大駱駝艦・舞踏公演「阿修羅」を観て [感想文]

20231029_133133.jpg

10月28日(土)、座・高円寺にて開催された、舞踏集団・大駱駝艦の「阿修羅」という公演を観に行った。

奈良・興福寺の阿修羅像をテーマとし、神・阿修羅が阿修羅像に至るまでの旅路を表現した作品だった。
舞踏の定義である「土俗的かつ前衛」という条件を守りながらも、古代ギリシャ演劇で使われていた形状のスッポリかぶる仮面を使用し、踊りが進むと、仮面をぬぎ、小道具として持ち踊ったり、白い神が阿修羅像へと変化(へんげ)してゆく様を、脇役の舞踏家さんがたが、手首まで真っ赤な絵の具に浸け染めて登場し、真っ赤な手も鮮やかで斬新な演出効果としつつも、阿修羅役の主役の舞踏家さんを、踊りながらペタペタと全身真っ赤に塗り変えてゆく表現とアイデアには、圧倒され 唸らされた、実に見事に、阿修羅→阿修羅像の歴史を、身体的抽象表現した芸術だと、感動の海に浸った。

大駱駝艦は、唐十郎氏の状況劇場にいた麿赤兒氏が、1972年に創設した、数ある舞踏集団の中でも今以て人気を保ち続けている集団である。
私は舞踏集団の中でもこの大駱駝艦が最も好きで、本公演、アトリエ公演、高円寺大道芸と、幾度もあちこちに足を運んでいる。
そのつど思う事だが、大駱駝艦の人気の理由は、以下のニ点によるものだと、分析している。
先ず一つは、次々と新しいアイデアを持ち込んで来る事。(今回では、仮面や赤い絵の具の使い方)
公演の度に、「わっ!今回は、こんなアイデアで来たか!」と、新鮮に嬉しく驚かされる。
二つ目は、常に世の時代のデムポに合った踊りをしているという事である。
舞踏というと、ゆっくりゆっくり動く、というイメージを抱いている向きも少なくないかも知れないが、大駱駝艦は、勿論、ゆっくりの所もあるが、基本、今の若い人が観ても決して退屈しない早さのテムポで動いているのである。
これも、主宰の麿氏の「一人一派」という、頭ごなしに押し付けない 自由な舞風のたまものだと、感じずにはおれない。
麿氏、その方針の成果として、良き後継ぎを幾多輩出したものである。

「舞踏」というと「何それ?」とポカンとする日本人が、少なからずいる。
むしろ海外、特にフランスで、「Butoh」として知名度が高い様である。
舞踏は、土方巽を始祖とする、日本が生んだ日本の芸術なのだから、個人的にはもっと、日本人の多くに知っていただきたいと願っている。
これからは、学校の芸術鑑賞日などに舞踏を観に行っても良いのではなかろうか?

20231029_133216.jpg

nice!(227)  コメント(41) 
共通テーマ:映画