映画「キッドナップブルース」に見る完璧な映像美 [感想文]

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監督・脚本・撮影を写真家の浅井慎平氏が務め、主演をブレイク寸前のタモリ氏が演じた 甘過ぎない叙情溢れる劇映画。1982年製作。

シノプシスは、しがないジャズトランペッターが、近所の 父はいなく夜更けまで帰らないホステスの母を持つ六才の孤独な少女と 合意の上で旅へ出掛け、行き先々で様々な人に出逢い、人間臭いダイヤローグを交わしたり 哲学めいたモノローグを目の当たりにし、するうち、少女に捜索願いが出され、そしてトランペッターは誘拐犯として指名手配された末に逮捕される、というものである。

この様にシノプシスは単純なのであるが、単純にした事には明確に意味があり、それは、この映画の一番の推し所は「徹底した映像の美しさ」にあるからである。
映像が凝っていてシノプシスまで複雑だと、欲張り過ぎて 一体何が言いたい映画なのだか 虻蜂取らずになってしまう。
であるから、この映画には これくらい単純なシノプシスが適切なのである。

推し所である映像美だが、どう美しいかというとーーー
リンゴの寄り一つ 吸い殻でいっぱいになった灰皿一つ 手入れのされていない花々一つ 波打ち際に歪み映る自転車一つ 鍋の中のおでん一つに至るまで、柔らかなコントラストで完璧に構図と色彩がキマリにキマっているのである。
さすが日本を代表する写真家・浅井慎平氏の撮りである。
写真というジャンルの一流のプロは、そこに時間軸が加わっても素晴らしい作品を生み出す事が出来るのは、おおいに頷けるところである。
さながらこの映画は、一冊の優れた写真集の如きで、ショットが変わるのは、パラリ、、、パラリと頁を捲り観進める心地良さそのものである。

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私は、「どういう映画が好きなんですか?」と問われると「映像の綺麗な映画が好きです」と答えるのだが、すると、単に派手に色数ばかりがガチャガチャと入り込み 構図も色調の配分も何もあったもんじゃない、という映画を「なら、この映画が綺麗だからオススメですよ」と挙げる人がいるが、そういう人は、「美しさ」というものの何たるかをまるで理解していないな、と溜め息をつかずにおれなくなってしまう。

「美しさ」というものは、写真や映像に限らず、派手であればある程 色数がたくさん入れば入るほど美しくなる訳では、ない。
大事なのは、構図 明度 彩度 色相の配分ーーーつまりは「バランス」なのである。
美しいという事は、全ての視覚に訴えるジャンルに於いて、「バランスが取れている」という事なのである。
美男美女は、目が大きければ大きい程 鼻が細く高ければ細く高い程 美男美女である訳ではないし、お洒落なファッションというのは、流行のアイテムを取り入れれば取り入れる程お洒落度が上がる訳ではない。

私は中学から美術を専門に学び、後に美術を生業として生きてきたので、そのロジックは「基本中の基本」「当たり前」という感があったのだが、歳を重ねて世の中の美術の世界以外の人と接してみると、ガチャガチャ派手に色数を入れ込んだだけの映画を綺麗と認識する人がいたり、美容外科でヘンテコな顔にして綺麗になったつもりの人がいたり、上から下まで流行で固めてお洒落になったつもりの人が少なからずいるので、どうやら「美しさの何たるか」は、美術理論を学ばなければ難しい あんがいハードルの高いものかも知れない、と気付かされた。
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そういった裏付けからも、この映画は、美しさの何たるかを熟知した 美のプロ中のプロの作品なので、ただ漠然と美しさに浸りたい人にも、美術を学んでいる人にも、写真に苦心している人にも、映像のプロを目指している人にも、是非とも観ていただきたい作品である。

映像美以外で、言及したい事に幾つか触れるとーーー
タモリ氏の、台詞も動きも芝居をしていなさそうに見える自然な演技、少女がこまっしゃくれていなく むしろ暗く いつも俯向き加減なのも、この作品のマチエールに溶け込んでいて 良い。
又、山下洋輔 伊丹十三 所ジョージ 根津甚八 吉行和子(敬称略)等々、、、そうそうたる有名どころがカメオ出演しているので、それを見つけるのも面白い。
そして、何といっても、ラストのシークエンスの「逮捕された」表現が、少女と遊びに行った雪原で 鉄格子越しにタモリ氏が映り、次にぐっとロングになり、広々とした雪原の中でほんの一面だけのそう大きくはない鉄格子の向こうにタモリ氏が居る様が小さく映り、この劇映画の虚構性が明かされる所も 実に心憎い。

世間的には、意外にも それほど高評価を受けていない作品の様ではあるが、私は、100点満点中150点を付けたい 非常にクオリティの高い映画である。

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風太郎

「監督・脚本・撮影を写真家の浅井慎平氏が務め、主演をブレイク寸前のタモリ氏」
二人とも大ファン、タモリさんとは同じ年齢。ぜひ観てみたいです。
by 風太郎 (2020-08-28 06:09) 

ニッキー

映像の派手さと美しさは別物だと思うのですが・・・
内容が淡々としててもとても美しい映像の映画ってありますよね^^
あっ、単純な私は南の島の長閑な風景と様々な蒼を見せてくれる
綺麗な海が映ってるとそれだけで「美しい♪( ´▽`)」って思っちゃいますw
by ニッキー (2020-08-28 07:10) 

taekozue

是非見てみたいと思います。
by taekozue (2020-08-28 08:34) 

エンジェル

ぼんぼちさんが絶賛される映画ならぜひ見てみたいです。浅井慎平さんはサンデーモーニングに出演されているので存じていますが映画監督もされていたんですね。興味深いです。
by エンジェル (2020-08-28 10:54) 

フヂ

映画なのに写真集のよう…素敵な表現。
単なる映像ではなく、色々な角度から
観ることができるんですね。
観る側にも、ぼんぼちさんのような
視点やセンスが必要なんだなぁ。
by フヂ (2020-08-28 11:47) 

hirometai

ぼんぼちぼちぼち様
どんな映画なのかなあ?
見てみたいですね。
一寸湾曲した古びたネットの写真は何なのかな?

by hirometai (2020-08-28 11:50) 

とし@黒猫

日本人は、よそ様と同じ姿格好をして、集団に埋没することで安堵する民族なので、本質を見ようとしないのだと思います。
服を買う、とか、何かをする時、ネットで検索して、何が流行っているか調べて、その真似をすることを優先し、自分でどうしたいかは二の次という習性があるようです。
by とし@黒猫 (2020-08-28 12:30) 

ゆきち

美しさの肝はバランス、なるほど!です^^
確かに花の寄せ植えをする時にも、カラフルでゴージャスな花ばかり詰め込んだら、とんでもない事になっちゃいます^^;
満点通り越して150点、見てみたくなりました。
by ゆきち (2020-08-28 12:35) 

英ちゃん

この映画のキャストを調べたら、そうそうたるメンバーと言うより個性的なメンバーが多いね。
居酒屋の客 淀川長治さんがチョッとウケる感じがします(゚□゚)
by 英ちゃん (2020-08-28 14:14) 

hana2020

ストーリーをざっと読むと典型的なロードムービーのようながら。。凝った映像美の連続なのですね。
伊丹十三、根津甚八は故人となられましたし、吉行和子も最近見かけない気がします。
映像、テーマで最近印象に残った作品に、深田晃司監督の「淵に立つ」があります。
ある一家に突然侵入してくる謎めいた男=浅野忠信のキッチリし過ぎているかに見える服装や言動がミステリアス、それから起きる事件と、登場人物たちの生き方がタイトルそのものとなっていく様子、観る人を選ぶけれど、興味深い作品でした。
by hana2020 (2020-08-28 14:34) 

きよたん

映画の見方いろいろあるでしょうが
写真集のような美しさ 良いですね
ストーリーもさながら映像にこだわりをみせたものは
映画を観たという満足感が得られます。
浅井慎平好きな写真家です。
by きよたん (2020-08-28 16:35) 

横 濱男

写真家が撮る映像美は、動画屋と違って別次元でしょうね。。
メンバーも面白い人たちを集めてますね。。
これもこだわりなのかな。。
浅井慎平さん、一時期TVによく出てましたね。
by 横 濱男 (2020-08-28 17:01) 

ヨッシーパパ

映像美とタモリさんの若き日の作品と言うことで、記憶にとどめておきます。
by ヨッシーパパ (2020-08-28 17:38) 

らしゅえいむ

見てみたいです
ご紹介くださいましてありがとうございます
by らしゅえいむ (2020-08-28 19:23) 

johncomeback

山下洋輔 伊丹十三 所ジョージ 根津甚八 吉行和子が
出演しているってスゴいですね、DVD出ているのかな?
観てみたいです。
by johncomeback (2020-08-28 19:37) 

JUNKO

ご推薦の映画、ぜひ見たいものです。映画の映像美からは学ぶことが多いです。
by JUNKO (2020-08-28 19:43) 

kick_drive

こんばんは。何か動画が無いかと探しましたがさすがに
古くて出てこないですね。写真だけは出てきましたが
タモリさんも浅井慎平さんも若い!意外と若かりし頃の
浅井慎平さんはやんちゃしていたのかと言う感じですね。
タモリさん、自転車乗れるんだと思いました。とても不自然でした。

by kick_drive (2020-08-28 19:48) 

八犬伝

浅井慎平さんが監督・脚本さらに撮影までされたのですね。
ラストシーンを読んだだけでも
美がうかがえます。
by 八犬伝 (2020-08-28 20:56) 

ロートレー

ぼんちさんが絶賛のその映画を是非見てみたいです~。

私に、映像美にたいする感受性が少しでもあるものか、それでテストしてみたいでやす ^^
by ロートレー (2020-08-28 21:11) 

werewolf

見たことがない映画です。ぜひ見たいですね。
色がきれいな映像もいいですが、構図がきっちり決まっていてこそですよね。
映画はともかく、テレビドラマではあまり『いい』と思えるものには出会えませんが、たまに出会えるととても得をした気分になります♪

by werewolf (2020-08-28 23:10) 

coco030705

タモリさんは、昔からなんだか不思議な雰囲気のある人だと思っていましたが、映画に出ていたなんて知りませんでした。浅井慎平氏も一時、よくTVのトーク番組に出ていたと思うのですが、写真以外に映画も撮っておられたとは。この2人に加え、個性的すぎる人たちが登場する作品、面白そうですね。
by coco030705 (2020-08-28 23:29) 

ヤマカゼ

タモリさん、所さん、根津さんというと濃そうな感じですね。
by ヤマカゼ (2020-08-28 23:31) 

溺愛猫的女人

知りませんでした。教えていただきありがとうございます。
by 溺愛猫的女人 (2020-08-28 23:45) 

mau

気になります。探してみようかな
by mau (2020-08-29 00:06) 

せつこ

おはようございます^^
なんでも詳しいね、趣味が広いから知っている世界も広いですね。
by せつこ (2020-08-29 05:31) 

なかちゃん

タイトルさえも知らなかった映画ですが、とてもいい映画なんですね。
ボクは美を勉強したことはないけど、ゴチャゴチャとした写真は好きではないです(^^;

by なかちゃん (2020-08-29 08:09) 

ぼんぼちぼちぼち

みなさん

あっしの感想文を読んで、観てみたい!と思ってくださって、とても嬉しく思っておりやす。ありがとうございやす。
ほんとうは、こういう映像の美しさが推しの映画は劇場で観るのが一番なんでやすが、DVDも発売されていて、そう高くなく売られているので、興味のあるかた、買ってみられてくださいでやす。
あっしは先日、神保町シアターの80年代ノスタルジアⅡ特集で観たんでやすが、そうそう劇場公開される機会はない作品だと思うので。

で、あっしが本文に書いた見方でご覧になると、つまりとにかく映像の美しさを追うと、この映画の言いたいことが把握でき、存分に楽しめやす。
例えば、料理にしても、その料理の食べ方というのがありやすね。
お刺身であれば、新鮮な生のを醤油とわさびでいただきやすね。
もしもこの映画を「ストーリーが単純で意表をつかれなくて面白くもなんともない脚本だからダメな映画だ」という人がいたら、その人は、刺身を食べて「まったく火が通ってないからダメだね。こんな料理は失格だ」と言ってるのに等しいでやす。

映画には、それぞれの映画ジャンルの見方というのがありやす。
喜劇なら、笑うために観る。
ミュージカルなら、歌と踊りを楽しむために観る。
ミステリーなら、犯人探しにわくわくしながら観る、、、と。
で、この映画は、映像美を観る、そういう映画でやす。

あっし個人は、映画というものを好きになったきっかけは、寺山修司の実験映画で、その後、松本俊夫先生の世界で映画の深みにハマったクチで、映画を好きになりそめし頃というのは、アート実験系ばかりを観ていて、一般の商業映画を多く観るようになったのっていうのは、40才くらいの時にシナリオの勉強をして以降なんでやす。
それまでの間は、アート実験系はすんなりと理解が出来ても、一般の商業映画の見方が解らなかったでやす。
自分でシナリオを書く勉強をして「なるほど、こうやって構築するから、見る側はこういう見方をするんだ」とそこで初めて解りやした。

なので、本作を見た時は、映像美そのものには驚かなくて馴染みのある方向性のものだったのでやすが、これだけ映像美に主点を置いた映画が東宝の配給だということに驚きやした。
今のあっしは、こういう方向性の映画というのは大衆受けはしないと解っているので。
よく東宝が許可したものだな、と。
まあ、ATGもちょっと関わっているようでやすが。
なんで許可されたかというと、おそらく、浅井慎平さんの知名度なんでやしょうね。
浅井さんは昔から、テレビなどに露出高いでやすからね。

そして、多彩なゲストも、浅井さんのカオで集められたんじゃないかとお察ししやす。
淀川長治さんは、演技をしているわけではなく、冒頭のシークエンスでたくさんの酔客がいる、その中の一人として、ワンショット映るだけでやす。
あと、けっこうナガゼリがあって印象深いのは、川谷拓三さんと内藤陳さんでやすね。
どちらもとても人間くさい大仰ではない演技をしていらっしゃいやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2020-08-29 10:59) 

ぼんぼちぼちぼち

あ、うっかり書きそびれやした。
口絵的に使った写真は、あっしんちの近所のワインバーの表に置かれているベンチでやす。
座る部分を真上から撮りやした。
この映画のイメージに合っていると思ったので、今回、これを付けやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2020-08-29 11:02) 

リンさん

ブレイク前のタモリさんが主演だったんですか。
そんな映画があったなんて。
しかも浅井慎平さんが映画を作っていたなんて知りませんでした。
by リンさん (2020-08-29 14:23) 

ラック

役者さんも魅力的な方々が・・・今日この頃の映画で観たい!と思うのがありませんので。
by ラック (2020-08-29 15:34) 

GG233334

浅井慎平氏が映画を撮っていたなんて知りませんでした。
ぼんぼちさんの解説で、ぜひ観てみたくなりました。
最近めっきり見ませんが、浅井氏、お元気なんでしょうかね?
千葉県千倉の海岸美術館も閉館しちゃったし、ちょっと心配です。
by GG233334 (2020-08-29 16:05) 

たいちさん

美意識の複雑さを思い知らされました。
by たいちさん (2020-08-29 17:19) 

藤並 香衣

浅井慎平さんが映画を撮られていたなんて初めてしりました
国語・算数・理科・社会・英語の成績がよければ良い
そんな親に育てられた子供は芸術に触れる機会も少なく
自分にとって何が美しいのかという感性を育てる機会がないのかもしれません
by 藤並 香衣 (2020-08-29 20:03) 

そらへい

外国映画でも、日本の映画でも映画の魅力の中には
俳優の演技やストーリーの面白さがありますが
ストーリーそっちのけで、ある風景や美しい映像に
見とれてしまうことがあります。
浅井慎平とタモリの組み合わせというだけで
期待をもたせますね。

by そらへい (2020-08-29 20:38) 

raomelon

あらすじは忘れてしまっても
美しい映像は焼き付いています。
美しさのバランス、確かにあると思います^^
100点満点中150点の作品、観てみたいです。
by raomelon (2020-08-29 21:07) 

yokomi

こんな鉄格子、家庭菜園に欲しいです(^_^;) ハクビシンは細い金網だと食い破って畑に侵入し、作物を食い荒らすとか。我が家もやられています(>_<) 今年の大河ドラマは色がケバケバしていす。以前の作の反省や4k8kのPRもあってか野山や衣装がビビットカラーで見ていられません(>_<) なんだべねぇ(^_^;)
by yokomi (2020-08-30 01:22) 

旅爺さん

映像の綺麗な映画は山岳物に多いかな?
爺は映画館まで25㌔で駐車場が無いので見に行けないんです。
by 旅爺さん (2020-08-30 06:56) 

よいこ

そうなんですね
写真家が撮った映像はさぞ美しいことでしょう
私も見てみたいです
by よいこ (2020-08-30 08:37) 

yoko-minato

「キッドナップブルース」浅井新平監督
タモリさん主演のこの映画、見たかったで゛すね~。
1982年、どうしてこの作品を知らなかったのでしょう!!
美しい映像、なんかわかる気がします。
ぼんぼちぼちさんの作られる映像に何処か通じる
ものがあるような気がします。
by yoko-minato (2020-08-30 08:43) 

ぼんぼちぼちぼち

みなさん

あっしの記事をお読みになって、この映画観てみたいと思ってくださってとても嬉しく思いやす。
最上級に素晴らしい出来の映画なので、一人でも多くのかたに観ていただきたいでやす。

浅井慎平さん、早稲田大学在学中は映画研究会に所属されてたようでやすね。
なので、プロの写真家としてスタートする以前に、映像理論を勉強なさってたということになりやすね。
そうでやすね、最近はどうしていらっしゃるのでやしょうね。
お元気だったら安心でやすね。

ブレイク前のタモリさんの出演映画では、「下落合焼き鳥ムービー」のほうは有名でやすね。
こちらは自由に好き勝手に作ったナンセンスコメディといった作品で、タモリさんはお笑い芸人のタモリさんらしく演じておられやすね。
対して、本作のほうは、ラジオから流れるアナウンスがタモリさんのお得意芸の一つであるナレーションの模倣だったりと、タモリさんでこその芸も活かされてはいるのでやすが、そこは作品に沿うようにデフォルメを抑えられてさり気なく演られてやす。
また、林の中を走り遊ぶ少女を、タモリさんがコルネットを吹きながら追いかける というシーンも、冬の木々の間をちらちら見え隠れする赤い服のタモリさんを実に美しく撮られていて、ここも非常に嫌味のない叙情に仕上がってやす。
あと、山下洋輔さんが、空き地で廃材のピアノを弾くシーンが、充分に尺が取られていて、ここはジャズ好きのかたは、おおっ!と前のめりになれるところだと思いやす。
音楽は山下洋輔さんが担当なさってるんでやすが、無駄に主張し過ぎない音の付け方で、この点も、作品の意図をよく解って付けられていて、この映画の完成度をより高めてやす。

藤並さんがおっしゃるとおり、日本の多くの子供って、主要科目さえ出来ればそれでいいと教育され、そして就職する会社も美術とはまったく関係がなくて、妙ちきりんな基準で「こういう服装は会社に来るのに相応しくない」って抑えこまれてしまうから、美意識が育たないまま、一生を終えてしまう人って少なくないのかも知れないでやすね。
それに対して、ヨーロッパでは、家に絵と花が飾ってあるのは当たり前。
毎週末には観劇やコンサートに行く、という文化でやすもんね。
日本は、文明大国であっても文化においての平均値は低い国だと痛感してやす。
学校教育の芸術分野の教え方にも問題がありやすね。
それはまた、ちょっと先の記事でお話ししたいと考えてやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2020-08-30 11:38) 

sana

素晴らしい作品のようですね。
機会があったら是非見て見たいです。
半ば見たような気になってます^^
by sana (2020-08-30 13:43) 

プー太の父

とてもお気にりの映画だったようですが、やはり観る側個人の
感性によってもその映画の価値が大きく変わるものですね。

by プー太の父 (2020-08-30 14:40) 

Boss365

こんにちは。
「キッドナップブルース」観ていませんが(観ている可能性もあり)、ブログを読むと鑑賞してみたいですね。綺麗や美しいの概念、人それぞれなので難しいと思いますが、ある一定の法則はあります。理論的に解明出来ない事もあり、学術的にも論争がある分野。また、目に見えないモノでも綺麗や美しいの概念あります!?(=^・ェ・^=)
by Boss365 (2020-08-30 18:04) 

こじろう

>リンゴの寄り一つ 吸い殻でいっぱいになった灰皿一つ・・・
この一行だけでも情景が目に浮かんでくる。
なんとなく,この映画をお薦めされた理由が分かった気がした(´ω`*)
by こじろう (2020-08-30 18:21) 

xie

めちゃくちゃ観てみたくなりました
エンドロールでどんな曲が流れるのかも楽しみです

by xie (2020-08-30 21:19) 

naonao

写真家の浅井慎平さんが脚本・監督の作品で
ブレーク前のタモリさんが出演されているなんて
面白そうで、観てみたいです(゜∇^d)
by naonao (2020-08-30 21:51) 

NO14Ruggerman

とても興味深いです。

by NO14Ruggerman (2020-08-31 01:12) 

ぼんぼちぼちぼち

みなさん

この映画に興味を持っていただけて、大変嬉しゅうございやす。
知る人ぞ知る名作!といったところでやしょうか。
こういう名作は、一人でも多くのかたにみていただきたいものでやす。
エンドロールに流れる音楽、あっしはスタッフキャストの名を必死に追ってたので、あまり印象に残ってないでやす。
、、、ということは、違和感ある音楽だったら悪い意味で耳についてよく覚えていると思うので、この辺りも、作品の邪魔をしない一体化したものだったのだと思いやす。

芸術は一から十まですべての人が感覚で作り、感覚で鑑賞すると思っておられるかたって意外と多いようでやすが、どの芸術分野にも「理論」というものがありやす。
美術であれば美術理論、映画であれは映像理論と。
理論を勉強したことのない人は100%感覚で鑑賞するわけでやすが、その道のプロや 素人でも研究所に通って学んだ人は、理論と感覚の二本柱で鑑賞しやす。
理論=客観的事実で、感覚=主観的感情ですね。

なので、この作品を理論を学んだ人が観た場合「叙情は好みじゃないんだよなあ」とか、「テンポのある映像のほうが好きなんだよね」といった、好きじゃない、という意見は多々出るかもしれやせんが、「目茶苦茶で成立していない」とか、「基礎がまるでなっていない」という人はいないはずでやす。

理論にはどの分野にも、基本や法則がありやすから。
ただ、非常に高いレベルで甲乙つけがたい、とか、どちらが優れている、とかの論争はありやすよね。

本文でお顔の例も挙げたことだし、ものすごく解りやすい具体例を挙げると、、
お顔にはゴールデンプロポーションというのがあります。
最も美しいとされるお顔の輪郭およびパーツの比率でやすね。
日本の有名人で最もゴールデンプロポーションに近いのは、後藤久美子さんなんでやす。
沢口靖子さんになると少し外れる。
だけど、後藤久美子さんより沢口靖子さんのほうが美人だと判断する人はたくさんいやすね。
これは、ゴールデンプロポーションに限りなく近いのが美なのか、ちょっとだけ外れたバランスが美なのか、という論争でやすね。
こういうハイレベルな論争は起こってしかりだと思いやす。
美の定義はひとつじゃないという。

けれど世の中の、美に関する理論をまるで学んでいない人の中には、「後藤久美子なんて醜女だ。絶世の美人は田辺聖子さんだよ!」と言い切る人がいやす。
これは明らかに、間違った美意識でやす。
もちろん、その人が、田辺聖子さんこそが絶世の美人だと思うから毎日、田辺聖子さんの写真にうっとりする、というのは、その人の自由でやす。
だけど、そういう人が、美容外科の先生になろうとしたり、ミスユニバースの審査員になろうというのは、不適合というものでやすね。
意外と世の中には、そういう明らかに間違った美意識を持っている人というのがいやす。

まあ、要するに、そういう理屈でやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2020-08-31 15:37) 

カトリーヌ

美はバランス、ですよね。おっしゃる通りです。
この映画、探せば見れるかしら^^
ブレイク前のタモリさん、どんなだったんだろう。
映像の綺麗な映画はいいですよね(゚∇^*) ♪
by カトリーヌ (2020-08-31 18:53) 

ぼんぼちぼちぼち

カトリーヌさん

ほんとに、すべての美はバランスが取れているかどうか、なんでやすよね。
あっしは美術学校時代に、嫌というほどそれを叩き込まれやした。
そして、どういう状態がバランスが取れているか、が解るようになりやした。

この映画、たぶんYouTubeには出てないと思いやす。
DVDは売られているようでやす。
30代後半の頃のタモリさん、素朴な優しそうなおじさん、って感じでやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2020-08-31 22:46) 

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