今はなき国立スカラ座併設の喫茶店 [喫茶店・レストラン・カフェ]

昔はどんな小さな町にも名画座が在ったように、東京郊外・国立の町にも、国立スカラ座というそれが在った。

私は、小学生の時、国立スカラ座には、一度だけ入った事がある。
学校の夏休みの課題として「鯉のいる村」という、宇野重吉さん主演の文化映画を観に行く事が出されたからである。

以来、国立スカラ座は素通りするだけになってしまったが、中学に入ってから高校卒業までの六年間、私は必ず、学校帰りにどこかの喫茶店に寄るのをならいとしていたので、国立スカラ座にも併設の喫茶部がある事を思い出し、しばしば、喫茶部には、足を運び入れていた。

内装は、焦げ茶色の木造りで、昼間でも薄暗く、カウンター中心の横長の店だった。
店の奥には、洋画のパンフレットが雪崩れていた。
私はいつもカウンターの真ん中に陣取り、ブラックコーヒーを所望した。
そして、カウンター中央の一段高い所にある 山と盛られた食べ放題の塩茹でのジャガイモを、二つばかり頬張るのだった。
今思い返すと、フードメニューがあまりない喫茶店で、ジャガイモ食べ放題とは面白いシステムなのだが、食べ盛りの当時の私は、何の疑問も抱かずに、ペロペロと皮を剥き、小腹を満たしていた。

その喫茶店も本体の国立スカラ座も、もうとうになくなってしまった。
名画座も喫茶店も、哀しいかな、絶滅の一途を辿るばかりである。

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