ぼんぼち、三密に追い込まれる [独り言]

緊急事態宣言が発令されてから、私は最寄り駅近くの喫茶店は「ここなら安全性が高い」と判断した二店だけには しばしば足を運んでいた。
どちらも三密にならないからである。
だが、ニ週間ほど前 そのうちの一店に行った時の事だったーーー

その一店は、一階で道に面した扉と窓があり テーブルとテーブルの間に程良く空間があり 殆どが一人客 複数人であっても二人連れの まず多人数の来ない ジャズとコーヒー推しの店で、私はその日、カフェオレとトーストを注文した。

注文の二品が運ばれてくるや、突然、どやどやと四十代五十代と思しき六人のご婦人達が入って来た。
私は壁と壁との角っこの三人掛けの席に座っていたのだが、ご婦人達は「ここが空いてるわ!」と 私の横の四人席のテーブルに座り始めた。他のテーブルには、みな一人客が座っていた。

四人席に六人来たので当然二人あぶれる訳で、ご婦人達はどうしたかというと、みぢんの躊躇もない様子で 一人は私のテーブルの向かいの椅子と もう一人は私の横の席に腰掛けた。私には一言の断りもなしに。
つまり、私は、壁際の角っこにL字型に囲まれる形となってしまった訳だ。

ご婦人達は声高にきゃあきゃあわあわあ間なくしゃべりつつ 手を握り合ったり抱き合ったりしながら「これって三密よねぇ〜!」と きゃっきゃと笑っていた。
私の向かいの席に座ったご婦人は、その人のコーヒーが運ばれて来ると「アタシのはここに置いて!」と 店員さんにカップを私のテーブルの上に置かせた。
そして、私がカフェオレとトーストを飲み食いしている間じゅう、私の存在などまるで無いかの如くに しゃべり合い 手を握り合い 抱き合ったりを続けていた。
ーーー私は近場の友人ともメールで「ぼっちでいるのって寂しいよねー」と交わし合い、二人でリアルに逢う事すら控えているというのに、、、

私が飲み食いするのが了るのとほぼ同じタイミングで、ご婦人達は「じゃ、出ましょーか」と 席を立ち始めた。
内 一人のご婦人が「これ、ウチのよね」と私のテーブルの私の伝票を掴み上げた。
私が「違います。私のです。」と言うと、黙って私のテーブルに戻した。

帰り際に私のテーブルの向かいの椅子に座っていたご婦人が「お騒がせしましたぁ〜〜あはは〜」と 軽〜〜くサラッと笑いながら発し、六人はきゃっきゃとボディタッチを続けながら出て行った。
ーーーこのご時世「お騒がせ」という問題ではないだろう! 私はすでに硬くなっていた拳が震えた。

カウンターの中にいた店員さんがホール担当の店員さんに「換気!換気!」とうながし、入り口扉を大きく開けさせていたが、私はその後タブレットをいじる予定を辞めて店を出た。

この時期に喫茶店に行くぼんぼちも悪いと言われれば返す言葉もないのだが、世間には 危機感の無い三密にまるで無頓着な人達もいるものだと、店を出て広々としたアスファルト道路の空気を胸いっぱいに吸いつつも、不快さの尾は長く引いた。

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