その時点まで気付かぬものなのか?! [独り言]

20201213_174725.jpg

これは、まだ私が、東京郊外の国立の街に住んでいた時の話しである。
駅近二階の一等地でありながらも、何故だかコロコロと店舗の替わる物件があった。
私の記憶にある限りでも、カフェバー→某芸能人の飲食店→甘味処→インド料理店、と。

インド料理店になった折りには、店じゅう「ここはインドか?!」と見まごうばかりに徹底した インドの織物のテーブルクロスに象の置き物 ガネーシャ鎮座、インドの民族音楽が響き渡っていた。
階段も舗道の置き看板も、華々しく「ここはインド料理店です!!」と主張をしていた。
味も悪くなかった店だったので、私はそのインド料理店に しばしば通うようになっていた。

ある日のことーーー
私がお気に入りのセットメニューを前にしていると、女性の声高なおしゃべりが、階段をのぼってきた。
しゃべり続ける女性達は、二階フロアに着いた。
共に、数センチは黒髪がだんだらに伸びたロングの茶髪に ペラペラの安物の派手な服に バッグはヴィトンーーー、一見して、国立の街には極めて珍しい 元ヤン女性二人だった。
私は、隣街の立川か府中か はたまたちょっと離れた八王子から来た人達かな?などと思いつつ、マトンをほおばりながら 見るともなしに彼女達を見ていた。

彼女達は、ちょうど私の視線の先の席に着いた。
「イラッシャイマセ」
民族衣装に身を包んだインド人の店員さんが、メニューとお冷やを運んできた。
彼女達はおしゃべりを止めて、テーブルに置かれたメニューをじーーーっと凝視した。
何十秒もの間、二人は揃いに揃って 前のめりに じーーーーーーーっと、穴の空くほどメニューを凝視し続けていた。

インド人店員さんが注文を取りに、彼女達のテーブルに来た。
二人のうちの一人が「ここ、はぁー、甘い物屋さんですよね」と 当たり前といった表情で、インド人店員さんを見上げた。
もう一人も「はぁー、甘い物屋さんですよね」同じ口調と同じ表情で見上げた。
「甘い物屋サン、二ヶ月前ニ終リマシタ。今ハ インド料理店デス」
店員さんが答えるや、彼女達は、またもや揃いに揃って、「えーーーーーーーーーっっっ!!!」と大声で叫び 店内をキョロキョロと見回し、階段をパタパタと降りて行った。

私は「えーーーーーーーーーっっっ!!! その時点まで気付かなかったのぉ???」と 心の中で叫び、ちぎり持っていたナンを落としそうになった。

20201213_174725.jpg

nice!(239)  コメント(73) 
共通テーマ:映画