プリンに負けたババロア [喫茶店・レストラン・カフェ]

私がまだ小学生だった1970年になるかならないかという時代ーーー
喫茶店やレストラン喫茶のデザートメニューには、たいていプリンと並んで、ババロアがあった。
私はいつもは、パフェ類やプリンアラモードを好んで食べていたが、一度ババロアというものも試してみたいと思い、注文してみた。
リング状に型抜きされた、サーモンピンクというか肌色というか、そんな色合いの、ツヤツヤと光る、直径10センチくらいの、シンプルなものが運ばれてきた。

口に含むとーーー
ねちっ もちっ ぼよ〜ん とした食感で、ミックスジュースの味だった。
不味いとは思わなかったが、「これならプリンのほうが、1000倍も美味しいな!」という印象で、以降、二度と頼む事はなくなった。

ちょうどその時代、喫茶店には「珈琲専科」と冠した、様々なアレンジコーヒーやストレートコーヒーを提供する店が、雨後の筍の如く出店し、そういう店には必ずといっていいほど「コーヒーババロア」もあったが、私は、「味はコーヒーでも、ねちっもちっぼよ〜ん」は同じに違いないと察し、一度も頼んでみようとは思わなかった。

私が高校卒業間近になった1970年代末期ーーー
ババロアは、喫茶店からも、レストラン喫茶からも、珈琲専科からも、メニューに見る事は殆どなくなっていた。
私と同様に、「これを食べるなら、プリンの方がよっぽどいい!!」と感じた者が、圧倒的に多かったためであろう。

プリンは今以って、喫茶店デザートの王道をゆく一品である。
1980年代くらいから、プッチンプリン系の、とろりと柔らかなプリンが主流になった時代もあったが、近年のレトロブームで、再び、1970年前後の、トテトテとした固めのプリンが人気を呼んでいる。
しかし、このレトロブームの真っ只中でありながらも、ババロアが復興する気配は、みぢんも、ない。
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