不味かったケーキ [喫茶店・レストラン・カフェ]

普段は歩かない街を散策していた時、小腹がすいたのでケーキを食べることにした。
私は甘い物には別段うるさくないので、そこそこの味で小腹が満たされればそれで良いと思い、交差点の角に見つけたレストラン喫茶に入った。

他に客はいなかった。
「あの・・・・・ケーキのメニューはありますか?」
席についた私は、初老のママさんに尋ねた。
「ケーキなら ここの棚に並んでるから選んでね。 うちのケーキは美味しいわよぉ~! 特にね、これが本格的ドイツ風のでオススメよ!」
と、茶色に焼かれたボリゥムのある一品を指すので それを頼むことにした。

運ばれてきた本格的ドイツ風は、三色のカラフルなソースが添えられていた。
一口、口に含む。
・・・・・・・・・・・・・・・・不味いっ!!
今までの生涯でこんなにも不味いケーキに遭遇したのは初めてだった。
中学生が家庭科の授業で作ったケーキより明らかに低レベルの どうやったらこれほど不味く作ることができるのだろう?と首を真横に傾げたくなるほど ねっとりと小麦粉が重く べったりと甘すぎるケーキだった。
ソースをからめて味をごまかして食べようと思い、ソースをちょっと舐めてみる。
一舐めで、手作りではないと解かる 祭りの出店のクレープに塗られるソースのような チープでキッチュな不味さだった。

と、ママさんが近づいてきた。
「うちのケーキ、美味しいでしょ!美味しいでしょ!!すっごく美味しいでしょぉぉぉぉ~~!!!」
大型ブルドーザーが突進してきて大量の土砂をザザザーーー!!っと眼前に落してゆくような 力強い 自信に満ち満ちた勢いで発した。
「はっ?!・・・・・・えっ?!・・・・・・・えぇ・・・・まぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・美味しい・・・・・です・・・・はぁ」
私は、しどろもどろに小声で返した。
この様な態度で来られて、「いいえっ!不味かったですっっ!!」と 正直に真実を答えられる日本人がいるだろうか?
おそらく99.99パーセントの人は、私と同じ反応をし、そして心の中で「この店には もぅ二度と来るまい」と誓うのではなかろうか?

「そうなのよねーーー!!みんな美味しいって言うのよねーー!! うちの店のケーキを食べたら他の店のケーキなんて食べる気がしなくなるって みんな言うのよねーーー!!」
ママさんは、フロアじゅうに響き渡るほどの大声で弾むように遠ざかって行った。
終始、客は入って来なかった。
(下の写真が不味かったケーキ、実物)

写真・不味かったケーキ.jpg


nice!(281)  コメント(68) 
共通テーマ:映画