がんばれ!ホストくん [独り言]

昼間 新宿東口の喫茶店でくつろいでから 歩いて大久保に行って飲む、ということを時々やっている。
そうすると必然的に、夕刻に歌舞伎町を通り抜けることとなるのだが、夕刻の歌舞伎町は、ホストがあっちにもこっちにもいる。
自転車でコキュコキュ通勤中のホスト、年上の女性客に片腕をぎゅーっと抱え込まれて 無表情で同伴出勤するホスト、そして街頭に立って呼び込みをするホスト・・・・・・。

中、私はよほど金を持っていなさそうに見えるのか、これだけ夕刻 歌舞伎町を通っているにも関わらず、ホストの呼び込みに声を掛けられたことが 今までの人生でたったの一度しかない。
その一度は-----もう何年も前のこととなるが 余りにも忘れがたい出来事だったので、今回はそのことを綴りたいと思う。

ホスト1.jpg「あの・・・・・・」
蚊の鳴くような小さな声で呼びとめられた。
呼びとめた主は、いでたちからして紛れもなくホストである。
顔を見ると、テレビに出て来るアイドルにいても何らおかしくない様な 欠点のない目を見張るような美青年である。 身長もそこそこある。
「あの・・・・・・今なら三千円で飲み放題なんですけど・・・・・」
やはり蚊の鳴くような弱弱しい声でポソポソと言った。
同時に、割引券なる水色の紙を差し出した。
どれほどの時間握りしめていたのか クッシャクシャの割引券だった。
私が間髪置かずに 「いや、行かないから」とサラリと断ると、彼は、「・・・・・・そうですか・・・・・・」 ますます弱弱しく まるで瀕死の蚊の様にしぼんでいった。
そして 泣きそうな顔で じっとうつむいた。
私は余りの「呼び込み」らしからぬ呼び込みに唖然とし、
「押しなよぉ! なんでもっと押さないんだよぅ!! そんなんじゃダメだよぅ!!」
と 心の中で叫んだ。
私は二、三秒間 彼を見上げていたが、そのまま固まっていたので、大久保へとスタスタ歩を向けた。

ホスト.jpg私はどれほど押されても、ホストクラブなるものにはまるきし興味がないので なびくことはないのだが、ホストの呼び込みたるもの、「押し」は必須なのではないだろうか?
会社の営業やセールスマンと同じく 他を抜いて競争に打ち勝って 初めて「一人前」なのではないだろうか?
「ウチの店には豪華なシャンデリアがあって お姫様気分が味わえますよ!」とか 「僕は話題に事欠きませんよ。 美味しいスイーツの店から人気の映画の話まで なんだって出来ますよ!」とか 「女性の悩みを聞くの 得意なんですよ。 職場のグチやダンナさんの至らないとこ ぜーーーーんぶ洗いざらいぶつけてスッキリしてってくださいよ!」とか 何でアピールできないんだろうか?

-----まぁ、そこは性格なのだろう。
ホステスさんも、いくら美人でも 客あしらいが上手でないとナンバーワンにはなれないと聞く。
顔が重要だと言われる職業でも、顔「だけ」では成り立たないのである。

蚊の鳴くような美青年ホストの彼は、今 何をしているのだろう?
「これでは駄目だ!」と一念発起し 「押し」の力を身につけたのだろうか?
言われたことだけを大人しくコツコツとこなす 堅い仕事に転職したのだろうか?
どうしているのだろう・・・・・・


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