たくわんとぬか漬け [独り言]

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小学一年か二年の時、地域のイベントで しるこが出てきた。
私がおぼつかない箸で餅をつまんでいると、係のおばさんが声を掛けてきた。
「一つ どお?」
両手に盆をささげ、盆には 真っ黄色くて長い筒状が輪切りになったものがずらりと並んでいた。
「・・・・・・・・・・・・」
私が無言でいると、おばさんは、「あら、いらないのね」と笑顔をひとつ作り 行ってしまった。
どうもこうも、私にはその黄色いものが何だったのか 解からなかったのである。
どんな食べ物かが 解からなかったのではない。
その黄色い物体が、食べ物であるということからして 解からなかったのだ。
だから、しるこを食べている途中で、このおばさんは、何故 唐突にこんな奇妙な物体を脈絡もなく差し出したのかと 頭の中が???でいっぱいになったのだった。
それが食べ物で、大根を黄色く染めて漬けた「たくわん」という漬物だと知ったのは、三十歳近くになってからだった。
ちょっと機会があった折りに 試しに箸を伸ばしてみたが、特別美味しいとも不味いとも感じなかった。

ぬか漬けも、三十歳近くになるまで 何だか解らなかった。
流石に、八百屋やスーパーの食料品売り場にあり、きゅうりや人参や蕪と思われるものが見え隠れしているから、それらの野菜を使った食べ物であることは察しがついたが。
けれど、それをおおっている黄土色の泥のようなものの正体が不明だった。
いつも売られている前を通る度に、「この泥みたいなもの なんだろー?」と、首を傾げていた。
何をきっかけに、それが「ぬか漬け」という漬物であるかを認識したのか 記憶は定かではないが、ぬかに野菜を漬ける ということに驚いた。
そして、それから何年も後になって、ぬかは洗い落して食べるのだという事を知った。
これも機会をみつけて食べてみたが、別段 感激も落胆もなかった。

私はよく、「こんな常識的なことを知らない人がいるのか!」と、人の事を嘲笑するが、自分をかえりみると決して他人を笑えない。
恥ずかしい限りである。
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