならない。自分のことしか頭にない。俺のはなしだ、聞きたいにきまってる。という匂い。ちょっと、鼻に付く感じがあるなぁ。こういうのを反体制とくくってしまうのはどうなんだろ。まじめな人は反体制じゃない?かい。わたしはぼんさまの思いにはぴったんこだったかもしれないが、ちょっと気にしてるように、ほかの人はどう感じたんだろ、すぐそこで働いてる人は残業になったんだろうかとか、いたって俗っぽいことを考えてしまう。
by さきしなのてるりん (2012-03-25 14:50) 

ぼんぼちぼちぼち

さきしなのてるりん さん

ゴジさんのこの言動が反体制だ というのは
半ば エッセイとしてのジョークなので(◎o◎)b

まぁ、ゴジさんがこーいうかただというのは 映画ファンの間では結構有名な話で
このトークショーからまもなくに 学校で脚本を学んだ人に話したら
「あーー やっぱりーー」って笑ってやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2012-03-25 20:35) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0