優しく気遣いの行き届いたリーマンのお兄さん [独り言]
私は、演技のレッスンのある日は、早めに家を出て、スタジオ近くの喫茶店で、時間調節をします。
スタジオの在る街には、個人経営の喫茶店がないため、セルフサービスの某チェーン喫茶を利用するのですが、いつも私が座るのは、すいている二階奥の、扉で仕切られた喫煙席と決めています。
私は平衡感覚が悪いようで、子供の頃から トレイに乗せた物を運ぶという動作がとても苦手で、いつも、ソロリ、、、、、ソロリ、、、、、階段となると、先ず片足をソロリ、、、、、と乗せて、もう片足もソロリ、、、、、と揃えて、といった具合で、非常に非常に、席に辿り着くまで、時間がかかってしまうのです。
先日入店した時の事ですーーー
私の右隣、つまり私の一つあとの注文を待つ人が、三十代くらいの、リーマンと思しきお兄さんでした。
私の注文したミルクコーヒーがトレイに乗せられるや、ソロリ、、、、、ソロリ、、、、、階段を、片足ソロリ、、、、、もう片足もソロリ、、、、、と揃えてを、それはもぅスローモーション映像の如きのろさでやっていました。
と、私のすぐ後ろを、私の歩調にあわせてついてくる足音があります。
私のあとに注文をした三十代のリーマンのお兄さんも、二階席に向かう様なのでした。
私は、「悪っるいなあ。こんなにのろくて。平日の昼間にリーマンさんがこういう店に来るという事は、お仕事の作業の可能性も高いよな。ほんとに申し訳無いなあ」と思いつつも、振り返って「のろくて申し訳ありません」などと言おうものなら、トレイが傾いで、ミルクコーヒーをぶちまけてしまうのは必至なので、心で詫びつつ、ソロリ、、、、、ソロリ、、、、、を続けてゆきました。
やっと二階席に着き、奥の喫煙ルームを目指して、ソロリ、、、、、と足を運んでいると、やはりお兄さんの足音も後に続いてきます。
ーーーこのリーマンのお兄さんも、喫煙ルームに向かわれるのだな。ますます申し訳無いなあ。
そうさらに心で詫びながら、喫煙ルームの「押す」のボタンが、私の目の前に現れた時、
「押しますよ!」
みぢんの曇りもない、さわやかな明るい口調と共に、お兄さんは、私の横に立ち、開扉ボタンを押し、そして私を先に、喫煙ルームに入れて下さいました。
私は、「あっ!ありがとうございます!申し訳無いです。本当にありがとうございます!!」と、会釈はできないだけに、言葉の内容と口調で最大限に感謝の意を伝え、いつも座る席に掛けました。
お兄さんは、他二人のリーマンのお兄さんと待ち合わせをしていたらしく、すぐにお仕事の話しを始められました。
三十代のリーマンのお兄さん、ほんとに良く出来た人間だなあ!
こういう方はきっと、奥様もしくは彼女さんにも常に思いやりの言動が出来、同期とは仲良くやり、上司からは認められ、部下には信頼されているに違いないだろうな!というイメージが、瞬時に、私の脳裏にパアッと浮かびました。
どこの会社の何という方は存じませんが、本当にありがとうございました!
貴男の優しさと気遣い、一生、忘れることはありません!