「ベスト&ノンストップ フィンガー5」を聴いて [感想文]

今日は、70S前半 日本中を席巻したジャパニーズソウル・チルドレングループ フィンガー5のデビュー40周年を記念したアルバム「ベスト&ノンストップ フィンガー5」の感想をつづりたいと思います。
フィンガー5のCDは現在 幾枚も発売されているのですが、何故 私がこのアルバムを選んだかというと、カバー曲がたくさん収録されているからです。
カバーは、その歌い手さんの実力が如実に反映されるので、どの歌い手さんのアルバムを求める時も、私は「カバーが一曲でも多く入っていること」を目安に選んでいます。

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フィンガー5がTVに登場するようになった頃、私は確か小学四年くらいでしたが、彼らの歌にまともに耳を傾けてみたことはありませんでした。
理由は----
私の父は若い頃 バイオリンニストで、クラシックだけでは食えずに、TVの歌番組のバックのオーケストラのアルバイトをしてしのいでいました。
が、それでも生活が出来なくなり、私が三才になった時に 音楽の仕事そのものも辞めたのですが、その後も、「クラシック以外は音楽じゃない! 特に流行歌の歌い手なんてみんな下手クソだ!」と憮然と言い放っており、私はそれを刷り込まれて育ったからです。
歌番組は観ていましたが、歌を聴くのではなく、ステージ衣裳のきらびやかさと好きなお顔の歌い手さんを観ることだけが目当てでした。

時が経ち 十八才になった時----
私は、FENから流れるチャック・ベリーと邦楽ではスパイダースとゴールデンカップスに衝撃を受け、父の流行歌全否定発言は、自身が本意ではないアルバイトをせねばならなかった事の屈辱感からくるやっかみであり 間違いだったと気づきました。
以降、ジャンル 時代 洋邦問わず、自分の嗜好に合いそうな音楽は 次々と聴いてゆくようになりました。
そして ふとしたきっかけで、最近 耳に留まったのがフィンガー5だったというわけです。

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アルバム全体の印象としては----
想像していたより遥かにソウルフルで、さすが沖縄出身で米軍基地を巡って歌っていたキャリアのあるグループだと感服しました。
それから、何よりも心をわしづかみにされたのは、変声期を迎える前の晃くんの 歌唱力の高さと素晴らしくよく通る声質の美しさです。
殊に、ルイス・ウィリアムズのカバー「ステッピン・ストーン」は、非常に黒っぽく、マイナーコードでありながらもノリが良く、冒頭近くの何小節かを次に繰り返す時に 表声で一オクターブ高く歌っている事に驚かされました。 「表声でここまで高音が出るのか!」と。
メッセンジャーズのカバー「気になる女の子」も、アップテムポでゴキゲンな曲調で、「アアン・アアン・ア~アアアアン・・・・」というスキャットが何とも可愛らしいです。
他には、ジャクソン5のカバー「愛はどこへ」、カーペンターズのカバー「イエスタディ・ワンスモア」などが、まっすぐに美声が伸び、聴いていてとても心地が良かったです。

「世の中で最も美しい声は、変声期前の少年の声・ボーイソプラノだ」と昔から言われ、ウィーン少年合唱団などはそれを証明し続けている存在ですが、ジャンル 発声法は違えど、今回 私は改めて そう言われ続けている事に深く共鳴しました。
ウイーン----がクラシック界の「天使の歌声」であるなら、変声期前の晃くんは ジャパニーズソウル界のそれだと唸らずにおれません。

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又、変声期というものについて このアルバムを聴いて初めて気付かされた事があります。
私は、変声期というのは、ある時 突然、小声でしゃべるのもままならないくらいにカラカラに声が出なくなり 何カ月かすると突如として出来あがった大人の男の声が出現するものだと思い込んでいたのですが、そうではないのですね。
じょじょに出る音域が下がっていって 最終的に大人の声に落ち着くのですね。
私は中学高校と女子校だったので、恥ずかしながらそういう事を全く知りませんでした。
ディスク1がほぼ時系列に沿った形で収録されていた事とDVDが付いていた事で よく解かりました。
変声期中の声だと オリジナルのバラード曲「悲しみの十字路」のあたりになると思うのですが、これは 少年とも青年ともつかず 中性的な魅力に溢れ、「何とセクシーな声なのだろう!」と惹きこまれてしまいました。
この時期の声も 寿命が短いだけに非常に貴重なものだと思いました。

シングルカットされたオリジナル曲にも 少し触れたいと思います。
「個人授業」 「恋のダイヤル6700」 「学園天国」 「恋のアメリカン・フットボール」 「バンプ天国」
これら一連の楽曲は、誰にも解かりやすくて 思わず一緒に口ずさみながらリズムをとりたくなる様 巧みに計算されて作られていて、歌謡ソウルの名曲といったところですね。
阿久悠氏 都倉俊一氏 井上忠夫氏といった 当時の売れっ子作詞家作曲家の起用によって、「この作品は売るぞ!」といったエネルギー 意気込みが伝わってきます。

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ディスク2は、DJリミックスという形がとられていましたが、面白くリミックスされていると感じる箇所と 「耳ざわりが良くないなぁ、元のフィンガー5の楽曲をもっと尊重してほしいなぁ」と眉をひそめてしまう箇所があり、個人的にはプラスマイナスの両面を感じました。

そういった点はあるものの、総じて言えば、私はこのアルバムを購入して本当に良かったと実感しています。
フィンガー5の歌う楽曲、当アルバムに収められていないものも これから積極的に聴いてゆきたいと考えています。


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