半分影になっているキャベツ [写真]

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自然派食品店の店頭で、一個だけ売れ残っていたキャベツ。
現実には冬の弱い陽の下だったので、「薄ぼんやり影になっている」程度だったのでやすが、撮ろうという段階から、左右対称の構図でキャベツを上に位置させて、加工は白黒で極端なハイコントラストにすると絶対にアーティスティックにキマる!と確信し、結果、100%その通りになってくれやした。
あっしなりに、とっても気に入ってる作品でやす。

キャベツ。 近年はスーパーで買うと、青虫が出てくることなんて、まずなくなりやしたね。
もしも出てきたりしたら、すごいクレームが入りそうでやすね。
でも、こういう自然派食品のお店だと、青虫が出てくる事もありそうでやすね。
あっしは別段、自然派食品志向の者ではないのでやすが、何かの機会に買って青虫が出てきたら、捨てないで育ててみようかと思ってやす。
だってロマンティックじゃないでやすか! 自分の部屋の中で蝶が生まれるなんて!


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秋葉原に在った喫茶店「古炉奈(コロナ)」の思ひ出 [喫茶店・レストラン・カフェ]

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あれはまだ、私が朗読のレッスンも受けていて、かつブログも始めていた頃だから、およそ十二年ほど前の事になる。
朗読の自主練に使う為の録音機材を、その方面に明るい友人に見立ててもらう という理由で、二人で秋葉原に出向いた。

機材を買い終わり、どこかで一休しようという話しになった時、友人は、「それなら『古炉奈(コロナ)』がいいよ! ぼんぼちちゃん、絶対気に入るから!」と、寸分の迷いもない口調で提案した。

古炉奈は、秋葉原駅に隣接したアキハバラデパートのニ階に在った。
大きな窓から、贅沢過ぎる程に陽が入り、広々としたフロアには、ぽつり ぽつりと、十二分にプライベート空間を満喫出来る間隔で、焦げ茶色のスマートなテーブルと椅子が配置されていた。
友人は、「ここのテーブルと椅子は、長野の松本民芸家具のなんだよ」と指した。
どおりで、細い造りながらも重厚感のある レトロかつ洒落た 品のいいテーブルと椅子だった。
ーーーという事は、ここは数在る喫茶店ジャンルの中では民芸喫茶になるのだな、と思った。

民芸喫茶は、私はかなり好きなジャンルの喫茶店で、中学一年の時からあちこちの民芸喫茶の扉を押して来た。
有名所だと、新宿の「青蛾」あたりには、学校帰りに 勘定不可能なほど立ち寄っていた。

民芸喫茶というと、大抵、ニスの塗られていない木造りの薄暗い内装に、棟方志功の版画 棚には益子焼きの器というのがお決まりだったが、これほど明るくスタイリッシュで まるで軽井沢の高級ペンションのような民芸喫茶は珍しいな、と見回した。

メニューが運ばれて来るや友人は、「ここは炭火焼きのアイスコーヒーが美味しいよ!」と薦めるので、それを頼んだ。
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運ばれて来たのはーーー
ミスト状態に冷やされたフルート型のシャンパングラスに入れられた 氷の入っていない 真っ黒なアイスコーヒーだった。
一口、口に含むとーーー
濃く 苦く ひんやりと、松本家具同様に、重厚感のある味わいだった。
これなら!
私は、ある飲み方を試してみる事にした。
こういう方向性のコーヒーを出す店は、ミルクは、近年開発された植物性のコーヒーフレッシュではなく 100%純正の生クリームに違いないぞ! だとしたら、グラン・エ・ノアール(琥珀の女王)の様に、生クリームをフロートして飲んでみよう! と。
添えられた長いスプーンにピッチャーのミルクを一垂らし流し入れて確認してみると、やはり100%純正生クリームだった。

私は、スプーンの背をグラスの内側にあて、生クリームを静かに一センチ程の厚さに注ぎ、フロートした。
ーーー私は昔、カクテルラウンジでアルバイトしていた経験があるので、フロートのやり方を知っていたのだ。
しかも、リキュールにリキュールをフロートするなどというのは 比重が近い同士なので難しいのだが、生クリームは非常に比重が軽いので、フロートするのは、訳無い技術なのだ。

ちなみに、生クリームをフロートするカクテルの代表格には「エンゼル・キッス」というのがあるが、あれなどは、見た目は凝ってはいるが、バイト初日から作れる極めて簡単なカクテルなのである。

飲んでみると、予想通り! 生クリームの濃厚さと濃くて苦いコーヒーの力強さが上手く共演し、二種の味を同時に享しめた。

ふとカウンターの方を見やると、三人ほど並んで立っていらっしゃるウエイトレスさん達が、揃って 目を丸くして「驚きを隠せない!」といった面持ちで、私のグラスを凝視していた。

友人は、「あと何年かしたら、アキハバラデパートは取り壊されちゃうから、この店も無くなっちゃうんだよ」と耳打ちした。

あれから十二年ーーー
友人の耳打ち通り、古炉奈も無くなり、私の知る限り、街からは、阿佐ヶ谷の「珈司」を最後に、民芸喫茶も一軒も無くなってしまった。

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中野のバー・ストロベリーフィールズの看板 [写真]

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中野駅北口のアーケードの一つ東の ごっちゃごちゃした飲み屋通りの中に在る かっこいい看板のバー。
看板そのものがかっこよく、撮ったあっしは、どのアングルがベストかちょっとだけ考えたことと 看板やレンガの色に合わせて暖色系のトーンをうっすらとかけたくらいなので、この写真の出来の力は、99%この看板をデザインされたデザイナーさんの力でやす。
あっしがスマホを向けていると、近くに立っていらしたバーテンダーさんらしき方が「じゃんじゃん撮って、インスタでも何にでも載せてください!」とお声をかけてくださいやした。
感じのいい店員さんだったので、このバー、いつか入ってみようと思ってやす。

ストロベリーフィールズという店名から、オーナーさんは明らかにビートルズファンでやしょう。
みなさん、ビートルズはお好きでやすか?
あっしは、初期の頃だけが好きでやす。
てか、ビートルズに限らず、ストーンズも キンクスも ヤードバーズも フーも ホリーズも、みんな初期の60年代前半だけが好きでやす。
というのは、黒っぽさの残るロックンロールは好きで、洗練されてきて独自のロックの音を見つけ出してゆく頃になると、興味はなくなるんでやす。 まあ、単に「主観的な好み」の問題なんでやすが。
その中でアニマルズだけは、いつまで経っても黒っぽいことやってたので、アニマルズなら、あっし的に、いつの時代のアルバムを聴いても「これは違うな感」はないかな、って感じでやす。


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映画「夜がまた来る」にみる完璧な映像美 [感想文]

世の中には、もっと高評価を受けていい筈なのに 相応しい評価を受けずに 映画史に埋もれている作品というのがある。
今回紹介する「夜がまた来る」も、そんな映画の一つである。

「夜がまた来る」
監督・脚本 石井隆
1994年製作

シノプシスはーーー
麻薬Gメンとして潜入捜査を始めた夫が何者かに殺された妻・名美が、夫殺しの犯人だと目星を付けた某ヤクザの組長に、高級クラブのホステスとなり近づき、組長の女となり、チャンスを見つけるや殺そうとするが、失敗し、組長に、場末の風俗店に売り飛ばされ、シャブ漬けにされてしまう。
そんな名美を探し出し、シャブの後遺症を抜かせるまで献身的に尽くしたのが、その組の幹部・村木であった。
名美は村木と計画的に組長をおびき寄せ、今度こそは抜かりなく組長を殺そうとするが、村木のピストルが、かつて夫が持っていたピストルと同一の物だと気づいた事により、夫を殺したのは組長ではなく村木だったと判り、一度は愛した村木を殺して、了。
村木は、実は、徹底的に組の者のふりをした麻薬Gメンで、意見の対立から、名美の夫を殺し、復讐をきっかけにどこまでも堕ちる名美に対しての自責の念から、あれほど名美に尽くしたのだった。
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このシノプシスからも判るように、物語は、非常に残酷で血生臭く 濡れ場も多い。
しかし、この作品を鑑賞するにあたって 見逃せずにおれないのは、紛れもなく「映像の美しさ」である。
季節の移り変わりを表現する、じっとりと止まない梅雨時の雨や ビル群に舞い落ちる雪や 揺れる桜の大木。
夫が麻薬横流しの疑いをかけられ マスコミに追われた名美に蘇る、数多のフラッシュの発光する白さ。
見せてはいけない部分は見せずに巧く隠しつつも、実にエロティックに 感心するほど様々な構図で展開される 数々の濡れ場。
場末の風俗店で シャブ欲しさに働く、下品なドレスと厚化粧を纏い 自暴自棄になっている名美を、村木が制し、夜の海辺でもつれ合う退廃的な画。
シャブが抜け、どれほど献身的に自分に尽くしてくれたかを悟った名美が、村木と身体を合わせるに至る、ブルーのトーンに玉ボケのゆっくりと落ちる、純粋に愛する心の表現。
村木が舎弟の首にビニール傘を刺し、血まみれのビニール傘が歪んでパッと開き、風に乗って飛んでゆく、おどろおどろしい美。
クライマックスシーン、つまり、名美が村木を殺す場である 夜の廃ビルの屋上に煌々と輝く イエロー オレンジ 黄緑色の、山積みにされたネオン。

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映画というものは、この様に、時間軸の移行や登場人物の心情を、「画」で以て表現するものである。しかも、そこには美しさがあってこそ魅せるに値するものである。それでこそ「映画」だ。と、改めて 深く納得させられずにはおれない。

中でも特に「心憎いなあ」と嘆息したのは、冒頭のショットとラストシーンとのつながりである。
冒頭のショットは、黒とピンクの幾何学模様が画面いっぱいに広がっている。
観客は、「はて? これは何だろう?」と、否が応でも前のめりになる。
するうち、キャメラがぐんぐん引きになり、それはピストルの持ち手部分に、名美が、自分と夫との絆の証として ピンクのマジックペンでハートを描いているのだと明確になる。
その段階まで観ている限りは、「ふうん、こういう冒頭のショットもあるのね」くらいの気持ちでいるのだが、ラストの屋上のシーンで、村木が持っていたピストルが、そのピンクのハートのピストルであったが為に 名美は瞬時に全てを知り、村木にピストルを向けるのである。
何という見事な、起と結の繋げ方だろう!! アッパレである。

であるから、この作品、家庭の小さな画面ではなく、是非とも機会を待って、劇場のスクリーンでご鑑賞いただきたい。
私は、去年の秋冬に神保町シアターで開催されていた「夜の映画たち」特集で鑑賞した。
余りにも感動したので、翌々日に、も一度足を運ばずにおれなかった。

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Microlonのステッカー [写真]

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古びたサッシの窓に貼られていた たくさんのステッカー。
同じステッカーが何枚も貼られていて反復図案的な面白さを覚えたので、撮り収めやした。
加工は、文字を黒くしてくっきり浮き立たせるために、ネガ加工をしやした。

このMicrolonって、一体何のことかと思って調べたら、車やバイクに使う薬品の一つなのだそうでやすね。
あっしは車もバイクも免許すら持っていないし、ドライブに同乗するのも大の苦手なので、初めて目にした言葉でやした。
思い返してみると、このステッカーが貼られていた窓は、確か、小さな自動車修理工場だったな、、、と気づきやした。

だけど、ぼんぼち、かっこいい車を『観る』のは大好きでやす。
谷保旧車祭(いわゆるクラシックカー展示イベント)には、何年も連続で通ったり、「おぉっ!」と思う車が通り過ぎると、振り返って眺めてしまいやす。

で、今までの人生で一番かっこいいと感じた車はでやすねー
あっしんちから西荻窪の駅に行く途中で五日市街道を渡るんでやすが、そこで信号待ちしてた一台の車ーーーなんと!70年代のオフホワイトのコンバーチブルの乗用車に フロント部分の八割方を、赤錆でサビッサビにしていたんでやすね。
車に疎いあっしでも、「これはご自身で、あるいは専門の業者さんに注文して オリジナルにカスタマイズされたんだな!」と解りやした。
乗っておられたのは、50才くらいの ロングヘアを赤茶色に染めて古着系の格好をした男性でやした。
車がかっこ良かっただけでなく、乗っておられるかたのイメージと何とぴったりだったことか!!
あっしは、もうちょっと長く信号待ちされていたら、「かっこいいですね!」と声を掛けていたところでやす。

ファッションでも全く同じでやすが、「かっこいい」「お洒落」というのは、単に高級有名ブランドを買ったり 流行りの物をポンと身に着けることではないんでやすよね。
「いかに、世界に一人だけの『自分』という素材に心身共に似合った物を探し出し、そのままではシックリ度が少ないと感じたら、自分仕様にカスタマイズ・コーディネートできるか」なんでやすよね。

あの錆びさせた車に乗られていた男性、骨の髄から「お洒落」というものを解っていらっしゃるかただな、と唸りやした。


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人間時間・猫時間 [独り言]

猫を飼っていた頃は、自由に家と外とを行き来させていたのだが、猫は、庭に出たと思ったら すぐ家に入れてくれと縁側に座ってニャーと鳴き、部屋に入れて 私に抱っこされたり、カリカリをほんの一口二口かじって キッチンをうろうろして、ちょっと座布団で丸くなったら、再び、窓の所に座って 出してくれとニャーと鳴き、これを一日に何度も何度も頻繁に繰り返していた。 初代の猫も二代目の猫も。
私は、「猫ってやつは、のんびりしているように見えて、意外とせわしない動物なんだなあ」と思っていた。

と、ある時、どこで聞いたのかは失念してしまったが、「人間が感じている時間感覚と猫が感じている時間感覚は大きく違うのです」という事を知った。
あぁ!なるほど! と、私は合点がいった。
人間にとって、例えば掃除か何かしているほんの短い間でも、猫にとっては、「ずーっと長い事 庭で遊んだから、そろそろ家に入ろう」あるいは、「かなり長い時間、家の中でしたいことを満喫して飽きたから、そろそろ庭に出たくなったぞ」という訳だったのである。
そもそも人間と猫は違う生き物だから、時間感覚も違って当然だな、と納得した。

そう考えると、では、人間同士は時間感覚がみな同じなのか?というと、それが違うのである。
どう違うかというと、「呑んべ時間」と「下戸時間」である。
呑んべは、一旦呑み始めると、時間感覚が突如としてひどくゆっくりと豹変するのである。
否、私も呑んべだから、呑んべサイドに言わせると、時間がゆっくりになるのが普通の時間経過感覚になるのだ。
しかし、それに付き合う下戸は、ウーロン茶か何かで普段と同じ時間経過を過ごしているのだから、そこに大きなズレが生じてしまう。
下戸にとっての、つまり現実の3時間は、呑んべにとっての「まだほんの30分くらいしか経ってないよね」状態なのである。
殆どの下戸が、どんなに上品な呑んべにでも付き合いたくない大きな理由は、そこであろう。

先日、下戸の年配男性が、商談で呑んべと酒の席を共にしなければならない事がしばしばあり、「あれほど長く苦痛な時間は他に無い」と言っていた。
その人は穏やかな人格者なのだが、「あの時ばかりは、ぶん殴ってやろうかと思うよ」
ーーーと。
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緑の飲料のケースと朱色の箱とブルーシート [写真]

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確か神保町の裏通りで遭遇した 緑色の飲料のケースと朱色の箱とブルーシート。
スマホのカメラを覗いた時点で、三者の色がベカベカに強く 配置も色の分量も成立していたので、「これは作品になる!」と直感し、撮り収めやした。
ベカベカの色が信条の写真なので、加工は、それを強調するために、少しコントラストをあげやした。
実際は単なる物置き場だったのかも知れやせんが、あっしはここに「居酒屋の舞台裏」といったイメージを受けやした。

居酒屋の舞台裏、、、といえばーーー
「お通し」は、必ず300円〜500円くらい儲けられる 店側にとって都合のよいシステムのようでやすね。
客の側からすると、「お通しなんて無くて、その分安いほうがいい」という意見のかたも多いようでやすが。
あっしは、食べられない物が多いので、やはり無いほうがいい派でやすね。
例えば、アサリとか ハマグリとか タコとか イカとか サラダとか こんにゃくとか 筍とか かまぼことか しょっぱい漬物とか、、、
そういうのどれも食べられないので、「こういうのが出てくるなら、お通し無しで、自分の食べられるものだけを注文したいなあ」と思ってしまいやす。
まあ、客にとってのお通しの利点というのは、飲み物が出てきたと同時につまめる物があるのは、注文した品が出てくるまでの間を感じずに済む、という事なんでやしょうけど、、、
みなさんは、お通しが出るほうが嬉しい派でやすか? それともあっしのように無いほうが嬉しい派でやすか?


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父に会わせてもらえなかった9年間 [父]

私の両親は、私が高校卒業と同時に離婚しました。
元々結婚した理由というのが、モテた父のとりまきの一人だった母が、父を一人占めしたくて、秘密で私を産んで、「これ、アンタの子だから責任取ってよ!!」と 強引に産んじゃった婚にもっていったからでした。
父は、「ぼんぼちが高校を卒業するまで」という期限つきで 結婚を了解しました。
そして、約束の、私が高校卒業時がきたので、予定通りに離婚し、二号さんにしていた女性を本妻にしました。

母が何故、ぼんぼちが高校を卒業するまで、という期限に承諾したかというと、「以降はぼんぼちに養ってもらえばいい」という算段があったからでした。
母が、私が母を養う母の出した条件というのは、「画家になって月々100万アタシに渡す事」でした。
私は幼い頃からファッションの仕事に就くのが夢でしたが、母の強引さに勝てずに、高校卒業後の進路を最終決定させて学校に提出するのが 高校2年の了りだったので、泣く泣くファッションの専門学校受験準備をあきらめ、高3で画壇デビューしました。

プロの画家になって稼ぐには、必ず画商につかなければ 月々安定した一定以上の収入は得られないので、画商がつくに値する大きな賞をいくつも取りました。
そして、高校卒業と同時に プロとして画家デビューをしました。

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しかしーーー
日曜も盆も正月も祭日もなく、画壇のパーティーと個展開催期間以外は、毎日毎日、一日18時間 筆を持ち続けても、母に渡せる金額は、30万がやっとでした。

母は、「30万しか稼げねーなんて、おめーはなんてダメ人間なんだ! これじゃあ産み損じゃねーか! 子供は18になったら親に100万渡して左団扇させるのが当たり前の親孝行ってもんだろーがっっ!!」と 般若の様な顔でののしりました。

それでも、次々と来る注文を徹夜でこなしても、個展で展示した60作品を完売させて追加で20作品受けても、30万代渡すのが、精一杯でした。

母は、「パパからは、土地と家をもらっただけで、離婚後は一銭も受け取ってねーし、どころか、パパとの連絡もつかなくなったんだよ。居所も解んねーんだよ。 だからおめーも、どんなにパパに会いたくたっても会えねーんだよ!」と 吐いていました。

私が身を粉にして次々30万渡し続ける生活が、8年続きました。
私は26才になりました。 私には、青春らしい青春など、何一つとしてありませんでした。
そんなある日ーーー
30万にしては母の豪遊っぷりがずいぶん派手なので、密かに調べてみるとーーー
母は父から月々40万送ってもらっていて、私にもまとまった額のお金をくれていた事が発覚しました。
母は、私と父から二重取りして、私へのお金もガメていたのです。
だから当然、父の連絡先も居所も知っていました。
母が私に、「パパの連絡先も居所も解らない」と言っていたのは、この事実がバレたくなかったからに他なりませんでした。
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私は、この8年間 生命がけでやってきた事があまりにも馬鹿馬鹿しくなり、同時に母に騙されていた事に、頭の中の糸がプツン!と切れ、「物心ついてからずっと母には虐げられてきたけれど、もう言いなりにはなるまい! 私は私の人生を生きてやるんだ!!」と 自分に誓いました。

すぐに母にこの事実を突き付け、「私はもう、金なんか渡さない! 画家なんて なりたくてなった訳じゃないから辞めて 自分の好きな人生、歩んでやる! この事をパパにも白状しろっ!!」と 強く強く出ました。
母は逆ギレし、私に馬乗りになって髪の毛をギューギュー引っ張ったり、「娘に殺されるー!助けてくださーい!」と狂言の電話で、パトカーや救急車を呼んだり、隣街のソープに、「ウチの娘を買い取ってくれ!」と交渉に走ったりしましたが、世間が、そんな嘘や馬鹿げた交渉を受け入れるはずもなく、私は画家を辞める事にし、父からのまとまったお金を母から渡させ、父の連絡先も居所も知りました。
父は、郷里の久留米に、本妻となった元二号さんと住んでいる、という事でした。

その旨を画商に話し、「今来ている注文を全て描き了えたら、私は画家を辞めます」と 決意のほどを伝えると、画商は、「ぼんぼち先生が筆を折られるのは、もったいないですねぇ」と残念がりつつも、一つ、私に言わないでおいた出来事がある、と打ち明けてくれました。
なんと! 母は、画商を私に秘密で表に呼び出し、「ぼんぼちのギャラをぼんぼちに払わずに、前払いでアタシに渡してほしい」と 頼んでいたというのです。
画商は、速攻 断った、と言っていました。
当然です。
作品のギャラは、画商から直接画家に支払われるものであって、いくら家族であっても、そんな形を取るとトラブルの元になるからです。
画家と画商との契約には、「あずかり制」と「買い取り制」の二種類がありますが、私は、より安定した収入の得られる「買い取り制」を選んでいたので、常に、作品を渡した時点でギャラ受け取り でした。
画商は、「僕が断った時、お母さんの手、震えてたけど、お母さんアル中?」と けげんな顔をしていました。
母は、逆上してくると、手が震え、その感情にもっと拍車がかかると、両手共つっぱってパー状態に筋肉が硬直するのでした。
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注文を受けていた作品を全て描き上げ、画商との最後の挨拶を交すと、私は迷う事なく、父が私にくれていたまとまったお金を元手にマンションを借り 家を出ました。
その事を知った父は、月々、私に生活費をくれました。
しかし、その生活費は、母が、父が直接私に送るのを嫌がりゴネて、一旦、母の所に送り、母が現金で、月一で私の住んでいるマンションに手渡すんだと 譲らなかったそうです。
理由は、今度はシタテに出て、何とか私に再び、今までの生活をさせようという魂胆が見え見えでした。
私は毎月、金だけ受け取ると、玄関ドアをピシャリ!と閉めました。

そのちょうど一年後ーーー
母はクモ膜下出血で脳死になり、あとは心臓死を待つだけの状態となりました。
病院のICUの患者の関係者控室の畳敷きの部屋に行くと、かっぷくのいい白髪の男性が、背を向けて寝転がっていました。
寝返りを打つと、それが父でした。
かっぷくの良さは以前と変わりませんでしたが、真っ黒だった髪が真っ白になっていたので、ちょっと驚きました。
起きて、9年ぶりの対面の喜びの挨拶を交わした後、父は、「とし江(母の名)には、月々100万送れ!と迫られたけど、もう他人になったから、そんなには送りたくなかったんだよ。 そしたら、『銀行強盗やってでも100万送れ!!』ってギャーギャー騒いでたけど、パパは銀行強盗なんてしなかったよ」と 笑っていました。
その後、「あの土地と家は、これでぼんぼちのものだから、ぼんぼちの好きなように何とでも使いんしゃい」と コロンとあぐらになりました。

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たくさんのクッキーの抜き型 [写真]

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近所の喫茶店の表に売られていた たくさんのクッキーの抜き型。左下の小判型のは、ダックワーズの抜き型かな?
無秩序に置かれていたところに面白味を感じ、「これは徹底的に図案的な作品にすると合うぞ!」と直感したので迷わず真上から撮り、加工は色々やってみた中で「これがダントツベスト!」と感じた パアッと光が当たっているようなバージョンにしやした。
加工した後で気づきやしたが、地の部分にうっすらと文字が見えるのも、より都会的でスタイリッシュな雰囲気を盛り立てていて、あっしなりにかなり気に入った作品となりやした。

お菓子作り、みなさん出来やすか?
あっしは全然出来やせん。クッキー一つ焼けやせん。
なので、お菓子が作れる方って、すごい尊敬しやす。
お菓子って、きちっと計って きちっと焼き時間を計算しないと作れないんでやしょ?
あっしには、とてもとても、、、
あっしに作れるお菓子は、パンケーキミックスのパンケーキとかプリンミックスのプリンとか、そういうのだけでやす。

二度目の結婚をしていた時ーーー
二度目のダンナは大の甘党だったので、せめて何かあっしでも作れるお菓子を作ってあげたいと思い、「プリン作ったら食べる?」と聞いたら「食べるー!」と言うので、ハウスのプリンミックスで、プリンを作りやした。 牛乳とミックスを混ぜて冷やすだけ、ってやつ。
あれって、けっこうな数のプリンが出来るんでやすね。 いろんなグラスに、七、八個は出来たんじゃないかなあ。
あっしは甘い物は、あまり得意ではなく、小さいのを一個食べれば充分だったので、あとは全部 二度目のダンナに食べてもらいやした。
三日目くらいになって、まだ二つ残っていたので、「悪くなっちゃうから、今食べてー!」と促すと食べてくれてやしたが、さすがに最後の一個は、ちょっと飽きてきたっぽい様子でやした。



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春物ワンピースと接客上手な店員さん [独り言]

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昨年暮れ、映画を観るまでの時間つぶしに 吉祥寺のパルコの服屋のフロアを見るともなしに見ていたら、その中の一店で、なんと!「まさに、こういうワンピースが欲しかったのよー!」という一着に出逢えました。

試着をしてみると、これまた、サイズも色・柄も、今の私にピッタリシックリで、まだ初春の肌寒い時期には、臙脂色のパーカーをジッパーを上まで上げて 甘辛ミックスで、もう少し暖かくなって、パーカーが必要なくなったら、帯締めをベルト代わりにウエストに巻いて 和のテイストを含んだ70年代フォークロア調でいこう!と コーディネートも瞬時に決まりました。

お店には20代の若い女性店員さんが一人おられ、試着中にとても感じ良く同調してくださり、ワンピースを包んでくださり、会計を済ませました。
「どうも、ありがとうございます!」

と、ここまでは、たいていの店員さんがなさる接客ですね。
たいていは、会計が済んで売り上げが取れたら、ハイ、サヨウナラ なんですよね。
ところが! その若い女性店員さんは、最上級に感じ良く 延々と色んな世間話を振ってくださったのです。
私の赤い髪色について、私が住んでいる街について、ご自身が住まれている街について、私がブログをやっている事について、等々々、、、
そのいずれも、通りいっぺんの薄っぺらなご挨拶感ではなく、かといって、根掘り葉掘りの深すぎるプライベートの侵害でもなく、最適な精神的距離感で、ずいぶんと年上の私と、対等に会話のキャッチボールをなさったのです。
しじゅう、満面の笑顔を絶やさずに!
私も思わず満面の笑顔になり、最上級にハッピーな気持ちになったと同時に、「この店員さんは、なんて優秀で接客上手なのだろう!!」と大感激し、彼女の能力に感服しました。

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ーーー実は私も、高校卒業前の2ヶ月間、服屋で店員のアルバイトを経験した事があるのですが、とてもとてもお客さんと世間話が出来る能力などカケラも無く、売り上げを上げるのみにいっぱいいっぱいでした。
だから、服屋の店員という仕事が、どれほど難しいか、身を以て解っているのです。

又、これまで自分が客として訪れた服屋で、いい歳をした中年でありながらも、世間話が出来ないどころか、笑顔の一つも「いらっしゃいませ」の一言も無い無能な店員も、数え切れないほど見てきました。

「接客の能力って、年令じゃないんだよな」
私は、他の業種の接客業の店員さん達にも、常々そう感じてきましたが、今回、彼女の接客で 改めて痛感しました。

接客上手な店員さんには、以下の共通点を認識しています。
一、基本的に、人間が好きだという事。
二、相手の気持ちが解るという事。
三、学歴等とは別の、いわゆる「人間としての頭の良さ」を持ち合わせている事。
です。

これは、ある程度は努力して補える部分もあるでしょうが、生まれ持った天性の才能というのが、大きいのではないかと察します。
そして、この才能を持って生まれてきた人というのは、人生の中での、非常に重要な能力を持って生まれたという事になる、と思わずにおれません。

私の一度目のダンナ等は、早大の心理学科を卒業した40代だったにも関わらず、4年間一緒に暮していても、私の感情が何一つとして解らず、離婚する時の最後の言葉が、「ぼんぼちちゃんの気持ちは、なんにも解らなかった」でした。

今、このワンピース、自室に吊るして毎日 眺めています。
私の気持ちは、二重の意味で、すでにポカポカの春の陽気です。

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