コミニュケーション能力のない店員 [独り言]

景気が悪くなった為であろう、最近は、殆どの店で 店員への接客教育が行き届いているようである。
だが、私の若い頃は「そこで何でそう言うの?」「そこで何でそういう態度するの?」と 大きな疑問の荷物を抱えて帰路につかずにおれない コミニュケーション能力のない店員というのが、けっこうな確率でいた。
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高校時代、私はパーマをかけていたので、三年間 月に一度づつ美容院に行っていた。
幾つもの美容院で何人もの美容師にシャンプーをされたが、彼ら(彼女ら)は、ほぼ100%に近い割り合いで、洗い始めると こう発するのだった。
「いつ洗いましたかあああーーーっっっ!!!」
しかも、揃いに揃って上から叱りつける様な 厳しい口調で言うのだった。
私は毎日夜、風呂に入る時に洗っていたので「昨夜です」と答えていた。
すると、彼ら(彼女ら)は、これもまた揃いに揃って黙り込むのだった。
顔に布をかけられているのでその直後はどんな表情をしているのか判らず、シャンプー台から起こされ布を外された瞬間にチラと顔を見ると、これもまたまた揃いに揃って、憮然とした様な ムッ!とした様な 悔しい!といった様な、そんな表情をしているのだった。
そして私が、持参した こういう仕上がりにしてほしいという絵を見せながら「ここは○センチ切ってここは○センチ切って ここはこういう感じでパーマをかけて、、、」と注文をするまで その表情のままだんまりを続けるのだった。

「昨夜洗った」という答えが、そんなにムッ!とだんまりをさせるほどに意表を突く気に食わないものだったのだろうか?
三〜四日洗わないで来てくれないと洗い甲斐がないじゃないか!というのだろうか?
それとも逆に、美容院に来る日はその日の朝に洗ってから出て来るのがマナーだというのだろうか?
それならそうと、きちんとそう言ってくれればいいのに。
そうすれば私だって、三〜四日洗わないなり、当日の朝洗うなり、従ったのに。
憮然としただんまりでは、こちらに何を求めているのか、皆目 伝わる訳がない。

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二十代後半の頃、私はカクテルラウンジでアルバイトをしていた。
あるバイトに行く日、予想外に時間が空いたので、駅近くで一番大きな書店で時間をつぶす事にした。
と、分厚く充実した内容の世界洋酒事典があるのを発見した。値段は6000円くらいだった。
その日、私は、食事をしてバイトに入るだけのつもりで家を出て来ていたので、それほど金を持ち合わせていなかったし、重くて大きな本を持ってバイトに入るのも何なので、三日後のバイトが休みの日に買おうと、近くで商品整理をしている若い女性店員に声を掛けた。
「あの、、、この本、三日間、取り置きしていただけますか?」
すると その若い女性店員は、瞬時に嫌あ〜〜〜な顔になり「できませんっっっ!!!」と大声で怒鳴った。
私が「えっ?、、、できないんですか、、、」と返すと、彼女は私の返答などまるで聞こえもしなかったかの様に、酷く怒った顔をして商品整理に戻っていた。

私はバイト休みの三日後、洋酒事典が無くなっていない事を祈りつつ その書店に行った。
運良く、世界洋酒事典はあった。
レジで、事典を包んでいただき代金を払う際に、レジ担当の中年男性に「こちらの本屋さんは、けっこう大きな規模で営っていらっしゃるのに取り置き出来ないんですね」と言うと、中年男性は「えっ!お取り置き、出来ますよ」と目を丸くした。
私が三日前の若い女性店員とのやり取りを話すと、彼は、眉間に深く皺を寄せ 大きく首を傾げ、それから「その店員、幾つくらいでどんな背格好でどんな髪型でしたか?」と聞いてきた。
私が答えるや、中年男性はおそらく店長さんだったのだろう、「申し訳ありませんでしたっ!ウチはお取り置きもお取り寄せもしておりますので、今後とも宜しくお願い致します!まことに申し訳ありませんでしたっ!!」と深々と頭を下げてくださった。
店長さんは、取り置きを頼まれた事で何でそんな嘘をつき しかも激怒したのだろう?と 彼女に対して負の疑問でいっぱいだったのに違いなかったのだった。

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三十代前半の頃、私は、ミス・ディオールという 五十年代をそのままに継承するレディースブランドが気に入っていて、ミス・ディオールの服をひんぱんに購入していた。
ミス・ディオールの店舗は、都心の某デパートの中に入っていた。
ある日、またミス・ディオールを新調しようと、以前に購入したミス・ディオールのワンピースを着て、そのデパートへ向かった。
その日はミス・ディオールに直行する前にお茶でもしようと、同デパート内の喫茶室へ寄った。
喫茶室を出る時、レジで中年のウエイトレスが、満面の笑顔で話しかけてきた。
「今日は、おでかけですか?」
ーーー???
私は、千も解りきった質問に心の中の首を激しく傾げた。
ーーーおでかけして来てるから ここに居るんじゃないですか。
心で首を傾げつつも、顔では笑って「はい!おでかけです!」と答えた。
すると彼女は、「どちらへおでかけですか?」と ますます意味不明の質問を重ねた。
私は心の中で、より首の傾斜を激しくしながら、笑顔を崩さぬままに「○○(そのデパート名)に来る為に出掛けてきました!」と返した。
彼女は一瞬にして、私を異星人を見るが如きの目つきとなり、無言で釣りを投げやりに私の掌に置いた。

ロングドレスでも引きずっていた訳でもあるまいし、ひざ丈の街着のワンピースを、しかも そのデパートに入っているブランドの商品を着ていた事が、彼女にとって何でそんなに奇妙だったのだろう?
最もそのデパートに来るのに相応しい格好じゃないか。
彼女は、そのデパートに来るのに相応しいいでたちをしたお客さんに次々と そんなトンチンカンな質問を投げかけ その度に異星人を見るが如き目つきをしていたのだろうか、、、???
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ここに挙げた店員達とヘイテイつけ難いコミニュケーション能力のない店員、昔はあっちにもこっちにもいた。
今も全くいなくなったとは言い切れないが、そうそうはお目にかからなくなり、たいてい気分良く帰宅する事が出来、そういう観点では良い時代になったと感じている。



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