シナリオがシーン別に書かれている理由 [映画・演劇雑記]

シナリオを読まれた事のある方は、シナリオというものはシーン別に書かれているのだな、とお気づきになったと思います。
例えばーーー

⑯駅前のカフェ
太郎、スマホを取り出し
太郎「今度の連休なんだけどさあ!」
花子「えっ?」
太郎「こことかー」
花子「、、、、、ごめん」
太郎「え」
花子「、、、仕事なんだ」
太郎「またぁ?」
花子「、、、、、」
太郎「出よっか」

という風に。
シナリオは、この様なシーンをつなぎ合わせて、全体が構成されています。

どうしてシーン別に書くかというとーーー
映画やドラマは、シーン毎にまとめて撮影してゆくからです。
「駅前のカフェ」が、シーン16だけでなく、シーン5にも38にも62にもあったとします。
そうすると、話しの内容の時系列とは関係なしに、「駅前のカフェ」シーンを、まとめて撮影するのです。
特にカフェの様な、他人様に借りる場だと、日時が限定されますし、出逢いの時刻が夕陽の差す時間帯であり、別れの時刻が朝だったとしたら、別れのシーンを先に撮影して、夕刻になったところで、出逢いのシーンを撮影する運びとなります。

又、同じ駅前のカフェの中に、朝時と夕刻のシーンがあるとしても、「⑤夕のカフェ」とか「㊳朝のカフェ」と書いてはいけません。
そうすると、スタッフは、「駅前のカフェ」とは別のカフェを指すのだと判断して、別のカフェの夕刻、別のカフェの朝時を、ロケハンしてしまうからです。
あくまでも、「駅前のカフェ」は「駅前のカフェ」という言葉で統一し、ト書きの冒頭に、「朝」とか「夕陽が差し込む窓辺」と書かなくては、混乱してしまいます。

ちなみに、「駅前のカフェ」の様なシーンのタイトルを「柱」と呼びます。
柱の上に、今回、例で示した様に、シーン順の数字が振られる事もあれば、単に「○駅前のカフェ」と、シーンナンバーは書かれない場合もあります。

そして、シーンはどういった基準で分けるかというとーーー
大きくキャメラをはじめとする撮影機材一式を、移動させるか否かで分けます。
「駅前のカフェの通り」という撮影場所が必要になった場合は、「⑰駅前のカフェの通り」と、別の柱を立てます。
何故なら、カフェの中から表へ、よいしょよいしょと機材を運び出して準備をする訳ですし、今度は、カフェオーナーではなく道路に関しての撮影許可が必要になってくるからです。
したがって、すぐ次のシーンだからといって、同じ日の次の時間帯に撮影するとは限りません。

みなさんも、シナリオを読まれる時、又は、映画やドラマを鑑賞される時、この様な事を頭に思いながらご覧になると、一層、興味深くお楽しみになれるのではないか、とお察しします。

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