第37回演技のレッスンを受けて [リポート]

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今日は、9月19日(火)第37回「マクベス」の、レッスンのリポート&感想をつづらせていただきます。

先ず、今回の先生の講義は、「物語原型」についてでした。
物語原型というのは、何らかのすでに在る物語を元に立ち上げた 小説なり舞台なり映像なりの事を指すのだそうです。
先生は、日本人なら誰もが知る物語原型の形をとっている作品に、NHKドラマで大ヒットした「おしん」は、シンデレラが物語原型となっているんです、と仰いました。
いじめられていた娘が、後に大成功をおさめる話しは、まさにシンデレラをなぞっているーーーと。
その明らかな裏付けとなっているのは、シンデレラを日本で初めて訳した人物は坪内逍遥で、日本語題は「おしん」だったとーーー。
だから、日本のみならず、アジアのあちこちでもヒットに火がついたのだそうです。

私が知っている作品で物語原型をとっているものはあるのか、考えてみたところーーー
私が最も敬愛する映像作家・松本俊夫先生の映画「薔薇の葬列」は、オイディプス王の物語原型をとっているな、と思いあたりました。
オイディプスが母とは知らずに交わってしまう、逃れたつもりの果てに逃れようのなかった悪夢の運命が待っていたーーーというシノプシスを、ゲイボーイとその父に置き換え、愛する彼氏でありパトロンが、実父だったと知るや、オイディプスさながらに両眼を突いて了、という大傑作です。
私は、「薔薇の葬列」が頭に浮かんだ瞬間に、ドラマ「おしん」を詳しくは知らなくとも、物語原型という形式が、いかに作品を奥深く面白い物にしているかが、納得出来ました。

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そして、実技のお勉強に入りました。
最初に、夢遊病者となってしまったマクベス夫人の長台詞をやりました。
一度目に読んだ時ーーー
先生は、「復習をよくやってきたのが解ります。 で、次の段階として、力が入り過ぎている点、心がリラックスしていない点があるので、結果として、観客に対してのコミニュケーション力が乏しくなっています。 あと、心がリラックスすれば、滑舌もよくなるかも?知れません」と仰いました。
その他には、「早く読む所が早過ぎて、遅く読む所が遅過ぎるので、一人の人物がしゃべっている様に聞こえないし、バランスが悪いです」ーーーとも。
ダメ出しを受けながら、二度、三度と読みました。
最終的なダメ出しとしてはーーー
「太り過ぎている感じがします」
「それは、具体的にはどの様な事なのですか?」と質問すると、
「『太り過ぎ』っていう演劇の専門用語がある訳じゃないんだけどね、僕がイメージとしてそう感じたという事で、要するにーーー」と、詳らかに説明してくださいました。
要するに、一つ一つの言葉に必要以上に意味を持たせ過ぎている。 だから、重たい物をズルズル引きずっている様に感じられる。
自分の内には色んな物を詰め込まなければならないんだけど、それを全部出そうとはしない様に。 もっとスキニーに! という事でした。
先生は、私が昔、画家をやっていた事をご存知なので、私にはしばしば絵画に例えてくださるのですが、今回も絵画に例えてくださった為に、そこで理屈としてスッ!と理解が出来ました。
だけど、筆という手段と声という手段は大きく違います。
理屈で解ったところで、果たして、この難しい課題、私にどこまで出来るだろう?ーーーうーん、大変な課題を与えられてしまった!と思いました。

次に、マクベスとマクベス夫人が、国のお偉さんを集めてパーティーを開く中、マクベスが、自分が殺させた者の幻影を見て錯乱し、パーティーがお開きになってしまう、という場をやりました。
マクベス役をやった時はーーー
マクベスは何の為にこの場にいるのかを忘れずに読む事、これは公式のパーティーである格調の高さを出す事、を主に注意されました。
ぼんぼちさんが一度目に読んだのだと、軽い単なる宴会で、幻影にばかり集中しているーーーと。
二度目は、一つ一つ細かく、「ここは、こういう状況でこういう気持ちだから」と、ご指示を受けながら、なんとか読みました。
マクベス夫人をやった時はーーー
一度目に読んだ時のダメ出しは、公の場であからさまにそんな風に夫にケンカをふっかける様な言い方はしない。もっとこっそり、マクベスにだけ聞こえる様にーーーでした。
夫人役の二度目の時は、一度目のダメ出し通りに読んだら、それほど多くは注意されませんでした。

「太り過ぎない様に、もっとスキニーに!」
この課題、私にいつか、克服出来る時が来るのだろうか???
次回のテキストも「マクベス」なので、とにかく、復習出来るだけ復習しようと、拳を固くしました。
テキスト、読むべし!読むべし!!読むべし!!!

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Rchoose19

セリフが『太りすぎてる』って、なんとまぁ・・・
普段のおしゃべりでは、そこまで心の内なるものを
言葉に乗っけないですもんねぇ~~~。
観客とのコミュニケーションもセリフに込めないと駄目なのですね。
今回もいろんな宿題が出されたのですね♪
頑張っちゃってくださいね~~♪
by Rchoose19 (2023-10-04 07:42) 

kazukun2626

頑張って下さい~
by kazukun2626 (2023-10-04 07:47) 

mitu

シンデレラとおしんは結び付きませんでしたが
どちらも、シンがありました^^
「太りすぎ」って、人によってはドキッとしちゃいそうなお言葉ですね
演技って深いのですね。
by mitu (2023-10-04 07:58) 

Boss365

こんにちは。
シェイクスピアの作品・特に四大悲劇は、現代の小説やドラマなどの原型?になってますね。ダメ出しの「太り過ぎている感じがします」なる程の説明ですが、表現する立場になると難しそうです。「国のお偉さんを集めてパーティー」の場面、マクベスの狂気的な表現あり、これまた複雑な演技・表現ありますが、踏ん張って下さい!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2023-10-04 10:54) 

八犬伝

物語原型ですか
そうか坪内逍遥が訳して、「シンデレラ」から「おしん」としたのですか。
by 八犬伝 (2023-10-04 11:24) 

溺愛猫的女人

「薔薇の葬列」はピーターが出演していた作品ですね。昔、見て衝撃を受けた思い出があります。オイディプス王でしたか。なるほど!!!
by 溺愛猫的女人 (2023-10-04 12:09) 

Take-Zee

こんにちは!
涼しくなったのでレッスンも気持ちよい汗を
かけますね!!

by Take-Zee (2023-10-04 14:04) 

hana2023

「太り過ぎない様に、もっとスキニーに!」演劇の先生だけに、流石の名台詞です!
私も肝に命じたい!・・・とは、どこで?
by hana2023 (2023-10-04 16:41) 

なかちゃん

最初スキニーという言葉の意味が解らなくて、思わず調べてしまいました ^^
英語でいう方が堅苦しい日本語と違って雰囲気が伝わりやすいのかもしれませんね(^^)

by なかちゃん (2023-10-04 18:03) 

werewolf

聞けば聞くほど奥が深い・・・
私はダメだしされて凹みそうですが(^_^;)
by werewolf (2023-10-04 19:47) 

kiyotan

先生はきちんと率直に言ってくださる良い先生ですね
具体的にどうすればよくなるのか言ってくれるのも良いですね やたらに褒める先生では人は伸びませんよね
私も詩の合評会などで批評すらされないのは辛いですよ。

by kiyotan (2023-10-04 21:34) 

サンフランシスコ人

「.....結果として、観客に対してのコミニュケーション力が乏しくなっています.....」

コミニュケーション力!......難しいそうですね..... 
by サンフランシスコ人 (2023-10-05 00:47) 

ぼんぼちぼちぼち

みなさん

さっそくのコメントを、ありがとうございやす。
そう、太り過ぎているからスキニーに、、、先生は、その直後に、絵画に例えてお話ししてくださったので、そこで、なるほど、その通りだ!と、解りやすかったでやす。
絵画では、画面にあるもの全てを描き込みすぎてはいけないんでやす。
主役になるものを強く押し出すように描いて、脇役や端役のものは、軽く目がいかないように、だけど、いい加減ではなくデッサンに手抜きなく描くんでやす。それと全く同じ理屈だな、と。
正解が明確に見えたから、難しいけど、いつかは出来る日が来るか!?と、いっぱい復習しやした。
今日は、ちょうどこれから次のレッスンなので、ここ出来ているかどうか先生にみていただくの、ドキドキでやす。

へい、今の先生は、ほんとに的確にズバッとどこがいけないのか、何がいけないのかを指摘してくださるので、お習いする価値がありやす。
以前、朗読教室に通ってた時の先生は、アクセントに関して「その音を高く」で、高く言うと、「やっぱりそれは高くしないでその次の音を高く」とかって、延々五回くらいは言い直されてたんでやすよ。毎回。
アクセントは、ぼんぼち、一回正解を教えていただければ一度で出来ますよっての。
なんであんなに毎回、正解を仰るまで時間がかかるんだろう?アクセント辞典を手にされてるのに、って、疑問に思ってイライラしてやした。

おお!「薔薇の葬列」ご覧になりやしたか!
すごい作品でやしょ!
あっしは、全ての映画監督・映像作家の中で、松本俊夫先生を一番尊敬していて、劇映画の中では、「薔薇の葬列」は「ドグラ・マグラ」についで、好きな作品でやす。
一度目に観たとき、「あっ!これは、オイディプス王が下敷きになってるな!」って気がついたんでやすよ。
母も殺すし、「アポロンの地獄」の映画ポスターもズラリと貼られている場面もあるし。
で、その後、映像理論を勉強してた頃、松本俊夫先生の講義を受けた時、松本先生ご自身も、「あの作品は、オイディプス王が下敷きになってます」と仰ってやした。
でも、その時、松本先生は、「下敷き」という言葉を使われていたので、物語原型という言葉があるのを知ったのは、今回初めてでやす。

さあ、これからレッスン、あっしなりにがんばってきやす!

by ぼんぼちぼちぼち (2023-10-05 09:05) 

drumusuko

物語原型の意味が良く分かりました^^。おしんとシンデレラ、なるほどなるほどと思いました。長台詞も難しそうですね~。心のリラックスや太りすぎ????。難しい事に果敢に挑戦しているぼんぼちさん、素晴らしいと思います(^^♪。
by drumusuko (2023-10-05 17:24) 

おと

マクベス、この夏に観てきたばかりなので興味深いです。太りすぎずスキニーにというイメージ、ピアノでも共通な認識があるなぁと思って読みました。奥が深くって難しいけれど、そこがまた楽しいところでもありますね^ ^
by おと (2023-10-05 19:08) 

JUNKO

頑張っていますね、成果が出ることを祈っています。
by JUNKO (2023-10-05 20:48) 

めりー

自分にとってわかりやすいたとえで教えてもらえると
目からうろこのような、あっ☆っていう感じがしますよね^^
>テキスト、読むべし!読むべし!!読むべし!!!
がんばってください☆彡
by めりー (2023-10-05 23:44) 

Ja-Kou66

セリフが太り過ぎ、こういうのも表現者ならではの表現ですね。
シンデレラの日本語題が「おしん」だったとは!
そうか、シンデレラのシンでおシン・・・なんとなく納得です。
by Ja-Kou66 (2023-10-06 00:10) 

向日葵

「薔薇の葬列」はかなり後になって(つまり最近)
やっとDVDの古いのを手に入れて見る事が叶いました。
公開当時にとても見たかったのですが、まだ当時中学生か
高校生だったワタクシには難しかったのです。
ただ、長年の夢だったので「期待値」があまりに高くなって
しまっていて、あと作品が難しいのもあって、初めて見た時は
「???」という感想でした。
あれだけ騒がれていたのはなんだったんだろう・・??
と。
オイディプス王の話も、もっと子供の頃、夢中になった記憶が
あります。
あれが下敷きなのだ、とわかれば、DVDへの見方も変わって
来るのかも・・??
ちょうど良い機会なので、もう一度DVDを見てみようと思い
ます。
by 向日葵 (2023-10-06 02:48) 

sakamono

「物語原型」という言葉、小説の勉強などをしていても出てきます。
それにしても...「シンデレラ」を「おしん」と訳すとは^^;。
とにかく勉強! 充実していますね。
by sakamono (2023-10-06 07:03) 

ぼんぼちぼちぼち

みなさん

へい、今の先生は、実技を教えてくださるだけでなく、このような目からウロコの講義も、毎回のようにしてくださるので、役者をめざしているのではなく、演劇・演技というものの構造や疑問を知りたい、解きたい、という目的があって通っているあっしには、非常に興味深いでやす。

昨日のレッスンでも、物語原型のお話しをされていたのでやすが、
正確には、物語原型は下敷きとは、少し違うそうです。
下敷きは、すでにみなさんご存知の意味。
物語原型は、もっと深い部分にある、全世界の人が、共通して心を突き動かされたり感動したりする構造になっている物語の原型。
で、その原型は、交流がなかった大昔から伝承されて、世界のあっちこっちにある。
その一つがシンデレラ型ストーリーで、シンデレラも、シンデレラという話しが創作者によって、唐突に出来たわけではない。と。
でも現代では、それを、シンデレラが物語原型になっているね、という言い方がされるようになってきたそうでやす。

あっしは過去に、日本シナリオ作家協会でシナリオ作法を勉強していやしたが、そこまで深いことは、みぢんも教えていただけやせんでやした。
シナリオ作家協会では、とにかくシナリオに大事なのは、起承転結の法則を破らないことと、「日本の端っこに住んでる中卒の漁業のおじいさんが、一度観ただけで100%理解できて面白いと思えるシナリオでないとダメです!」と、そればかりを口をすっぱーくして言われてやした。

太り過ぎをスキニーに、、、昨日は、夫人の長台詞のところはやらなかったので、あの部分、どのくらい出来ていたか、診ていただけなかったのでやすが、あれだけ復習したので、決してムダにはなっていないと思いやす。

「薔薇の葬列」は、オイディプス王を下敷きにしているのみならず、
あの映画の構造というのは、フィクションの劇映画に、要所要所で、ドキュメンタリーが盛り込まれているんでやすね。主役のピーターやオカマさんへのインタビューや、クスリをやってる人へなどの。
で、劇中のオカマ役も、役者ではなく、あえてホンモノのオカマさんが使われてやす。
松本俊夫先生のことだから、画に手抜かりなく、どのショットの構図も完璧なのでやすが、
あの映画を理解しようと思ったら、
先ず、この作品は、劇映画にドキュメンタリーがクラブハウスサンドイッチのように入れ込まれた構造の映画であるということ、
当時の新宿、、、学生運動やフーテン文化が盛んだったこと、
そして、オイディプス王を性を逆転させて描いているところ、
でやすね。
これだけの情報を以てご覧になると、だいぶ解りやすいと思いやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2023-10-06 08:56) 

リンさん

面白い話ですね。
おしんの原型がシンデレラだなんて。
それにしても先生の教え方は本当に分かりやすくて素晴らしいです。
セリフが太っているとか、表現も面白い。
by リンさん (2023-10-06 19:30) 

そらへい

坪内逍遥が訳したシンデレラがおしんとは驚きです。
確かにシンデレラの頭文字と名前の前におをつける昔のやり方だと
おシンになりますね。
自分の声、肉体を絵筆のように扱うのは
確かに難しいのでしょうね。
by そらへい (2023-10-06 21:03) 

たいちさん

言葉の「太り過ぎ」とは、面白い表現ですね。
by たいちさん (2023-10-06 22:07) 

ぼんぼちぼちぼち

りんさんさん

今の先生の教え方は、何故そうなのかも説明してくださるし、納得できることばかりでやす。
ぼんぼちは、こういうプロの先生に演技を教わってみたい!と思いつつ、50年近く経って、ようやっとその夢が叶いやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2023-10-07 08:50) 

ぼんぼちぼちぼち

そらへいさん

へい、ぼんぼちは、絵筆を扱うのが難しいと感じたことはありやせんが、
声でそれと同じ理屈を表現するのは、なかなかできやせん。第一に滑舌悪いし。
by ぼんぼちぼちぼち (2023-10-07 08:53) 

ぼんぼちぼちぼち

たいちさん

今の先生は、他にもとても面白くて的確な表現をしてくださいやす。
芸術家だなあと、思いやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2023-10-07 08:56) 

mau

共通認識があると受け入れしやすいってことなんでしょうか。
逆に外国のお話はバッググラウンドが日本人だとわからないから難しいのかも
by mau (2023-10-07 18:26) 

ぼんぼちぼちぼち

mauさん

共通認識というよりももっと深い部分の、よっぽど特異な人間以外の人間であれば、世界中共通の、このツボを押さえれば感動が突き動かされる、という、人類共通の感情を動かすドラマツルギーでやすね。
by ぼんぼちぼちぼち (2023-10-07 20:52) 

yokomi

太り過ぎ....は分かる気がします。話すときだけじゃなく、文を書くときにも気を付けたいです(>_<)
最後の1行は某氏のブログを思い出しました(^_^;)
by yokomi (2023-10-19 09:57) 

ぼんぼちぼちぼち

yokomiさん

そう、文章を書く時も、余計な装飾を入れすぎると、うんざりするものでやす。
あっしは文章は書き慣れていやすが、台詞は、先生に指摘されて初めて気が付きやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2023-10-26 12:38) 

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