蕎麦屋にて [独り言]

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そこは、極めて大衆的な蕎麦屋だった。
だだっ広い座敷スペースには長テーブルが並べられ、あちこちにセルフサービスとしての番茶の入ったポットと湯呑茶碗が山と伏せられていた。
こぼしたら自分で拭いてくださいねと言わんばかりに ふきんがあちこちに置かれていた。
大学生の集団が、サワーをあおり大声をはりあげ、調子に乗って走り回る者もいた。
そんな蕎麦屋であった。

・・・・・・・ポン!ポン!
ざわめきの中に、かすかに手を打つ音が聞こえた。
ポン!ポン!
見ると、初老の男性三人組である。
ポン!ポン!
「来ないねぇ」
中の一人の男性が不服そうに吐いた。
どうやらポン!ポン!で以って 従業員を呼んでいるらしいのだった。
ポン!ポン!
「まったく来ないねぇ、お姐さん」 「だねぇ」

果たして聞こえたとしても、この格の店でポン!ポン!が何を意味するか解かる従業員がいるだろうか?
ここは、拘りの手打ち蕎麦の名店でもないし 蕎麦懐石の店でもない。
どんな蕎麦屋かは一目瞭然だろうに。
郷に入れば郷に従えという言葉もあるではないか!
・・・・・・・・ポン!ポン!・・・・・・・・ポン!ポン!・・・・・・・・・・・ポン!ポン!・・・・・・・・

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