20年前の演技の研究所のアマチュアクラスの先生がクビになった話 [リポート]

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アマチュアの趣味のお習い事として演技を学んでいる 私・ぼんぼち、今現在は、大変に素晴らしい先生に就く事が出来て、幸せの限りです。
しかし、それ以前ーーー20年前に在籍していた 某研究所の日曜クラス(アマチュアのクラス)の先生は、矛盾と理不尽とおかしな思い込みに満ち満ちた とんでもない先生でした。
今日は、私がその研究所に入ってから、その先生が研究所をクビになるまでの顛末を つづりたいと思います。

私が入所する際、面接を担当されたのは、本科(本格的にプロを目指す人を対象としたクラス)の先生でした。
物静かでとても感じのいい先生でした。
ですから私は、「こういう先生のおられる研究所なら入りたい!」と、入所手続きをしました。

レッスン初日、初めて日曜クラスの先生と顔を合わせ、第一回目のレッスンが始まりました。
日曜クラスの先生は、M先生という 中年の男性の先生でした。

M先生は開口一番、「演技なんて、カーンタンなものなんだよ。コツを覚えれば、すーぐ出来ちゃうから」と言いました。
私は心の中で、「えっ?!演技って、そんなに簡単なものじゃないと思うんだけどな、、、???」と、首を傾げました。
M先生は、演技とはどういう風にやるものかの説明を始めました。
「先ず、全ての台詞をゆーーーっくりしゃべる。 嬉しいや楽しいの感情は、自分が出せる一番高い声でしゃべる。悲しいや辛いの感情は、自分が出せる一番低い声をでしゃべる。 台詞は、台本と同じ様な意味の事を言いさえすれば、きちんと覚えなくてもいいんだよ。 それから、前に台詞を言った人が言い終わったら、必ず一秒、自分の中で『イチ』とカウントして間を取る。 そうすると、前の人の台詞を聞いたとお客さんに見えるから。 そしたら、上を向いて大きく口を開けて、いっぱい空気を吸って、台詞を言う。 演技って、そのくり返し。 それが出来たら、どこのワークショップに行っても『完璧な演技です!』って褒められるから」
私は、ますます首を傾げました。
話しの展開によっては、早くしゃべったり、前の台詞の後、間無くしゃべる場合もあるんじゃなかろうか? それに、必ず自分が台詞を言う前に、上を向いて大きく口を開けるって、変じゃなかろうか?ーーーと。
けれど、先生たる立場の人の言う事なので、従う事にしました。

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演技の実技のレッスンに入りました。
私が地声で台詞を言ったら、M先生は、「ぼんぼちさん、それはぼんぼちさんの地声じゃない。女の人がそんなに低い声の筈がない。 女性っていうのは、もっと高ーーーい声をしているものなんだよ。 ぼんぼちさんは、自分が女性である事を否定して、男のフリをしてしゃべってるんだよ」とダメが入りました。
私が、「いえ、私、昔から、何のフリもしなくてもこの声です。 この声でしゃべるのが、一番楽な声の出し方なんです」と返すと、「いや、違う!」と、セル系アニメのロリロリ少女の如き声を出す様に、指示されました。
仕方なくロリロリ少女声でしゃべると、「そう!それがぼんぼちさんの地声! あと、笑う時も、さっきは低い声をでハハハ、、、って笑ったけど、それも女性の笑い方じゃない。 女性っていうのは、かん高い声でキャピキャピキャピって笑うものなんだよ。 あのね、男性は色々だけど、世の中の全ての女性は、一種類なんだよ。世の中の全ての女性は、みーーーんな、優しくて思いやりがあって、意地の悪い人や悪人なんていなくて、男性に尽くすものなんだよ。 演技以前に、先ず、そこ、改めて!」
私は、疑問の気持ちでいっぱいになりました。
男性が百人百色であるのと同じに、女性だって百人百色なのに、、、
けれど、これも、指導する人の指導なので、私は毎日、三時間、ロリロリ少女声でしゃべる練習とキャピキャピ笑いの練習をしました。

ある時、研究所にお菓子の差し入れが来ていました。
M先生にすすめられた私は、「私、甘い物苦手なので、けっこうです」と、丁重に断ると、M先生は、「ほらほらまた!ぼんぼちさんは、まだ男のフリをしている! 女性っていうのは、全員、甘い物に目が無いものなんだよ。食べないとしたら、ダイエットしてる時だけだよ」と眉をひそめました。
私は、「私、ほんとに甘い味が好きじゃないんですっ!」と、さすがにムッとして答えると、M先生は、「またまたー、ムリしちゃってー!甘い物食べると太っちゃうもんね!」と、ニヤニヤしていました。

日曜クラスのスタジオ内発表会は、半年に一度づつ行われ、私達日曜クラス生は、仕方なくM先生の指導通りの演技をしていました。
と、三度目の発表会が終わった直後、校長が私の傍に来て、「ぼんぼちさん、M先生の指導、納得してやってる?」と問いました。
私は、「いえ、何から何まで納得していません」と、間髪置かずに返しました。
「でしょ、納得出来なかったら、M先生に、面と向かって、真っ向から抗議しなくちゃダメよ!」
私は校長の言葉に大きく背中を押され、これからはその通りにしよう!と、少し気持ちが楽になりました。

次のレッスンの日、私はM先生に、普段しゃべっている声がぼんぼちの地声である事、女性は一種類ではない事、味覚だって女性それぞれだという事を主張しました。
するとM先生は、「そんな筈はないんだよ!」と、みぢんも聞く耳を持ちませんでした。
以降、M先生と私達日曜クラス生は、完全な敵対関係となり、言い争いの中にレッスンがすすめられ、言い争いの末に発表会が行われるようになりました。

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六回目の発表会ーーーつまり、私が入所して三年経った時の事ですーーー
台本は、「劇作家は演劇を解っていない」と言って、いつもM先生が書いていて、毎回ヘンテコなホンではあったのですが、その時のホンで私が与えられた役は、こんな役でした。
「一人のダンナ相手に、同時に、のちぞえであり二号」。
私が、「私のこの役は、のちぞえですか?二号ですか?どっちなんですか? ホンがめちゃくちゃでつじつまが合ってません!」と言い詰めると、M先生は、「えっ?解らないの??のちぞえで二号。のちぞえで、なおかつ二号だよ」と、当たり前といった顔で、支離滅裂な発言をしました。
私は呆れを通り越して怒り心頭し、「もう我慢ならん!!」と、プチン!ときました。
そして、本科の先生に、今回のホンのめちゃくちゃさや、これまでの、女性は一種類断定やそれを元に構成された演技法に、酷く矛盾と理不尽と憤りを感じていると、打ち明けました。
すると本科の先生は、「ぼんぼちさんの仰る通りです。 それは申し訳無い事をしてしまいました。ほんとうに申し訳無かったです。 でも、来週、また来てくださいね」と、頭を下げてくださいました。

次の週、研究所に行くとーーー
M先生はいませんでした。
本科の先生が、私が本科の先生に打ち明けた事を、洗いざらい校長に話し、校長がM先生をクビにした、との事でした。

私は、M先生がクビになって当然だと、ホッとしましたが、同時に、なんであんな、演技指導以前に、人間の何たるかや日本語を理解していない人が、アマチュアクラスといえども、それまで講師として雇われていたのかが不思議でした。
アマチュアといえども、きちんと、月々、お月謝を払っていたのだから、それ相応の指導をしていただきたかったものです。
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