吉祥寺に在ったバー・ワゴンリーが閉店 [洋酒・カクテル]

先日、知人から「吉祥寺東急デパート裏の葡萄屋が全階閉店をした」という話しを聞いた。
私は早々に 葡萄屋が在った場所に行くと、すでに写真の様な状態となっていた。(写真は、12月10日撮影)
知人の話しによると、「10月くらいに閉店になったらしい」との事であった。

葡萄屋というのは、古い重厚なレンガ造りの建物で、階によって、ステーキ しゃぶしゃぶ バー 喫茶 と、同経営者で営られていた 吉祥寺の中でも抜きん出て洒落た品のある店で、私はその中のバー・ワゴンリーに20代後半から30代半ばまで 足繁く通っていた、今までの生涯の中で飛び切りにお気に入りのバーだったのだ。

ショックである、、、、、
20201211_173909.jpgおそらくは、やはりコロナの影響なのではないかと推測するが、吉祥寺からまた一つ、雅な空間が消滅してしまったとは、、、、、

私がワゴンリーに通い始めたきっかけは、国立のカクテルラウンジでアルバイトをしていた20代後半時、常連のお客様に「いい店だから行ってごらん」と薦められた事だった。

葡萄屋建物の地下への階段を降りると、そこには 手抜かり一つ無く磨き上げられたクラシックな木造りの内装に、ゆったりとしたカウンターとテーブル席が広がっていた。
酒は、私がアルバイトをしていた店がカクテルに特化したバーだったので リキュールの種類が多かったのに対して、ワゴンリーは、各スピリッツやシェリーを取り揃えていた。

私はラムとシェリーが好きなので、イギリスがジャマイカに作らせた ちょっとスコッチの様なニュアンスのゴールドラムや、シェリーは、ドンゾイロのフィノからクリームまでの飲み比べをさせて頂いたりしていた。
フードメニューでは、エスカルゴとチーズ盛り合わせをいつも所望した。
エスカルゴは、エスカルゴトングを使って食べるのが一興で、殻の中に残ったソースを添えられたバゲットに掛けて頬張ると 何とも香り豊かで、チーズは、チョコレートを練り込んだクリームチーズなどという珍しいものも盛り込まれていた。

クオリティが高かったのは、内装や酒やフードだけでなく、その時期いらした4人のバーテンダーさん全員が、素晴らしく気の利く 話し上手聴き上手な、私を天にも昇る心地にさせてくださる方達だったのである。
下品さがみぢんも無いのは言うまでもなく、かつ、それでいて気さくで くだけた世間話をしてくださり、緊張する事も気兼ねする事もなかった。

20201211_173838.jpg又、オープン時間が4時だったというのも、国立に住んでいた私にとっては、生活上、非常に好都合であった。
何故、4時オープンにしていらしたかというと、ステーキやしゃぶしゃぶ目当てにいらっしゃるお客様が ウェイティングに使える様に との配慮かららしかった。
私が4時ジャストに入店すると、たいていまだ他にお客様は誰もいなく、4人のバーテンダーさんが揃って私の前面に並んでくださり、私は至福のひとときを重ねていった。

ーーーが、
30代半ばになった頃、バーテンダーさんが1人替わり2人替わりし、マスター以外は総入れ替わりとなり、接客上手の方が、マスターの他にいなくなってしまったのである。
これを理由に、私はワゴンリーから足が遠退いてしまった。

それから20余年が経ったが、東急デパート裏の通りを歩き、葡萄屋のレンガ造りの建物を見る度に、あの頃の享しさが蘇ってきたものである。

しかしーーー
もう、私のあの頃の至福を思い出させてくれるものは、レンガの一片すらも無くなってしまった、、、、、


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