作・朗読 山田孝之「心に憧れた頭の男」を読み聴いて [感想文]

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10月20日に、私・ぼんぼちの最も敬愛する俳優・山田孝之氏の38回目のバースデーを記念して、氏の 作・朗読によるCD付き書籍「心に憧れた頭の男」が発売されたので、迷わず購入した。
「心にーーー」は、山田氏が13年間に渡り 月刊誌「プラスアクト」に隔月で掲載されていた詩を、一冊の本と一枚のCDにまとめたものである。

先ず、書籍を読んでの感想であるがーーー
一作の中で 同時に真逆の事を発していたり、壮大とも極めて個人的とも受け取れる意味の事を述べていたり、読む者一人一人によって それぞれどうとも受け止められる意味の言葉を使われていたりとーーーつまりは、作品のおおかたが「抽象詩」なのである。
どの作品も、テーマは深く、山田氏の心の底の底の澱の部分を 正直過ぎるくらいに正直に吐露したもの、と感じた。
あくまでも個人的にであるが、私はこれらの詩に、哲学を感じた。
「哲学抽象詩」だと感じた。

私の如き者がこんな事を書くと、上から目線的で失礼かもしれないがーーー
数々の演技を拝見し、「こういう演技は理論と感性の両方に長けている役者さんにしか出来ない演技だ!」と目を見張り、5年前に発売された随筆集「実録山田」を読み、「ユニークかつ自由な発想と文章構成力に、文才もある人なのだ!」と、再度 感心し、そして今回、詩という表現形態を通して 氏の頭の良さと思考の奥深さに、再々度 感服した。
「この人は、何の表現手段を使っても、自在に操れ、表現しきれる人なのだ!」と、唸りに唸った。
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紙面に於いての表現にしてもーーー
普通だったら、風景写真などを折り折りに入れ込みたくなる所を、氏は、文字だけで、それぞれの作品個性を、より強く押し出している。
例えば、見開きの左側が右側の鏡面状になっていたり、極めて短い作品では その作品中 重要な一文字が頁いっぱいに大きく印刷されていたり、黒い頁に あえてグレーの小さな文字で 一語一語を指でなぞりながら大切に読み進まないと読めない工夫がなされていたり、と。
私は、「無彩色の文字だけで、作品に合わせてこんなにも多彩な表現方法があるのか!」と、驚かされた。

さて次に、それらの詩を自らが朗読されているものの感想に移りたいと思う。
山田氏の「読む」というお仕事は、NHKのドキュメンタリー番組でナレーションを聴いており、ナレーションのお仕事も見事にこなされる人なのだと感服していたが、詩のほうも、期待をみぢんも裏切らない、聴いていて非常に心地良い読まれかただった。

役者さんの朗読というのは、感情過多になり過ぎて 聴く者の想像力を失わせてしまったり、押し付けがましさのあまり 鼻白んでしまう事が少なからずあるのだが、山田氏の朗読は、重い内容の詩が多いにも関わらず、否、だからこそ、サラサラッと軽めに読まれていて、聴いていて圧迫感を感じず、救われる気持ちがした。
ラストに自問するようなモノローグ調の読みかたの作品が幾つかあった所は、思わず ぐっと惹き込まれ、自分に置き換えて考えてみずにはおれなかった。

山田氏は、私がこれまで思っていたより 遥かに偉大な人物なのだと認識した。
冒頭に、「俳優・山田孝之氏」と書いたが、訂正したい。
「表現者・山田孝之氏」である。


(所属プロダクションから購入した特典なのか、山田氏のお顔写真のポストカードが一緒に送られてきました)
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