「デッサン」と「スケッチ」の違い [画家時代]

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このブログを長く読んでくださっている方はご存知のように、私・ぼんぼちは、18才から27才まで 画家をやって、毒母を養っていました。

画家でしたから当然、定期的に個展を開いておりました。
個展というのは、いちどきに多くの収入を得られ、新規顧客の開拓も出来る 画家にとっては必須の仕事の一つなのです。

画家というのは個展会場で、画商を間に挟んで お客さん達と会話をする訳ですが、個展のたびに私は、こう 驚かされていました。
「お客さんというのは、何て、絵画の事を知らないのだろう?」ーーーと。
個展会場に来てくださるお客さんは、皆、絵画が好きか興味があるか、どちらかの方達ばかりに決まっているにも関わらずーーー

今、思い返すとーーー
現在、私は、趣味で演技をお習いしていますが、お習いするたびに、「あぁ、私って、演技が好きなのに、先生に指摘されて初めて気付かされる事だらけだ。 何て自分は、演技の事を解っていなかったのだろう?!」と思い知らされ、つまり、プロとアマには歴然とした違いがあり、それと同じ理屈なので、当たり前といえば当たり前なのですが。

そこで、再び話しを絵画に戻し、みなさんに質問します。
「デッサン」と「スケッチ」の違いって、何だか、お解りになりますか?

正解はーーー
デッサン=基礎訓練
スケッチ=取材
です。
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つまり、デッサンというのは、まだデッサン力が完璧についていない絵画勉強中の者が、石膏像なり 器物なり 花なりの、形 質感 光の当たり方 影の落ち方を、事細かに正確に頭に叩き込み、絵画の基礎中の基礎であるデッサン力をつける訓練です。
ですから、プロの画家になったら、デッサンはしません。
プロの画家は、デッサン力を習得しきっていますから。
役者さんもプロになったら、「外郎売」の練習をしないのと同じです。

対して、スケッチというのは、例えば、ユリの花のつくりはどうなっているのか、などを観察し、描き覚えるものです。
花びらを裏側から観た形がよく解らなかったら、スケッチブックの一枚の中に、花びらの裏側だけを様々な方向から描いたりします。
これは、勉強中の者も勉強の為にしますし、プロの画家も、「壺いっぱいのユリの花を」という注文が来たりと、必要に迫られる事が多々あるので、やります。
役者さんに於いても、勉強中の役者志望の人が、出来る役柄を増やす為に、例えば、バーに行って、バーテンダーさんの所作を観察する事もあれば、プロの役者さんが「バーテンダー」という役を与えられてから バーに観察に行く事もあると思います。
それと同じです。

具体的に、デッサンとスケッチが、見た目にどう違うかというとーーー
デッサンというのは、白黒写真に撮った様に、綿密に描き込みます。
描く画材は、木炭か鉛筆です。
一方、スケッチは、自分が知りたい事が知れ、その部分が頭に入れば良いので、線だけで描いてあったり、色も覚えておきたい場合は、覚えておきたい部分にだけ 色をつけたりします。
画材は、鉛筆かペン、絵の具は、水彩絵の具の場合が多いです。

この様に、まったく目的の違う デッサンとスケッチですが、共通項もあります。
それは、タブロー(本制作)ではないので、基本的には 額に入れて人様にお見せするものではない、という事です。
あくまで描く本人が、勉強の為 覚え書きの為に描くものです。

しかし、何が何でも、それを守らなければならぬという規則などはどこにもなく、優秀な画学生の描いたデッサンは、見惚れるほどに美しいですし、プロが自分だけの為に描いたスケッチも、たまたま構図も色の乗せ具合もバランスが取れていて、鑑賞に値する事も少なくありません。
そういうデッサンやスケッチは、遠慮なく額にいれて飾ったり、買い手がつけば売って良いのです。

以上が、デッサンとスケッチの違いと、その概要です。

付けた画像は、某街の駅ビル構内の、食品コーナーの壁に描かれていた絵。
この絵などは、精密デッサン的に描かれた ディスプレイ画ですね。
デッサンで習得した技術を、この様な形で昇華させるのも、一つの画風です。

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