憂国忌に思ふ  [文学雑記]

11月25日----今年も憂国忌が近づいてきた。
三島由紀夫の自死に思いを巡らす時節である。

三島の死の理由については様々な説が論じられているが、小説にすべき題材・テーマが底をついてしまった事と自身の老いへの恐怖により、表向きはあの様な大義をつけ 美しく英雄的に命の終止符を打った と説く研究者が少なくない。
私もそう考える一人である。
何年も以前から自身の人生のシナリオを練り、完成するや、それに忠実に主演俳優を演じ切った----と。

三島のように ラストが主役の死というケースは稀であろうが、あらかじめ自らが書き上げたシナリオ通りに演じる事は、我々にも 日常の人間関係で多かれ少なかれあるように思う。
例えば、別れたい人に自分が嫌われるように立ちまわり 追われないようにスッキリと終わらせる とか、自分が被害者になるように仕向け 嫌な奴を極悪非道な加害者に仕立て上げる とか。

そう考えすすめてゆくと、三島の死もまるで以って理解不可能な気違いじみた行動ではないように思うのだ。
憂国忌.jpg

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ackylacky

三島由紀夫は父が高く評価していて、「憂国」若いときによみましたが、なんか気持ち悪い印象が残りました。
後から、死と性をむすび付ける感覚は珍しくないのだと知りました。

政治的な発言としては、当時は軍隊の必要性を発言をすると、マスコミに袋叩きにあうような時代でした。
でも切腹というショッキングな行動があったから、無視できず大きく報道されてしまいました。
マスコミは訳の解らない異常な行動というレッテルをはりましたが、考え抜かれた演出で行われたことは間違いないですね。
by ackylacky (2015-11-21 08:00) 

saru

ラストはハッピーエンドがいいな~
by saru (2015-11-21 08:42) 

はらぼー

ボクも金輪際会わないと決めた相手には、
罵声を浴びせて悪い印象にして終わらせることがあります。
異性関係でそうされたこともありますからね。
後味は結構悪いものではありますが・・・。
by はらぼー (2015-11-21 12:51) 

sigedonn

好き嫌いだけで言うと「嫌い」な部類の人物でした。
文章は日本語がきれいでした。
高校三年の昼休み、放送部の友人が昼の校内放送で事件を報じて
学校から厳重注意を受けてました。
そういえば、彼は居所不明だなぁ…。

by sigedonn (2015-11-21 16:21) 

そらへい

私は演じることが苦手なので、
ここまで自分を演じ切ると言うことはできるのかなぁと思いますが
人は、意識しなくても自分自身を演じているところがあるので
そういう意味では、可能なのかなと思います。
三島が太宰治に向かって、あなたが嫌いだというようなことを言ったそうですが太宰もまた自身のシナリオに忠実に生きて死んでいった人でした。
三島も太宰に似ていたのでしょうね。
by そらへい (2015-11-21 17:35) 

ponnta1351

こんなの見ましたか?
<iframe width="640" height="360" src="https://www.youtube.com/embed/jJPBC-WaHeE?feature=player_embedded" frameborder="0" allowfullscreen></iframe>
by ponnta1351 (2015-11-21 17:36) 

ぼんぼちぼちぼち

ackylackyさん

あっしはリアルタイムではまだ小さくて 世間の反応などがじかに解らなかったので
なるほど、と頷きながらコメント読ませていただきやした。
好き嫌いや言動が正しかったか否かは別として、三島は天才でやすよね。
憂国、確かに気持ちの悪さを覚える作品でやすね。
三島自身が監督・主演もして映画化もされやしたね。
その感想は、あっしも僭越ながら過去記事に書かせていただいてやす。
http://bon-bochi.blog.so-net.ne.jp/2011-11-23
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-21 20:11) 

ぼんぼちぼちぼち

saru さん

うん、毎日前向きに有意義に生きていて
ある日突然、眠っている間に息を引き取る・・・なんて最期がいいでやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-21 20:13) 

ぼんぼちぼちぼち

はらぼーさん

仕事がらみでもないのに嫌な相手と無理して関わり続ける必要はないでやすよね。
あっしも罵声をあびせて終わらせたことありやす。
周囲の人間もその人に対してそう言ってやりたいと思っている場合は
迷わずそうしやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-21 20:21) 

ぼんぼちぼちぼち

sigedonn さん

好き嫌いのはっきり分かれる作家の一人でやすね。
身近にいたら いくら天才でも相当キツいだろうなぁというのはありやすね。
文章は、装飾的で華美で、そこも好き嫌いが分かれるとこでやすね。
あっしも三島に関する記事はしばしば書いてやすが
とりたてて好きな作家というわけでもないでやすね(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-21 20:28) 

ぼんぼちぼちぼち

そらへいさん

そう、人間 多かれ少なかれ 常に何かを演じて生きているんでやすよね。
たった一人で道を歩くときですら 何かしら演じながら歩いていたりする・・・・。
三島がヒーローを演じたがったのに対して 太宰は駄目人間を演じたがった。
つきつめて考えると どちらも同じだったりしやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-21 20:34) 

ぼんぼちぼちぼち

ponnta1351さん

三島最期の肉声、以前よく利用していたレンタルビデオ屋さんにもあったので 聞いてやした。
聴きとりづらいんでやすよね。あと、垂れ幕の文字も小さくて読みづらい。
でもそこも、大きな計算の一つだったと思いやすね。
どんなに訴えても虚しく聞き入れられない ということが彼の書いたシナリオだったと(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-21 20:48) 

きよたん

三島由紀夫確かにナルシストで大げさなところが
あったのでしょうね
高校の頃でしたがファンは多かったです。
右翼的なところ私は好きではないのですが名作はありましたよね

by きよたん (2015-11-21 21:29) 

lequiche

するどい指摘ですね。
ただ、三島自身も題材・テーマが底をついてしまった
と思っていたかもしれないですけれど、
それは間違っていたと思いますし、そのことが残念です。
「憂国」の感想も読ませていただきましたが、
ぼんぼちさんの三島に対する視点がよくわかって
大変面白かったです。
私が好きなのは「橋づくし」のような作品ですが、
凡百の小説にはない、プルーストの初期作品のような
香気があると思います。
by lequiche (2015-11-21 22:40) 

majyo

私も三島を記事にしましたが、それは単に
あの日近くにいて事件に遭遇したからです。
本好きでしたからショックは受けましたが
あの頃はまだ、何も意味がわからなかったです
リンクされている「憂国」拝見しました
映画、観てみたいですね。
by majyo (2015-11-21 22:41) 

johncomeback

週刊誌に載っていた三島の切り落とされた
生首の写真に衝撃を受けたのを思い出しました。
by johncomeback (2015-11-22 10:47) 

seawind335

現実世界と小説の世界が彼の精神の中で交差してしまったのでしょうか?
永遠の謎ですね。
by seawind335 (2015-11-22 17:52) 

ぼんぼちぼちぼち

きよたんさん

そう、ナルシストでやしたね。
幼少期からのひ弱な身体のコンプレックスが 鍛えたことによって裏返ったのでやしょう。
後期の右翼思想そのものからしてシナリオだった・・・・・・と説くこともできやすね(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-22 20:17) 

ぼんぼちぼちぼち

lequicheさん

あっしの「憂国」の感想 読んでくださったのでやすね。恐縮でやす・ぺこりっ
あの作品を観たことによって バランスとエネルギーを考え直すよい機会となりやした。
「橋づくし」お好きでやすか。
だいぶ前に読んだきりなので も一度読んでみようと思いやす。
あっしは戯曲集「近代能楽集」が好きだったりしやす。
そう、もっと別の位置から自身を俯瞰していたら、三島は、また別のタイプの作品が書けたでやしょうし 自ら命を了えることもなかったかも知れないでやすね(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-22 20:29) 

ぼんぼちぼちぼち

majyo さん

えっ!?あの日 近くにいて事件に遭遇されたのでやすか!
市ケ谷におられたということでやすね。
すごい騒ぎだったと聞いてやす。

映画「憂国」の感想、読んでくださったのでやすね。恐縮でやす。
大きなレンタルビデオ屋さんにはあると思いやす。
色んな意味で度肝を抜かれやす。
是非 ご覧になってみてくださいでやす(◎o◎)b


by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-22 20:41) 

ぼんぼちぼちぼち

johncomeback さん

介錯された首、リアルタイムに週刊誌でご覧になったのでやすね。
あっしは何年か前に ネットにあがってた画像で初めて見やした。
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-22 20:44) 

ぼんぼちぼちぼち

seawind335さん

小説の題材やテーマがなくなってしまったとか せっかく鍛えた肉体が老いてゆくのに耐えられないから などと吐くのが嫌だったから
あのような最も美しくて格好のつく理由付けをして死んでいったのだと
あっしは思ってやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-22 20:49) 

KOME

学生時代良く読みました。
最後を思ったシナリオ通りにとげられて、ご本人はある意味格好がついたかもです。
今の作家だったら、とんでも発言tweet集とかで、「NAVERまとめ」で笑いのネタにされるくらいでしょうか。
by KOME (2015-11-22 21:37) 

とし@黒猫

コメントをいただきましてありがとうございました。
ちまちまと、スプレーチョコで、顔を描いているのです。
by とし@黒猫 (2015-11-22 23:02) 

セイミー

思い出します 悲壮な最期でしたね
by セイミー (2015-11-23 10:13) 

月夜のうずのしゅげ

石笛に楽器としても興味があるので
「英霊の聲」の中に書かれている
石笛についての所は
何度も読み試してみました。
by 月夜のうずのしゅげ (2015-11-23 14:14) 

Take-Zee

こんばんは!
こんな事件もありましたね~
とってもショッキングな出来事でした。

by Take-Zee (2015-11-23 16:50) 

sana

前の記事も拝読しました。
そういう映画だったんですか! 知らなかった‥
好きとかファンとかいうのとはちょっと違うけど、天才だからしょうがない、みたいな。
三島由紀夫は本気で核戦争が起こると思っていてビックリしたというようなことを阿部公房さんが確か書いておられました。
本人は演じるというつもりではなかったのでは‥
自己表現欲求が最後にああいう形に行き着いたのかなと思います。
政治というよりは美学という印象なので、はたから見ればシナリオを演じきったとも言えるでしょうけどね。
by sana (2015-11-23 18:37) 

ぼんぼちぼちぼち

KOMEさん

そう、ご本人としては本望だったのではないかと思いやす。
お母さまが、あの顛末に関して「本人のやりたいようにやったのです」と仰ってたとか。
現代(いま)だったらネットで書かれ放題でやしょうね。
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-23 20:59) 

NONNONオヤジ

三島由紀夫があの事件を起こしたとき、ぼくはまだ中学生で、
詳しい成り行きは知りませんが、「HARAKIRI」という単語は
フランスの雑誌の名前にまでなっちゃいましたね……。
でも三島の文学作品は好きで、20代の頃にずいぶん読みました。
ちなみに、三島の生首の写真は当時の新聞にも掲載されたようですね。

by NONNONオヤジ (2015-11-23 21:00) 

ぼんぼちぼちぼち

とし@黒猫 さん

食べ物で顔を描くのって楽しいでやすよね。
以前カフェでフライドポテトを頼んだら、ケチャップとマスタードでスマイルが描いてあって
あっしの顔もスマイルになっちまったことがありやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-23 21:02) 

ぼんぼちぼちぼち

セイミーさん

セイミーさんはリアルタイムではっきりと認識がおありなのでやすね。
あっしはリアルタイムではまだ小さくて「有名な作家さんがお腹を切って死んじゃった」としか解らなかったのでやすが
世間は騒然となったようでやすね。
ワープできたら その時空に行って状況を体感したいでやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-23 21:06) 

ぼんぼちぼちぼち

月夜のうずのしゅげ さん

あぁなるほど、石笛について。
あっしも今一度読み返してみようと思いやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-23 21:08) 

ぼんぼちぼちぼち

Take-Zeeさん

激動の昭和というような特集番組では、必ず、学生運動と前後して放映される事件でやすね。
永久に昭和史に遺り続ける鮮烈な事件でやすね。
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-23 21:13) 

ぼんぼちぼちぼち

sanaさん

三島本人も、最期はもぅ演じるという意識はなかったと思いやすよ。
誰にも演じていることを悟られたくなかったと思うし、本人も自意識では演じているのではなく そう昇華していったと。
そのくらい入り込んでいたと思いやすね。
スタニスラフスキーシステムのメソッドで役者が役に入り込むみたいに ね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-23 21:24) 

ぼんぼちぼちぼち

NONNONオヤジ さん

フランスの雑誌の名前に・・・
そうなのでやすか、三島は海外でも高く評価されてやしたもんね。
生首、新聞にも出たのでやすか。
うむ、現代(いま)だったら載せないでやしょうね。
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-23 21:33) 

sig

「創造」には自分をとことん追い込まなければ、ってとこ、ありますよね。そして自分のシナリオを描き、そのシナリオを演じ切ってしまわなければ、と追い込まれる。ナルシストで自信家の特徴で、それは本人だけの特有の美学で成就されるものなのでしょうね。
by sig (2015-11-23 21:54) 

天神堂牛笛

こんばんは。
私は時代が時代であったがためにジェンダーで悩んでいた気がします。
三島作品を読むと女性的な部分と自分は男であるとわざと強調している部分が感じられるのは私だけでしょうか。
by 天神堂牛笛 (2015-11-23 22:54) 

ぼんぼちぼちぼち

sig さん

ナルシストで自信家の三島は、自分が下がるとか薄れてゆくとか妥協するとかいうことが許せなかったのでやしょうね。
だから、あのようなシナリオを書き演じ切ったのでやしょうね。
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-24 18:55) 

ぼんぼちぼちぼち

天神堂牛笛 さん

そう、三島は同性愛者であったようでやすね。
今なら それも一つの個性として売りになると思いやすが
仰るとおり、時代が時代でやしたもんね。
汚穢屋の股間に引き寄せられた一文なども それを裏付けてやすね(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-24 19:04) 

ojioji

楯の会の活動は文学者三島の晩年のほんの気まぐれの気がしております。根底には自分の肉体へのコンプレックスが幼少の頃から大きかったように感じます。そこからあの豊穣な日本語の文章が生み出されたような。猪瀬直樹氏の著作を読んで、頷けるところが多かったです。
彼の首が転がった写真を見たのは中1の美術の時間で、その意味を知ったのは何年も後でした。自衛隊幹部を殺害とかしないで、介錯させての割腹自殺、厳粛な気持ちになります。
by ojioji (2015-11-25 00:18) 

ぼんぼちぼちぼち

ojiojiさん

自身の肉体へのコンプレックスは相当強かったようでやすね。
それで、鍛えて逞しくなったら やたら露出高くなりやしたね。
映画に出たり写真集やプロマイド作ったり・・・。


by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-25 19:37) 

ちゅんちゅんちゅん

こんばんは!
誰よりも自分を愛した人ですね
・・・というか 自分以外興味がなかったのかも・・・
壮絶で 極端で
今のこの世に居たらどうなんだろうと時々思います(^^)
久しぶりに読み返してみます!
by ちゅんちゅんちゅん (2015-11-25 20:46) 

風太郎

あの時は市ヶ谷自衛隊(現防衛庁)の傍の曙橋の交差点でニュースを聞きました。運転していた部下は自衛隊をやめわが社に就職して間もない頃で、「えっ」といい暫く声が出ませんでした。
三島由紀夫はフリーパスでよく訪れ、日本のあり方について演説をしていたそうです。
すさまじい事件でした。
by 風太郎 (2015-11-25 21:54) 

ぼんぼちぼちぼち

ちゅんちゅんちゅんさん

そうそう、自分以外に興味がなかった・・・そう思いやす。
なので彼の右翼思想は、畢竟 自分を美化するための装置だったと思いやすね。
老いて枯れた三島・・・・風貌も発言も作品も、生きていたらどんなふうになっていたか興味ありやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-26 20:00) 

ぼんぼちぼちぼち

風太郎 さん

風太郎さんは、当時、物理的にも人脈的にも とても近いところにおられたのでやすね。
なので多くの一般の人よりも 壮絶さを近くに感じられたのでやしょうね。

by ぼんぼちぼちぼち (2015-11-26 20:06) 

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