映画「ニューオリンズ」ーーー概要と見所 [感想文]

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映画「ニューオリンズ」 監督・アーサールービン 製作・1947年

1917年、ニューオリンズの中の売春街・ストーリービルが、兵士の性病の蔓延や殺人の多発といった理由で、国により閉鎖され、ストーリービルのジャズ酒場で働いていたミュージシャン達が仕事を求めてシカゴへ移住し、戸惑いや反発を受けながらも 徐々に、それまでヨーロッパ音楽(クラシック音楽)しか知らなかった白人達に受け入れられてゆく、という現実の歴史の土台の上に、ストーリービルその後シカゴのジャズ酒場のオーナーの白人中年紳士と ジャズに初めて触れ ジャズにも紳士にも惚れ込んでしまったクラシック音楽の声楽家のお嬢様の恋 という虚構のストーリーを乗せた音楽映画です。

この時代はまだジャズ創世記の混沌とした時期なわけで、つまり、ジャンル分けというのはどの分野でもそうですが、時代が下ってから他者によって決定付けられるので、劇中で「ジャズ」全体を指す時に、場面場面で「ジャズ」と呼ばれたり「ブルース」と呼ばれたり「ラグタイム」と呼ばれたりしています。

この映画は上述の様に、ジャズ酒場のオーナーと声楽家のお嬢様の恋が上面を流れる主なストーリーとなっていますが、見所は、どういった理由で 当時 ジャズの中心がニューオリンズからシカゴへ移ったか、そして どうやって白人達に少しづつ認められていったか、というジャズ史を知る事が出来るのと、ジャズを語る上で欠く事の出来ない大御所ミュージシャンーーーサッチモ、ビリーホリディ、ミードルクスルイスが出演している所にあります。
(DVDのパッケージには「ルイアームストロング主演」と記されていますが、これはDVD化する際にこう表記した方が売れ行きが上がるから、という売り手の判断に違いなく、サッチモは脇役です)
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これら三人の役柄はーーー
サッチモはサッチモ役で、主役の酒場オーナーに ストーリービルの店でもシカゴの新たな店でも大切にされている看板コルネット吹きで、彼のバンドのメンバー達も本人役で出ていて、マニアにはたまらないものがあると察します。

次にビリーホリディですがーーー
サッチモは幾作品もの映画に出演していたので 彼のしゃべり声や動きを知っている人は多いと思うのですが、ビリーホリディは、この映画が唯一の出演作品なので、とても貴重に感じられます。
役柄は、声楽家のお嬢様の家に雇われている サッチモに憧れるメイド役です。
私はビリーホリディの歌を聴く度に「あの 上顎に軽くカーン!と響かせる様な声の出し方は、独自の発声法で以て作り上げたのに違いない」と思っていたのですが、劇中でしゃべっているのを聞くと、歌と全く同じ声で「あぁ、元々こういう個性的な声質の人だったんだ」と、小さく驚いたのと同時に 知る事が出来てとても嬉しかったです。

最後にミードルクスルイス。シカゴのペンキ屋の役で、ワンシーンだけの登場です。
私は個人的には「自分が死んだ折りには、棺桶にミードルクスルイスのレコードを入れて欲しい!」と願っているほど彼のファンなので、「まるでトイピアノを弾いているかの様な」と評される ペチャペチャした大衆的でゴキゲンなブギウギピアノを弾いている指の動きやしゃべっている声や表情を観る事が出来て、涙が出るほど感激しました。

尚、補足的に説明しますと、ブギウギピアノというジャンルは、ジャズとブルースの中間というか 両方にまたぐというか そういう位置の音楽なので、レコードジャケットには「クラシックジャズ」と記されたりしてはいるものの、中古レコード店にはブルースのポップの所に有ったり、又、ジャズ喫茶では、置いてあって快くかけてくれる店と 店主自体がブギウギピアノを知らない という店があります。

以上が、映画「ニューオリンズ」の概要と見所ですが、非常に解りやすく気負わずに鑑賞出来る作品なので、映画好きのかたも ジャズ好きのかたも そうでないかたも、もしもお気が向かれたらご覧になってみてください。

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