ケータイ音痴---知らないにもほどがある [独り言]

私の知り合いの七十代後半の御婦人に、「ケータイやパソコンのことは なーーーんにも解からないんです。 でもアタシは、他には人より劣ることや無知なことなんて何もないんですっ!」 と 胸をはっている人がいた。
ただ 家族からはガラケーを持たされていて、通話とメールだけは出来るようだった。

ある時、その御婦人が持っているケータイがドコモだったので、「ドコモを持っていらっしゃるんですね。 私はauです」 と言ったら、「あら! ドコモもauもソフトなんとかも ぜーんぶおんなじよ」 と返ってきた。
私は「同じ」という意味を解しかね、「『同じ』というのは、どこの会社のケータイを選んでも 機能や料金にそう大差はない ということですか?」 と尋ねると、「いーえー、ドコモの中のauでドコモの中のソフトなんとかなのよ。 ぜーんぶみんなドコモの中だから同じなのよ」 という答えが返ってきた。
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私は内心 ちょっと呆れ、「ということは、私のこのauのケータイに不具合が生じた場合、ドコモショップに持って行けば直してくれる という意味のことを仰ってるんですか?」 と聞いてみると、「そーよー」と 当たり前といった顔をした。
私は、それは間違いであって正しくは云々と説明しようとしたが、「そんなのウソよ! だってアタシのお友達の○○さん(その御婦人と同世代)が『ぜーんぶドコモで同じなのよ』って言ってましたもの!」と 聞く耳を持たなかった。

又 ある時、私が、「ケータイ電話でもインターネットが出来るんですよ。 ネットをやるとありとあらゆることが調べられて本当に便利ですよ」 と教えると、その御婦人は、「いいえっ! 私はインターネットなんてやる必要はないんですっ! テレビのニュースは全チャンネル観ているし 新聞も何紙も読んでいるから インターネットをやってる人と同じだけの情報量は毎日得てますっ!」 と憮然と言い放った。
「ネットというのは、テレビや新聞とは比較にならないくらい膨大な情報量が詰まっていて しかも多方面からの見解を知ることが出来るんですよ」 と説こうとしても 「アタシの知識はインターネットをやっている人の情報量には負けません!」 の一点張りだった。

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それからしばらくして----
私のケータイに、未登録の知らないアドレスから、「お会いしたいです」 とだけ書かれたメールが来た。 件名は無し。
私は、どうせいつもの迷惑メールだろうと 無視をした。
すると、次の日も全く同じメールが来た。 その次の日も来た。
私は無視を続けた。
するとその次の日に、未登録の知らない電話番号から着信があった。 留守電には何も入っていない。
090で始まる番号だったのでケータイからである。
私は、未登録で留守電に何のメッセージも入れていない電話には折り返しかけないことにしているので これも無視をした。
すると、その次の日もその又次の日も、同じ番号からかかってきた。
何度目かにかかってきた時に 留守電にメッセージが入っていた。
「ぼんぼちさん、なんで、アタシが何度もメールしても電話しても 急にお返事くださらなくなっちゃったんですかぁ?」-----例の御婦人の声だった。

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私は、あぁ、ケータイを変えたのか、そういうことだったのか、と その番号にかけた。
御婦人が出た。
出るなり、突然 私からのメールの返信や折り返しの電話が来なくなったことを 縦板に水の如く文句を放った。
私は、「最近は、知らないメールアドレスや電話番号には返さない人が多いから、ケータイを変えたら先ず 名前を入れて その旨のメールや電話をしないと 相手には誰だか解かりませんよ」 と言った。
すると御婦人は、「いぃえぇ~、機種変更はしましたけど メールアドレスも電話番号も変えてませんよ」 と平然と発した。
おかしいな?と思い、「では、ご自分のではない 誰か他の人のケータイからメールや電話をしましたか?」 と聞いた。
「いーえー、アタシの自分のケータイから メールも電話もしました」
「では、機種変更の他に新しいケータイも買って、今 二台持っていらっしゃいますか?」 とも聞いてみた。
すると、「いーえー、一台しか持ってません。 機種変更しただけです」 と言う。
ますますおかしいな?と首を傾げつつも 御婦人が、「ウチに遊びに来てほしい」 と言うので 次の日に行く事にした。
電話を切ると、「お待ちしています」 とのメールが、今までの登録してある御婦人のアドレスからきた。
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翌日----
御婦人のお宅に行くと、御婦人は 「いらっしゃいませー!」 と上機嫌で迎えた。
と----、テーブルの上にケータイが二台並べて置いてある。
今まで使っておられた機種と新しいものである。
私は、あー、機種変ではなく新しいケータイを買い加えたんだー と事を理解し、「なーんだ、機種変更はしないで新しいケータイを買ったんじゃないですか! 昨日、電話でお話したように 変えたら変えた旨を伝えないと 相手には誰だか解かりませんよ」 と言うと、急に声を荒だて、「いいえっ! この二台は一台なんです! 全く同じなんですっ!」 と奇妙なことを言った。
「この二台はメールアドレスも電話番号も同じなんですっ! こっちの(新しいケータイ)にも ぼんぼちさんやお花のお仲間や親戚や家族のメールアドレスと電話番号を入れてもらったんですっ! こないだ娘が店でやってくれたんですっ! だから、アタシがメールや電話をした時にはそちらのケータイにアタシの名前が出る筈ですっ!」

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私はここまで知らないものかと呆れ返り、「それは電話帳のデータを新しく買い加えたケータイに入れたというだけのことでしょ。 だからって、メールアドレスや電話番号まで同じにはなりませんよ。 個人で所有するケータイに二台同じアドレスや番号というのはあり得ませんよ」 と さすがにイラッとしながら教えると、「娘が店でやってくれたんですっ! だからこの二台は何もかも同じなんですっ! 二台で一台なんですっ!」 と、怒鳴るように言い張った。
私は、溜息しいしい、「それなら試しに、その二台のケータイから それぞれ私のケータイに メールと電話をしてみてくださいな。 違うアドレス 違う番号が表示されますから」 と出た。
と、「そんなことしてみる必要ありませんっ! おんなじなんですからっ! そんな変なこと仰ると警察呼びますよ!」
近所中に響き渡るほどの大声で叫んだ。
「警察呼びます! 警察呼びます! 警察呼びます! 警察呼びます!・・・・・・・」
発狂したように繰り返し叫びながら 自分の部屋にかけ込み 家が壊れるんじゃないかというくらいの勢いで ドアをバーーーーーン!!と閉め、閉じこもった。

私は、深い深い溜息をつき、この御婦人とのお付き合いは 金輪際終わりにしようと誓った。

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