麻布十番は魅力充分! [独り言]

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今年から私事で、麻布十番に何ヶ月かに一、ニ度、訪れる用事が出来た。
私はこれまで、麻布十番に行った事がなく、「せっかくしばしば訪れる事になった街なのだから、愉しい寄り道が出来る街だといいな!」と、淡い期待を持った。

先日、初訪した日は、あいにく激しい土砂降りと寒さで散策どころではなく、用件がある場所を確認するや、「もう何処でもいいから時間調節の出来る場所を!」と、チェーン店系のコーヒーショップで妥協したのだった。

そして先日、二度目の用件の日ーーー
寒さもさほど厳しくなく 晴れ間も見えていたので、「これはチャンス!」と、早めに家を出た。

とにかく、用件のある場所からあまり離れず 迷子にならない範囲を、ぐるぐると歩いてみる。
坂と 米菓子などの甘くない和菓子店と 大手・個人両者のコーヒーショップと 敷居が高くなさそうでいながらも拘りの呑み屋が多い、という印象を受ける。

麻布十番といえば!の「豆源本店」を発見!
豆源本店で、親友へのバレンタインの贈り物を買おうと目論んでいたのだ。
しかし残念ながら、定休日なのか営っていなかった。

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と! 道を挟んだ向かい側に、何ともカラフルで可愛らしい店構えの店舗が見える。
「あげもちcocoro」という揚げ餅屋のようだ。
入ってみると、とても小さな店ながらも、様々な意匠を凝らした揚げ餅が、これもまた意匠を凝らしたパッケージに入れられて並べられている。
若い女性店員さんに聞くと、こちらの店はそう多数支店を出してはいないそうなので、「これは貴重な贈り物になるぞ!」と、この店で購入する事に決める。
どの箱にしようか 中身の味は何が良いかなど、店員さんは最上級の接客態度で対応してくださった。
「この店で購入して良かったな」と心から安堵して、あげもちcocoroを後にする。

用件まであと一時間半ほどになり そろそろお茶しようと考え、さきほど通った大通り沿いに「カフェ・ラクーン」という個人経営の喫茶店があったので、時間が来るまでそこで過ごす事にする。

カフェ・ラクーンは、改装こそされていて 内装は明るくピカピカだったが、明らかに、1970年代くらいから在ったであろう喫茶店だと 推測出来た。
カウンターにサイフォンが並んでいるところや 飾られている花がアレンジメントというより華道の生花っぽいところや 平日の昼間でありながらも常連さん達でほぼ満席に近くなっているところや ママさんがグレイッシュなヘアでとても気さくなところなどからーーー
ロイヤルジンジャーミルクティーというのを所望する。
ロイヤルミルクティーにジンジャーを加えただけなのだろうけれど、それだけで、私の大好物のチャイに非常に近い味わいと香りで、とても美味。
喫煙も可で、殆どのお客さんが紫煙をくゆらせていた。

用件を済ませ、今度は、先に巡った辺りより南の方に足を向けてみる。

「ハンガリー文化センター東京」という会場で 何やら写真展が開かれている様なので、入場してみる。
「キンスキ・イムレ」という 戦前から終戦の年まで生きておられたユダヤ系ハンガリー人の方の個展だと判る。
白黒ならではの想像力を掻き立てるクールな作品群で、殊 特徴的だったのは、安定させ過ぎない 実に心憎い 影を計算に入れた構図が何点もあった事である。
係りの女性の方が、一点一点の作品について、又 ハンガリーの特産食品や 次回はヘレンドの食器展が開催される事などを、大変丁寧に解説してくださった。 

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南の方の小道をもうぐるりと一周りして帰路につこうと歩をすすめるや、なんと!再び個人経営の喫茶店に遭遇!
しかも、外観も中を覗いてもセピア色!
見上げると、「西琲亜(セピア)」という看板が下がっていた。
一もニもなく扉を押す。
これぞ、私がこれまでの人生で最も多く寛いできた どこもかしこもセピア色で雑多な雰囲気の 懐かしさを覚えずにおれない喫茶店である。
この店の一推しであるらしい「レアチーズケーキとブレンドのセット」を注文する。
クリームチーズの味の前面に出たチーズケーキにはレモンスライスが乗っていて、レモンの酸味が程よくチーズケーキに移っていた。
コーヒーはペーパードリップ。
濃すぎず苦すぎず、飲みやすいタイプだった。
ここも喫煙可だったので、私がリトルシガーをマッチで以て着けて吸っていると、マッチをきっかけに、初老のマスターと会話が弾んだ。
話しの中で、マスターは、この店は1981年から営っている事 コーヒーの味には自信があるので創業以来一切味を変えていない事 跡継ぎがいないのでご自身が仕事が出来なくなったら閉店する事 麻布十番には意外と出店していない大手チェーン店が幾つもある事 南北線開通が予定よりずいぶん遅れ それまでこの街にはバスに乗り継いでしか来られなくてとても不便だった事、などなどなど、、、
帰り際に、「また来てね」と、静かに微笑んでくださった。

麻布十番は、充分に、否 十二分に、否 二十分に魅力溢るる街なんだな!と、清流の様に透んだ気持ちで駅の階段を下った。
こんなに素敵な街に、これからしばしば来る運びになったとは幸運である。

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