ぼんぼち選・寺山修司監督映画作品ベスト5 [映画・演劇雑記]

私・ぼんぼちは中学生の時からの寺山修司の熱烈なファンなので、寺山が監督した映画作品も殆ど観ています。
寺山映画は、私の人生の映画鑑賞観に深く大きく影響を及ぼしています。
というわけで、今日は、あくまで主観的にですが、私の選んだ寺山監督映画作品ベスト5を挙げてみたいと思います。


一位 書を捨てよ町へ出よう

やはり寺山映画ベストワンと言えば、この作品をおいて他にないのではないでしょうか?
劇映画でありながらメタシアター的な要素をふんだんに取り入れた寺山初の長編作品。
虚構と現実をゆききする自由さに圧倒されつつ 映画というものの何たるかを根元的に考えさせられます。


二位 田園に死す

執拗に追いすがる母を殺したくても殺せない 寺山の自伝とも受け取れる作品。
「記憶とは捏造されるものである」というテーマが、非リアリズムの手法によってリアルに迫ります。
主人公の青森の家の室内のセットが屋台崩しされるとそこは新宿の雑踏である というラストショットも衝撃的。


三位 二頭女

私は寺山の短編実験映画では、この作品が突出して優れていると解しています。
実像とは別の動きをしてゆく影というものを用いて、過ぎ去った時の虚しさが美しく表現されています。


四位 ローラ

スクリーンの中の女達の挑発に乗り 観客の一人(仕込まれた役者)がスクリーンの中に飛び込んでしまう という 何ともユニークな作品。
ここでも寺山は、映画の根元的なありかたに疑問符をつきつけています。


五位 トマトケチャップ皇帝

五位に関しては、どの作品を入れるか 非常に悩みました。
結果この作品に決定した理由は、ここには他のどの劇映画監督にもどの実験映画作家にも創ることができないに違いない 寺山ならではの発想と理論があるからです。
ユーモラスかつエロティックな映像がテムポよく展開します。


みなさんもご存じのように 寺山は、ありとあらゆる表現形態で以って我々観客を驚愕させ吸引しましたが、日本映画史を語る上でも欠くことのできない存在でした。
映画は演劇と違って こうして没後も作品を観ることができるので(ローラに関しては例外となりますが)機会ある毎に堪能反芻したいものです。
それにしても、現在の日本映画界、寺山修司のみならず 勅使河原宏も松本俊夫も過去の人となってしまいました。
なんとも寂しいかぎりです。
寺山修司.JPG

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さゆり

おはようございます。

中学生のころからの寺山修司のファンなんて
すごいですね。

選んだ寺山監督映画作品ベスト5の説明も
さすがですね。私などだめです、本をあまり読んでいなかったので
このベスト5のコメント見ていたら少し読みたくなりました。
日本、いえ世界の寺山修二ですね。

by さゆり (2017-08-21 08:19) 

きよたん

記憶とは捏造されるものであるという言葉と同時に
写真は真を写すのではなく虚を写すものという彼らしい言葉
彼の写真は劇場的で面白いですね
映画 私も見たいと思います


by きよたん (2017-08-21 08:59) 

ぼんぼちぼちぼち

さゆりさん

中学一年の時、戯曲(確か「毛皮のマリー」)を読み、そこに載っていた舞台の写真で 寺山に興味を持ちました。
そしてその後、エッセイと散文詩を読み、寺山の深みにハマリ、大人になってから短歌を読んでカウンターパンチをくらいやした。

そう、寺山は世界的に評価されて 海外でも多く公演をやってやすね。
日本での評価、もっと高くあるべきなのでは・・・と思いやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-21 11:23) 

ぼんぼちぼちぼち

きよたんさん

そうでやすね。写真もおもしろいものを何作も遺してやすね。
アンティーク写真のように加工されたりと、あの時代にあれだけ斬新な発想があったということに やはり天才性を感じずにはおれやせん。

映画、是非ご覧になってくださいねでやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-21 11:28) 

伊閣蝶

私は、一位と二位でどちらにするか悩みます。
個人的には二位の「田園に死す」が好きなのですが、より寺山修二らしさが出ているのは「書を捨てよ町へ出よう」だと思いますので。
映画の中に演劇の核心的な表現を持ち込んで、虚と実を巧み操るこれらの映画のすごさは正しく筆舌に尽くしがたいものがありました。
「田園に死す」のラストはもちろん衝撃的ですが、場面が突然転換するところなどは、中川信夫監督の「東海道四谷怪談」を彷彿とさせられます。
そういえば、恐山の石に着色する表現を評論家の白井佳夫氏が批評したのに対し、「自然破壊などというのもあるのか。人間が自然界の生き物であればその人間が自然に対して行っていることも結局自然なのではないか」という抗弁をしたことが、ふと思い出されました。
by 伊閣蝶 (2017-08-21 13:20) 

Ginger

すごく目の澄んだ人、という印象があります。。。
by Ginger (2017-08-21 13:37) 

ぼんぼちぼちぼち

伊閣蝶さん

>個人的には二位の「田園に死す」が好きなのですが、より寺山修二らしさが出ているのは「書を捨てよ町へ出よう」だと思いますので。
実はあっしも、単に映画作品としてどちらが好きか?と問われたら「田園に死す」なんでやす。まとまりがよい作品が好きなので。
「書を捨てよ---」のほうを一位にしたのは、寺山らしさががぜん強烈に出ているからでやす。
言いたいことをもぅ全て詰め込んじゃったみたいなところがありやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-21 16:22) 

ぼんぼちぼちぼち

Ginger さん

もしも寺山がこのコメントを向けられたら
「僕の目が澄んでいるかどうかは解からない、しかし 僕はこの目という装置を使って、何を捉え、何を覗き、何を考えたか、つまりそれは一つの事件と言っても過言ではないのではないだろうか、と思うわけなんだよね」
と答えていたかも?知れやせん(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-21 16:32) 

トロル

寺山修司がもし応えるなら、、、という発想と、
実際想像した言葉が生まれるあたり、
惚れ込んで染み込んだぼんぼちさんに、共感しますね。
わたしにも何を考えてこうするだろう…といちいち解る人物がいます。
by トロル (2017-08-21 17:57) 

ぼんぼちぼちぼち

トロルさん

惚れ込むと、「こう答えるんじゃないかなぁ」って つい想像しちゃいやすね。
寺山がこう答えるに違いない、っていうのはタモリさんのものまね芸が見事でやしたね。
中でも特に秀逸だったのは、「寺山のものまねをするタモリを評する寺山」っていう芸。
いかにも言いそうな理論展開で大爆笑でやした(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-21 18:24) 

nikki

書を捨てよ町へ出よう はなんとなく聞いたことがあります。
中学生のころから熱烈ファンとはすごいですね。

by nikki (2017-08-21 19:50) 

ぼんぼちぼちぼち

nikki さん

「書を捨てよ町へ出よう」は、同名で舞台や評論集もあるので、耳にする機会が多いかも知れやせん。
思春期の時、あっしは精神的飢餓感でどうしようもなかったんでやす。
そんな中で寺山作品に出逢えて、それが大きく埋められやした。
あっしにとって寺山は、精神の救済者なんでやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-21 20:00) 

sana

寺山修司さん、大きな存在でしたね。
個人的にはそんなに知らないのですが‥
「書を捨てよ町へ出よう」は本も読んだし、映画も見たかな。
とある漫画家さんのところを訪問中に、たまたま寺山修司さんから電話がかかってきて、目の前で会話が進行していたことがあります。
尊敬している美輪さんの舞台を生で見たのが唯一「毛皮のマリー」です。
思わず、タモリの映像を探しに行って~~見続けてしまいました!傑作~^o^

by sana (2017-08-21 20:03) 

ぼんぼちぼちぼち

sanaさん

>とある漫画家さんのところを訪問中に、たまたま寺山修司さんから電話がかかってきて、目の前で会話が進行していたことがあります
貴重な体験をされやしたね。羨ましいでやす。
その漫画家さん どなたなのか気になりやす。
寺山と漫画といえば、「あしたのジョー」のテーマ曲の作詞と力石の葬儀を行ったことが有名でやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-21 20:15) 

未来

恥ずかしながら観ていない物の方が多いですね。
本ならまだしも、映画となると地方の人にはハンディがあります。
寺山修司は篠田正弘監督作品などの脚本も書いていましたね。
by 未来 (2017-08-21 20:28) 

せつこ

色々詳しいですね、ぼんぼちさんはお若いのでしょう♬
その方の映画鑑賞してます。


by せつこ (2017-08-21 20:33) 

ぼんぼちぼちぼち

未来さん

そうでやすね。特に実験映画は地方では上映される機会が非常に少ないかも知れやせんね。
そう、篠田監督作品の脚本を何本も書かれているんでやすよね。
そちらはまだ観ていないので、これから少しずつ観てゆこうと考えてやす(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-21 20:42) 

ぼんぼちぼちぼち

せつこさん

あっしは1962年生まれなので、寺山の世界をリアルタイムで十二分に愉しむには もうちょっと早く生まれていればなぁといった世代でやす。
初公開時に観に行った映画は「上海異人娼館」だけで、他は没後の特集上映で鑑賞しやした(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-21 20:50) 

ackylacky

「書を捨てよ町へ出よう」は昔読みました。
「マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや 」が有名ですね。兵隊に行った大人たちとマスコミに流れる情報が食い違っていて、すでに何が真実なのか分からない時代でした。

この時代の反動なのか、我々が青年になるころは、シラケ世代なんて言われてましたね。

共産主義国の現状がひどいと明らかになっていたのに称賛している新聞。アメリカに憧れているくせに反米を叫ぶ活動家。
信じるものが見つからない時代、真実を明らかにしたいと思うことは、ますます少数派になってました。
by ackylacky (2017-08-21 21:57) 

kiki

寺山修司をあまり知りませんが、
彼の『親の愛情は悲しい、片恋だからです』が印象に残っています。
中学生の ぼんぼちぼちぼちさんがこの言葉を知ったっ時、
どのように感じていたのかと考えるとキュンとなります。
by kiki (2017-08-21 22:06) 

ぼんぼちぼちぼち

ackylacky さん

「マッチ擦る---」は寺山の代表歌でやすね。
夜の海辺、煙草を吸うためにマッチを擦ると 霧に包まれた海がぼんやりと浮かび上がる。
そのときふっと私は、身を捨てるに値するほどの祖国なんてあるのだろうか?否、ない。と思う。
映像が目の前に浮かびやすね。あまりの見事さに舌を巻かずにはおれやせん。
あっしも幾多ある寺山の歌の中でこれが一番好きでやす(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-21 22:19) 

ぼんぼちぼちぼち

kiki さん

一般的な親とあっしの親はあまりにも違いすぎやしたからね。
異星の人の感情のように感じてやしたね。
このアフォリズムに限らず、テレビのホームドラマとか異星人の話のように感じてやした。

寺山の母親はあっしの母親と真逆で、常軌を逸した溺愛をしていたんでやすよね。
寺山が結婚してからもずいぶん嫉妬して大変だったようでやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-21 22:35) 

土芽

名前は良く聞くし好きという人も周りにいたけど
気になりつつも観たことなかったです。
今度観てみます。
by 土芽 (2017-08-22 06:19) 

リュカ

この記事読んだら、また映画が観たくなりました^^
永久保存版で録画してるから「田園に死す」観ちゃおう♪♪
by リュカ (2017-08-22 10:48) 

ぼんぼちぼちぼち

土芽さん

是非一度観てみられてくだされ。
「書を捨てよ---」と「田園に死す」はレンタル屋さんにもあると思いやす。
前者は、映画というものの何たるかを根元的に考えさせられ、後者は寺山の生い立ちを彷彿とさせる作品でやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-22 21:51) 

ぼんぼちぼちぼち

リュカさん

「田園に死す」 途中で今まで展開していたことは劇中の作者が作っていた映画だったのだと知らされることで まず衝撃を受けやすね。
そしてラストの屋台崩しのシーンで、もう一歩引いた位置から構造が俯瞰されることでカウンターパンチをくらいやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-22 22:01) 

リンさん

残念ながら、観たことはないのですが、タイトルがみんな、いいなあと思いました。

by リンさん (2017-08-22 22:06) 

そらへい

ほぼ同年代なのでしょうが
「書を捨て街に出よう」「田園に死す」
しかもそのタイトルのみしか知りません。
by そらへい (2017-08-22 22:07) 

ぼんぼちぼちぼち

リンさんさん

なるほど、寺山は短歌で世に出た 元々書き言葉の世界の人なので
言葉選びには他の映画監督よりも非常に厳しく熱いものがあるのではないかと思いやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-22 22:15) 

ぼんぼちぼちぼち

そらへいさん

「ほぼ同年代なのでしょうが」というのは、寺山リアルタイムという意味でやしょうか?
あっしの同級生には寺山好きは一人もいやせんでやした。
中高と演劇部に入ってやしたが、その中にも寺山ファンはあっし以外誰もいやせんでやした。
でも今でも寺山関係のイベントにはたくさんの人がおしよせる。
あっしは寺山が世間一般的にどれくらいメジャーなのかよく解からなかったりしやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-22 22:28) 

えーちゃん

どの作品も存じ上げません(^^;
by えーちゃん (2017-08-22 23:00) 

sana

寺山修司さんといえば‥昔なら、詳しくは知らなくても存在感あったと思うんですが。今はどうでしょうね?
あ、少女漫画勃興期の説明をしようかと思った時、「あしたのジョー」のこと、考えました。
「巨人の星」「あしたのジョー」の人気が盛り上がった頃、大学生が少年漫画を読む時代になったと言われました。
数年後に少女漫画にもそれが起きて、男子も読む、大人も読む、時代になったのです。「ベルばら」や「ポーの一族」がヒットし、24年組と言われる、昭和24年頃に生まれた作家たちが活躍しました。
そういう中の一人、竹宮恵子さんのところにサークル仲間とお邪魔していた時、電話がかかってきたのです。「凄いですねえ!」というようなお声が受話器から漏れ聞こえました^^
漫画研究会の顧問をしていた友人は「あの頃に生まれたかった!」と何度か生徒に言われたそうですよ^^
by sana (2017-08-23 00:46) 

馬爺

映画や演劇などは見ていないんですよ、テレビすらほとんど見ないですからね。
by 馬爺 (2017-08-23 13:25) 

ぼんぼちぼちぼち

えーちゃんさん

そうでやしたか。寺山ファンか映画ファンでないと知らないかも知れやせんね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-23 19:40) 

ぼんぼちぼちぼち

sanaさん

そうでやしたか。あっしは恥ずかしながら漫画はガロ系以外殆ど知識がないのでやすが
竹宮恵子さんというのは少女漫画の作家さんなのでやすね。
寺山が少女漫画も読んでいたことに少々驚きやした。

先日、寺山ゆかりの地の青森県三沢市で寺山のイベントが行われた模様をユーチュープで観たのでやすが
たくさんの人が参加していてとても盛り上がってやした。
いまだに根強い寺山ファンは健在のようでやす。
嬉しいかぎりでやす(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-23 19:53) 

ぼんぼちぼちぼち

馬爺 さん

そうでやしたか。
ネット時代になって そういうかた多くなったかも知れやせんね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-23 19:55) 

八犬伝

仰る通り「書を捨てよ町へ出よう」は、寺山修司の代表作ですね。
私はね、寺山修司というと
日曜午後のフジテレビの競馬中継の解説者で
朴訥と競馬を語っていたのが
とても記憶になっています。
by 八犬伝 (2017-08-23 21:49) 

ぼんぼちぼちぼち

八犬伝さん

寺山は、競馬の解説や評論でも知られてやしたね。
「競馬ファンは馬券を買わない。財布の底をはたいて自分を買っているのである」なんていうアフォリズムも遺してやすね。
競馬に限らずギャンブル全般が大好きだったそうでやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-23 22:09) 

Cedar

Cedar的には5位はもうちょっと上です。マイナー好みな自分のチョイスなんで一般的でないのは承知しています。
by Cedar (2017-08-24 01:57) 

NONNONオヤジ

売れる前の三上博史が出ていた作品を観た記憶がありますが、
内容はおろかタイトルすら覚えていなかったので、
ちょっとググってみたところ、どうやら寺山修司監督の『草迷宮』
だったようです。
by NONNONオヤジ (2017-08-24 06:52) 

ぼんぼちぼちぼち

Cedarさん

トマトケチャップ皇帝かなりお好きなのでやすね。
寺山実験映画では人気のある作品だと思いやすよん。
二頭女やローラより好きな人多いかも知れやせん。
やはり短縮版のほうがテムポがあってまとまりも良いでやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-24 19:34) 

ぼんぼちぼちぼち

NONNONオヤジさん

そうでやす。三上博史さん主演の作品は「草迷宮」でやす。
毬が乳房(母親)の象徴として使われたりと 抽象的表現の映画でやしたね。
三上博史さんは、「さらば箱舟」にも、笛を吹く青年の役で出演してやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-24 19:40) 

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