映像作家・松本俊夫先生逝去 [感想文]

松本俊夫2.JPG

映像作家の松本俊夫先生が、先日の4月12日に亡くなられた。 85才だった。
松本先生は、「薔薇の葬列」 「ドグラ・マグラ」 「つぶれかかった右眼のために」 「アートマン」等、従来の映画の枠組みにとらわれない革新的な前衛映画を幾多生みだされた 我が国を代表する映像作家であった。

私は松本先生の作品を知る以前は、「自分は映画というジャンルにおおいに興味があるのだが、納得のいく作品に出逢ったためしがない。 今まで観てきた作品のようなものばかりが映画の全てである筈はない!」と 日々疑問符を抱えていた。
それが30代半ばの時、「ドグラ・マグラ」に遭遇したことで 一気に疑問は氷解し、私は松本俊夫先生の虜になった。
そして松本先生の作品を片っ端から観、著書はすべて読了した。
講義も二度ほど受けるチャンスに恵まれた。
先生のお言葉を一言一句聴きのがすまいと、ペンを片手に集中した 貴重で有意義で至福の時間であった。

松本先生の存在がなかったら、私は映画ファンにはなっていなかった と断言できる。
松本俊夫という帰る場所があったから、他の作家・監督の作品にも越境して享しむことができたのである。

今、私の内は空虚さでいっぱいである。
まるで 何も映し出されていないスクリーンの客席にぽつんと独り座しているような・・・・。
もぅ 私には映画ファンでいる意味がなくなってしまった。
生きる気力もなくなってしまった。
松本俊夫2.JPG

nice!(311)  コメント(41)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 311

コメント 41

ゲンママ

nice!を押していいものか迷いましたが。。
早く元気になってくださいね。。
by ゲンママ (2017-04-26 07:20) 

きよたん

松本俊夫氏の訃報を目にし、ぼんぼちさんが
ショックを受けていらっしゃるだろうと。。
作品は残りますが彼の死はやはり何かの終焉を
思わせますよね。もう出現不可能な映像作家でしょう。
by きよたん (2017-04-26 09:27) 

JUNKO

崇拝する先生を失ったことを思うと、私たちは幸せなお祝い会ができたのだと改めて思います。松本さんの精神はぼんぼちぼちぼとさんに永遠に宿り続けるものと思っています。
by JUNKO (2017-04-26 10:38) 

きんれん花

少しづつ元気を取り戻してください
by きんれん花 (2017-04-26 11:22) 

ワンモア

ご冥福をお祈りします。今年は色々な分野の著名人がおなくなりになられるので寂しいです(´・ω・`)
by ワンモア (2017-04-26 11:42) 

もーもー

ご心痛察し致しますが、
松本先生を語り続けるのも、ぼんぼちぼちぼちさんの
映画ファンの役目ではないでしょうかね?
胸の中に、松本監督は生き続けます
  先生のお言葉、教えてくださいね
少しずつ、語って下さいね  
by もーもー (2017-04-26 12:03) 

馬爺

好きな物が無くなったり慕う人が無くなったりした時のショックは行かんともしがたいものですね、くよくよしても詮無いことですから心にしっかりととどめて置かれればいいのではないでしょうか?

by 馬爺 (2017-04-26 12:25) 

Ginger

大好きな方、尊敬する方とお逢いできて生の声を聴くことができたのは、素晴らしい経験でらしたと思います。宝物ですね!
by Ginger (2017-04-26 13:44) 

ニッキー

ご冥福をお祈り申し上げます。
by ニッキー (2017-04-26 14:52) 

うっかりくま

その方の精神や志を受け継ぎ伝えていく人がいる限り、
魂は生き続け、時代を超えて大きな存在であり続ける
のだと思います。
ぼんぼちさんのように思ってくれる方がいる松本監督も
また、お幸せな人生だったのではないかと感じました。
時間をかけて、少しずつ元気を取り戻されますように。。

by うっかりくま (2017-04-26 15:39) 

なんだかなぁ〜!! 横 濱男

ポッカリ穴が空いてしまったんですね。
元に戻るまで時間がかかりますが、
少しずつ元気になってください。。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2017-04-26 16:23) 

フサヲ

今はキット、理性で理由を付けるより、
感情の赴くまま、ご自身と映画と松本先生とを、お想いになって、見つめる・・・
ご自身でしか、整理のつけられない問題だと思いますので、
ぼんぼちさんが良いようになさって、私はソレが良い、思います (^ ^ )゛
by フサヲ (2017-04-26 17:03) 

柴犬

R.I.P
by 柴犬 (2017-04-26 18:36) 

リンさん

少しずつ元気になってください。
作品は残ります。
by リンさん (2017-04-26 19:56) 

ぼんぼちぼちぼち

みなさん

様々なご意見・温かなお言葉ありがとうございやす。
映画に明るくないかたはピンとこないかも知れやせんが、松本俊夫先生は、日本の映画界に欠くことのできない偉大な存在でやした。
松本先生がおられなかったら 現在の日本の映画界は存在しなかったと言い切れやす。
それくらい、松本先生の遺業は革新的でクオリティの高いものでやした。
そう、ここでひとつの日本映画界のシークエンスが終わった と言えるかも知れやせん。

勅使河原宏も寺山修司もそして松本先生もいなくなった日本映画界・・・・・寂しいものでやす。

仰るとおり、今年はさまざまな著名人が亡くなられてやすね。
かまやつひろしさん チャックベリー。
かまやつさんは間近で何度も間近でライブ観ていたので、これも非常にショックでやした。
やはり生で、ライブなり講義なり目のあたりにしていると 悲しみも大きいでやす。

by ぼんぼちぼちぼち (2017-04-26 20:08) 

ときどき

DAVID BOWIE、PRINCEの新たな活動を愉しむ事は
もう出来ないんだと分かった時は寂しかったですが、
生きる気力を無くすほどではなかったです。
思い入れの違いなのでしょうね。

故人の作品は残りますし、影響も続くのでしょうから、
遺産に期待したいと私は思っています。
by ときどき (2017-04-26 20:24) 

ackylacky

ぼんぼちさんが何度も取り上げておられた方でしたね。
ご本人が亡くなられても作品は残ります。ファンの人が取り上げ続けることで永遠の命を持つこともあるかと思います。
by ackylacky (2017-04-26 20:57) 

mwainfo

皆様のご訪問の証として、ナイス欄を再開いたします。  皆様のブログへの訪問は、相変わりませず継続いたします。  よろしくお願いいたします。

by mwainfo (2017-04-26 21:42) 

美美

尊敬されている方が亡くなられるとお淋しいですね。
少しでも元気になられますように
by 美美 (2017-04-26 21:43) 

majyo

とても消沈されているぼんぼちぼちぼちさんを初めて見たように思います。どうぞその意思を継いで ここで語ってください
私は存じ上げない方ですが「薔薇の葬列」は知っています

by majyo (2017-04-26 21:59) 

yoriko

それほど素敵な作品に巡り合えたのですから幸せでしたね
作品は残っています,元気を出してください。
by yoriko (2017-04-26 22:26) 

kick_drive

こんばんは。1年前の自分も今のぼんぼちさんのようでした。
1つ空きができたということは次の何かが入る場所ができたということでよいのではないでしょうか。

by kick_drive (2017-04-26 22:32) 

sana

そんなにショックをうけるほど、松本俊夫先生を特別な存在として尊敬していらしたのですね。
出会えたこと、そこまで感じたことはお幸せです。
これからも語り伝え広めること、同じ思いの人と気持ちを通じ合うこと、同じ方を尊敬している作家さんの作品を追ったり、いつかは別な魅力を持つ作品に出会うこと‥
など、ありえると思いますよ^^
by sana (2017-04-26 22:53) 

藤並 海

自分のなかで大きな存在を失うと
ぽっかりと穴があいたようになってしまいますね
その気持ちを乗り越えた先に何かが見える日が来ますから
映画をずっと好きでいてくださいね
by 藤並 海 (2017-04-26 23:55) 

暁烏 英(あけがらす ひで)

 映画に造詣深いおかたにぼくは何も語れない。15人程度で月に二度、昔の名画を楽しむ会に入っていますが、主催者の友人は、なんと50年前のカタログやポスターまで持っている。監督の制作心理まで研究していて頭が下がります。あなたもそんな一人なんでしょうね。
by 暁烏 英(あけがらす ひで) (2017-04-27 11:27) 

mimimomo

こんにちは^^
その喪失感、気持ちは分かりますが、生きる気力までなくさないでください。まだまだお若いのですもの。

by mimimomo (2017-04-27 15:30) 

yakko

こんばんは。
どうぞ、元気を出して下さい(_ _)
by yakko (2017-04-27 18:41) 

えーちゃん

ご冥福をお祈りします。
この世に生を受けたものは、絶対に何時かは死にます。
それがこの世に生まれた運命です。
でも、亡くなった方を思い語り継いで行く事で、その方は生き続けて行くのではないでしょうか?
by えーちゃん (2017-04-27 18:51) 

chibacandy

辛いですよね!悔しいですよね!
ご冥福をお祈り申し上げます。
どうか元気を取り戻してください。
by chibacandy (2017-04-27 19:06) 

ぼんぼちぼちぼち

みなさん

たくさんの温かな励ましのお言葉 ありがとうございやす。
松本俊夫という存在があって あっしはどれほど幸せだったかを 改めて今かみしめていやす。
そう、あっしがしばしば記事に取り上げていた あの映像作家でやす。
今回の記事本文に挙げた代表作の感想はいずれも過去に記事にしやしたが、折りあるごとに先生にまつわることは これからも書いてゆこうと思いやす。

そうでやすね。あっしは単に漠然と映画を楽しむ というのではなく
仰るとおり、作家の製作心理を分析したりしやすね。
研究所で映像理論や実験映画史の講義を受けやしたし、専門書も幾多読みやした。
松本先生は、あっしのような映画を勉強した者が尊敬せずにはおれない 偉大な先生でやした。
逆な方向からいうと、娯楽映画の監督ではなかったので 一般受けはしなかったようでやす。

近いうちにシアター・イメージフォーラムで、松本先生のドキュメンタリーが上映されやす。
上映が決定したのは亡くなる以前だったのでやすが、追悼上映となってしまいやした。
心の中で合掌しつつスクリーンに向かおうと思ってやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2017-04-27 19:57) 

伊閣蝶

松本俊夫さんが亡くなったことを、ぼんぼちぼちぼちさんのこの記事で知りました。
ショックです。本当に残念です。
松本さんは、映像の可能性を高度な芸術的創造性の観点から追求されてきた希有のアーティストでした。
武満徹さんとの対談(音楽の庭)での次のやり取りが非常に印象に残っています。

武満:映画で危険じゃない映画というのは──まあ、大体危険じゃない映画が多いわけで、そういうものを「映画」とみんなが言っているわけなんだけれど、そういうものはほんとうにだめですね。
松本:そうですねえ。とりわけエンターテインメントの時代という鳴り物入りで、商業資本の側から作られたブームがある。でもほとんどがその危険でない範囲の、みみっちい快楽どまりで、危険な悦楽の世界へ連れて行くような映画はきわめて出にくい状況なんだ。ですから一般的にいわれるように、今は映画が非常に活況を呈してきたいい状況なのだとは思わない。

この対談は1978年のもので、当時、カドカワ映画がブームになっていた頃ですから、正しく時代を鋭く読みつつご自身の行き方に明確な意志を示しておられたと思います。
私も大ファンでした。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。
by 伊閣蝶 (2017-04-27 23:57) 

向日葵

長い事、どういうわけか縁が無くて、なかなか見られなかった
「薔薇の葬列」がようやく拝見出来たのが、つい半年前程です。

「ドグラ・マグラ」はタイトルと予告だけで
避けてしまっていました。

松本先生の事をもう少し存じ上げていれば、
あの時のプチオフで、もっといろいろお話出来たかもしれません。
いや?
「ドグラ・マグラ」にかなり強い拒否反応が出てしまった
ワタクシですので、少し深く話し始めたら意見の相違で
言い合いになってしまったかもしれませんね。

でも、ぼんぼちさんがそれほどに崇拝なさっていた
先生なら、「ドグラ・マグラ」も含めて、
ぼんぼちさんが先生から受け継いだお言葉の片鱗なりと
伺ってみたいと思います。

またお会いする機会がありましたら是非に。。

by 向日葵 (2017-04-28 00:07) 

ぼんぼちぼちぼち

伊閣蝶 さん

武満さんとの対談の抜粋ありがとうございやす。とても興味深く読ませていただきやした。
そうでやすよね、カドカワがブームだった時代も現在も、エンターテイメントが映画の全てであるように語られ 一般の多くの人にそう認識されてしまってやすね。
勿論そういうジャンルの中にもよくできている作品というのはあるのだけれど、それだけが映画ではありませんよ、ということをあっしは強く言いたい。
そんな作り手の戦略のために、
エンターティメントばかりを数観ることで「私は映画を知っているんだ」と間違った認識をしている人が世の中にはたくさんいやす。
エンターティメント以外には興味がないというのはその人の嗜好の自由だけれど、少なくとも、映画にはさまざまなジャンルがあり自分が観ている好んでいるのは その中の無難で楽しいエンターティメントという一ジャンルにすぎないんだ という自覚くらいは持ってほしいものでやす。 


by ぼんぼちぼちぼち (2017-04-28 10:56) 

ぼんぼちぼちぼち

向日葵 さん

「薔薇の葬列」ご覧になったのでやすね!
あの作品は、60年代の新宿の裏文化を鮮烈に描きつつ 劇映画でありながらドキュメンタリーが挿入された形を取った 劇映画として型破りの日本映画史上に輝き続ける名作でやす。
「ドグラ・マグラ」は、あえてつじつまの合わないシークエンスをつなぎ合わせて観る者を錯乱させる狙いの これも日本映画史を語る上で欠くことのできない大傑作でやす。

松本俊夫先生のお名前や作品は、日本映画を勉強すると必ずテキストの中に出て来るので、映画を勉強した人にはお馴染みの先生でやす。
松本先生は著書も多く、作品同様、極めて理論的に分析されるかたで 読んでいて非常に気持ちがよいでやす。
向日葵さんは、松本先生の作品のみならず、実験映画というジャンルはあまりご覧にならないようでやすね。
以前お逢いしたときに「実験映画って何?」と仰ってたので そう思いやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2017-04-28 11:16) 

muku

まだまだお気持ちが晴れない中、nice!を有難うございます。
先生のご冥福を祈るばかりです。
by muku (2017-04-28 12:20) 

yoko-minato

大好きだった作家さん、尊敬されていた作家さん
だったのですね。
ご逝去を心からお悔やみ申し上げます。
今はまだ何をする気力もないのでしょうけど
少しずつ、一歩ずつ元気を取り戻されると
いいのですが・・・
by yoko-minato (2017-04-28 17:10) 

ぼんぼちぼちぼち

muku さん
yoko-minato さん

温かなお言葉ありがとうございやす。
5月1日2日と、結果として追悼上映となってしまった松本先生のお仕事を取材したドキュメンタリーが上映されるので その日のために生きてやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2017-04-28 22:39) 

rannyan

以前なら、全く気にもかけずに見過ごした訃報..
新聞で見た時、あっ!と思いました
ぼんぼちさんが落ち込んでいるだろうなぁと..
かまやつ氏をはじめ、やはり自分が年取るしたがって、好きだった人々が去っていくのを
みなければならず、辛いですね
新しいものにも触れられないけれど、今までの作品はずっと残ります
それだけが救いでしょうか..うーん、でも悲しいですね
松本氏のご冥福を心よりお祈りいたします
by rannyan (2017-04-29 10:54) 

ぼんぼちぼちぼち

rannyan さん

そうなんでやすよね。自分が歳をとるとこういう悲しみに遭遇することが多くなりやすね。
音楽も映画も遺ってくれるので 心の中で合掌しつつ繰り返し鑑賞してやす。
温かなお言葉 ありがとうございやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2017-04-29 21:42) 

ayu15

とても悲しいことでしょうけど、そうやって愛してくれる人がいるということに優しさを感じます。
by ayu15 (2017-05-04 08:54) 

ぼんぼちぼちぼち

ayu15さん

ありがとうございやす。
つい先日、松本先生を扱ったドキュメンタリーが上映されやした。
あっしを含めたくさんの人達が先生の旅立ちに合掌しつつ先生の偉業をふりかえった上映会でやした。
by ぼんぼちぼちぼち (2017-05-04 20:05) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0