映画「ジャニス・ジョプリン」で、ジャニス降臨! [感想文]

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先日、映画「ジャニス・ジョプリン」を観に行きました。
この映画は、同名のブロードウェイミュージカルを、キャメラワークを駆使して映像に収め、一本の映画作品として、本場ブロードウェイまで足を運べない日本の演劇ファンを対象に、松竹が仲介役となり 作られた映画です。

先ず、幕が開くとーーー
そこはジャニス・ジョプリンのライブ会場。 ジャニス役の役者さんが、いきなりジャニスの代表曲を熱唱し始めます。
舞台を観に来ている観客は、その時点で、ジャニスのライブを聴きに来ている観客という設定となります。
何曲か歌ったジャニス役は、MC席に掛け、「私が最初に耳にした音楽はね、子供の頃 お掃除していると、いつもお母さんがベッシー・スミスのレコードをかけててね、、、」などと、思い出話しを観客に向かって始めます。
すると、ステージ上方から、当時の扮装をしたベッシー・スミス役の役者さんが、ベッシー・スミスの代表曲を歌いながら階段を降りてきます。
こうして、ベッシーの他に、ニーナ・シモン、オデッタ、エタ・ジェイムス、アレサ・フランクリンと、ジャニスの人生の、その時時で彼女に多大な影響を与えた女性ブルースシンガーが、ジャニスの歌の合間のMC時に 降りて来ては歌い、時に彼女達は、ジャニスと共に歌い 手を取り合い、思い出と劇中の現実が一体化する場面も出てきたりします。
こうしてジャニスを中心に、思い出の歌手達とのライブは盛り上がり、ジャニスは、「私は、これからも頑張って歌っていくわ!」と観客に呼びかけ、幕は閉じます。

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私はこの構成に、「アッパレだ!」と、舌を巻かずにはおれませんでした。
この舞台は、ジャニスの伝記演劇なのですが、ジャニスが幼かった頃は、絵ばかり描いていた孤独な少女だったとか、後期はドラッグに溺れて、そして若くしてドラッグで死んでいったとか、そういった 彼女がどの様な生涯を送ったかという事は、この舞台を観に来ている観客の99.99%は、十二分に知っている訳です。
時系列でジャニスの成長を追ったり、回想場面を用いて、子供だった頃のジャニスを登場させ、たとえその子役が最高に上手かったとしても、観客の99.99%は、「私達が、このミュージカルで観たい聴きたいのは、そんなんじゃない!」と、不満でいっぱいになるのは必至です。
そう!この舞台に足を運んだ客、ひいては この映画に足を運んだ客の99.99%は、ジャニス・ジョプリンの曲を聴きたいのです。
如何に、ジャニス役の役者さんが、ジャニスと寸分違わぬ歌声を聴かせてくれるのか という事に期待を集中させているのです!

ジャニス役の役者さん、期待を遥か遥かに上回る素晴らしさでした。
何の前情報もなく あの役者さんが歌っているのを聴いたら、「あぁ、ジャニスね、いつの録音の?」とみぢんも疑わないほどに、声質から歌い方まで 完璧にジャニス・ジョプリンでした。
ジャニス降臨!とは、まさに こういう事を言うのだ!と、感嘆しました。

又、ラストの台詞が、笑顔で「これからも私は歌っていくわ!」というのも、心憎く 涙を誘わずにはおれませんでした。
あんなに早く逝ってしまうとは、ジャニス本人は思ってもいなかったのですから。
あれを、ジャニスの早逝を表現する演出ーーー舞台上でバタッ!と倒れたり、「薬!薬!薬!」と叫ばせたり、ジャニスに影響を与えたシンガー役達に、「ジャニスはもういない」などと歌わせては、鼻白むというものです。

私は、ジャニス・ジョプリンの熱烈なファンという訳ではありませんが、ロック喫茶を訪れた折には、必ずジャニスのアルバムをリクエストするくらいに好きです。
中でも、サマータイムは、他のどのミュージシャンが歌うのより、聴き入ってしまいます。
勿論、本作品でも歌われ、私を陶酔の極地へといざなってくれました。

日本に居ながらにして、映像化といえども、ブロードウェイミュージカルの達作が観られるなんて、幸せの限りです。
「松竹ブロードウェイシネマ」という企画の一つなのだそうですが、松竹さん、これからもこの企画、是非とも続けていただきたく思います。

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