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 静脈麻酔の体感覚  [リポート]

私・ぼんぼち、約一カ月ほど前に、身体のある部分に出来ていた良性ポリープを、ごく簡単な内視鏡手術により 切除しました。
自覚症状はまるで無く、誕生月であることを理由に検診を受けた折りに発見されました。
担当の先生の術前診断の段階で、「少なからずの人に発生する良性のものにほぼ間違いないでしょう」 とのことでした。

朝 病院にゆき、午後には 付き添いの者と一緒に徒歩で帰宅。
後、5日間は 処方された化膿止めの抗生物質を飲み、近所の喫茶店で読書する程度におとなしくしていました。
それから2日後、つまり術後1週間後には、「切除痕は確実に回復しています」 とのお墨付きと 「ポリープは100%良性でした」 との結果を頂き、その夜からは、繁華街のライヴハウスで酒を飲んだりと 完全に普段通りの生活に戻りました。

と まぁ、このように、心身共に 何も憂いの尾を引くことなく今日に至っている訳ですが、この手術によって 私は、どうしても書き記しておかずにはおれない摩訶不思議な感覚を体験しました。
「静脈麻酔」というものの体感覚です。
私は 生まれてこのかた手術と名の付くものは何一つ受けたことが無く、麻酔は、歯の治療の局所麻酔しかありませんでした。
ですから、全身麻酔の一つである静脈麻酔は、無論 初めてでした。

麻酔1.jpg

全身麻酔を体験したことの無いかたの多くは、「何秒間か経て ぐぅーーーーーっと深海に沈み消えるように意識を失うのだろう」 と想像されているのではないか と思います。
その間、声に出して数を勘定させられたり と。
そして 目覚める時も、視えるもの・聞こえるもの・脳内の意識が、じょじょに ぼんやりから鮮明になってゆく・・・と。
私も そう考えていました。
一体、その間は何秒くらいなのだろう・・・と。

しかし、実際は------
手術をするベッドに横になるや、看護婦さんが私の右脇にしゃがみ 点滴の針を刺しました。
1秒・・・2秒・・・3秒・・・この間に、「○○のお薬が入りまーーーす」 とのお声と共に、確か、2種類くらいの薬が 手際よく 管の途中に加えられてゆきました。
4秒・・・次の薬を注入しつつ、「頭がぼーーっとしてきますよーー」
聞き終わらないうちに、上顎の奥のほうが ビリッとしました。
ぼーーっとはせず、視えるもの・聞こえるもの・頭の中は クリアな状態でした。
すぐに続いて、「これは脳の底辺の部分ではないだろうか」と思われる辺りに 同質のビリッを感じました。

次の瞬間-----
「ぼんぼちさん! ぼんぼちぼちぼちさーーん!!」
同じ看護婦さんが私の左脇に立ち、私をほぼ真上から見下ろしていました。
私への呼びかけは、頭の1音の「ぼ」から明確に聞こえ、看護婦さんのお顔も ハッキリ視界に飛び込みました。
頭の中もハッキリでした。
ビリッは あとかたもなく消えていました。

看護婦さんに促され、隣室のベッドへと移動しました。
歩きながら、点滴の管は腕に無く その場所にバンソウコウが貼られていることに気付きました。
身体がだるくて歩くのが難儀だとは思いましたが、やはり 頭の中はクリアな感じでした。
ベッドに横になると同時に、看護婦さんが 脇にかがんで毛布を掛けてくださいました。

麻酔2.jpg
そして又 次の瞬間-----
「ぼんぼちさん! ぼんぼちぼちぼちさーーん!!」
やや小さく耳に入った1音目の「ぼ」とほぼ同時に、目を開きました。
二音目の「ん」以降は、ハッキリ大きく聞こえました。
「あぁ、自分は今 意識を取り戻したのだ」 という自覚が 明確にありました。
同看護婦さんが 1メートルほど離れた場所から見下しているのが クッキリ目に入りました。
1音目の「ぼ」の発せられている約1秒弱の間、普段は全く鼾をかかない自分の鼻の奥が 微かに「ぐぅ~」と鳴っているのが解りました。

しばし、私は どの段階で手術が行われたのか 把握できませんでした。
ポリープがあると言われていた体内の部分にも、痺れや痛みや違和感といった今までとは違う感覚は まるでありませんでした。
さぞかしキョトンとしていたらしく、看護婦さんに、「もう終わったのー?ってお顔されてますね。 ぜーーんぶ終わりましたよー」 と 優しく微笑まれました。

通常、意識を失い そして目覚める時というのは、一寸うつらうつらするにしろ ゆっくりと眠りに滑り込むにしろ 急激に深い眠りに落ちるにしろ、或いは 殴られて気絶するにしろ、その時間が10数時間であろうと数秒であろうと、「あー、自分は今 意識を失っていたな」 という空白感・タイムラグが 体内・脳内にあるものです。
しかし、それが微塵も無かった。
加えて、「今 意識を失いつつあるな」 という自覚も まるで無かった。
目覚めの自覚は、2度目に起こされた 術後休憩用のベッドの時だけです。
あとは全て、視えるもの・聞こえるもの ともに、鮮明なフィルムを切って貼り付けた如きでした。
----よく映画で、同シーン内の時間経過の説明で、固定されたキャメラの前を 人が右端にいたと思ったら パッと瞬間 左端で違う動きをしていて またパッと・・・という映像がありますが、まさに あのような感じでした。
別の例えをすると----
目の調子が良好の時に日常生活の中でしている類いの あの無意識のまばたきの間に 時間を飛び越えていた-----といった所です。

麻酔3.jpg

術前の説明や術後の時計の確認から、私の1度目の眠り(手術の為の眠り)は 約20分、2度目(術後休みの為の眠り)は 約1時間半くらいだと計算できます。
又、私の名を呼ぶ声が頭の1音から聞こえていたからといって、それが それぞれ1度目の呼びかけだったという確証はありません。
帰りがけに 看護婦さんに確認すれば良かった と思いました。

そして----
だるさにフラフラしつつ会計を済ませ、迎えに来てくれていた付き添いの者に与太話をいつものペースでしながら、ただ 歩調は ややゆっくりに、掌をガードレールに乗せ乗せ、普段なら20分で歩ききる距離を 25分くらいかけて帰りました。

何故 タクシーを使わなかったか というと、私は、日頃体調のいい時でも ちょっと乗るだけで車酔いしてしまうからです。
術前の注意事項に 「当日 帰る時に、車・バイク・自転車の運転は禁止」 とあったのを思い出し、「なるほど、これだけだるさが残るなら当然だ」 と頷きました。
私は元々、自転車には乗れず、車・バイクは免許すら持っていないので およそ他人ごとではありましたが。

以上は、あくまで 私・ぼんぼち個人の体感覚です。
静脈麻酔を体験した他のかたはどうだったのか、とても知りたいと思っています。
又、全身麻酔には 吸入法 という方法もある と聞いています。
それは、静脈麻酔とどう体感覚が違うのかも 非常に興味があります。

麻酔4.jpg

タグ:静脈麻酔
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