映画「π(パイ)」  [感想文]

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私はアメリカ映画を そう幾多観てきているほうではありませんが、今まで観たアメリカ映画の中で何が一番好きですか? と問われれば、一も二もなく この「π(パイ)」を挙げます。

「π(パイ)」----
1998年、サンダンス映画祭をきっかけに世界中を圧巻した 徹底的な計算高さによるアート系劇映画の大傑作です。
監督は、ユダヤ系アメリカ人 ダーレン・アロノフスキー。

シノプシスは、一人の天才ユダヤ人数学者が 「世界の定理は全て数字で解明できる」 と、自然界のあらゆる所に存在するπ(パイ)の法則にとりつかれ、狂信的にその螺旋に入り込み、当宗教上 最も重要な言葉に置き換えられる216桁の数字を探し続ける古代ユダヤ教に挑戦状を叩きつけ、果ては 自己崩壊する、というものですが、我々観客が息を飲まずにおれないのは、何といっても、その緻密に計算され尽くした映像美です。

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日本人の多くは そこはかとなく曖昧に淡い多神教なので、作品の力点となっている絶対的な一神教のユダヤ教について、観進むうちに「あぁ、そうなのか」と輪郭は認識できるものの 内側から理解するのは難しいのですが、しかし、その点は難解であっても、作品創りに注がれている圧倒的なエネルギーや 妥協を許さないワンショットワンショットの構図 無彩色のコントラストのバランス 時間軸に於いてのリズム・緩急の付け方には、感嘆の溜息を深く吐き 舌を巻かずにはおれないものがあります。

ニュアンス的にいうと、かなりドイツ映画っぽい雰囲気の作品です。
私はもし、何の前情報もなく観たら、ドイツに生まれ育ったユダヤ人がアメリカを舞台として創ったものだろう と 思うと思います。
又、この監督は、塚本晋也監督に大きな影響を受けている とのことです。
そこは、一目瞭然です。
塚本監督の作品も ちょっとドイツっぽい匂いがあり、その辺りの観点から鑑賞してみるのも興味をそそられる アート系世界劇映画史に遺り続ける大傑作です。 

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コメント 20

koume

ぼんぼちぼちぼちさんが大傑作といわれる映画を
拝見したくなりました。
私には難しそうですけれど、レンタルしてきたいと思います。
by koume (2012-11-05 12:15) 

hypo

「π」は見た事有りませんが、塚本晋也監督の「鉄男」は好きで何回も見ました、主演した田口トロヲさんも「ばちかぶり」の頃から好きでしたので思い入れの深い映画です。「π」見てみたいですね~!
by hypo (2012-11-05 19:06) 

さきしなのてるりん

ドイツっぽいってひどく鉛色を想像するのはヒトラーのせい?
by さきしなのてるりん (2012-11-05 20:32) 

ぼんぼちぼちぼち

koumeさん

大きなレンタル屋さんにはあると思いやす。
黒地に「π」と書かれたジャケットでやす(◎o◎)b
やはり、古代ユダヤ教についての説明の件りが、あっしら日本人には 事前の知識がないだけに ちぃと難しいでやす。
台詞が早くて 解ろうとする前に どんどん先にいっちゃうんでやす。
あっしは、劇場にて字幕を追いながら観たときは しっかり把握できずに
DVDを購入し、日本語音声を流しながら日本語字幕を読み、「あぁ、そうなのか」と ようやっと解った次第でやす。
理屈で解っても「一神教の神に歯向かう」という感覚は、多くの日本人には ピンと来ないものがありやすが。

でも、画創りがほんとに秀逸で、写真集を観る感覚で観られても 充分愉しめる・・・・と思いやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2012-11-05 21:04) 

ぼんぼちぼちぼち

hypoさん

「鉄男」がお好きなら、この作品も嗜好に合うのではないかと思いやす(◎o◎)b
あっしも「鉄男」をはじめ、「鉄男Ⅱ」「東京フィスト」「双生児」など
「六月の蛇」以前の時代の、インディーズや半商業的スタンスで 
予算はないけれど拘りを貫ぬけていた頃の塚本作品が 震えるほど好きでやす。

田口トモロヲさん、多才なかたでやすね。
初監督作品「アイデン&ティティ」も かなり好きでやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2012-11-05 21:19) 

ぼんぼちぼちぼち

さきしなのてるりんさん

鉛色・・・・そのイメージで遠からず・・・だと思いやす。
内容的にも、強烈にうぅぅぅぅっっっっって内向する方向性でやす。

やっぱ、ドイツというとヒットラーがまっ先に浮かびやすね。
ぼんぼちは、先日、神保町の古本まつりにて 壁崩壊後のドイツについて書かれた本を買ったので
明日あたりから じっくり読む予定でやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2012-11-05 21:30) 

ackylacky

どんな映画化分からなかったので検索してみたらニコ動で一部見れました。ドイツテクノと関係があるのかアンダーグランドのPV似てる気がします。
カバラの数秘学は何度読んでもちんぷんかんぷん。でも熱心に研究、計算を続けている人がいるようなので、何かしらの快感があるのでしょうね。
by ackylacky (2012-11-05 21:41) 

ぼんぼちぼちぼち

ackylackyさん

あっしはそのPVのほうは観てないんでやすが
メンタリティーというか気質というか、この監督の表現の根底に流れているもの すごくドイツっぽいでやすね。

カバラの数秘学、劇中でも説明されやすが、しかとは解らないでやすね・・・・(◎o◎:
by ぼんぼちぼちぼち (2012-11-06 11:00) 

beny

 数学というか数字は答えが一つしかないというところが凄いというか怖いと思います。 今思うと算数、数学は一番重要な科目だと思われます。
by beny (2012-11-06 19:49) 

響(きょう)

だいぶまえみ観て、強烈な印象が残っています。
by 響(きょう) (2012-11-07 00:14) 

さうざんバー

ご訪問ありがとうございました(^^)v
円周率のことですよね??(^^;)無知ですいません(^^;)でも、ブログ読んで、凄く興味を惹かれました(^^)ビデオ屋さんで、探してみようと思います(^^)v
by さうざんバー (2012-11-07 14:35) 

ぼんぼちぼちぼち

benyさん

へい、あっしも 数学って重要だと思いやす。
証明問題を解くにあたっての考え方とかって、さまざまなことに活きてるように思いやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2012-11-07 18:28) 

ぼんぼちぼちぼち

響(きょう)さん

おぉ! 観られやしたか!!
やっぱ強烈でやすよね((◎o◎))
あっしは、劇場では、初映時はうっかり見逃してしまい
再映時に 早稲田のほうの小さな劇場で二度 観やした。
初映時には、都内のあちこちの道路に 日本公開スタッフによりゲリラで「π」と書かれたりと 
そういう観点からも強烈でやした(◎o◎)b

by ぼんぼちぼちぼち (2012-11-07 18:36) 

ぼんぼちぼちぼち

さうざんバーさん

へい、円周率のことでやす(◎o◎)b
劇中に、「日本人は 囲碁の面を宇宙に例え・・・」などという台詞とともに碁盤が出てきたり
イカロスと名付けられた黒出目金が出てきたりと
我々日本人がふっと近しさを感じるところもありやす。

お時間あったら、探されてみてくださいでやす(◎o◎)/
by ぼんぼちぼちぼち (2012-11-07 18:45) 

めい

πと聞くと
学生時代数学で悩んでいた頃を思い出してしまいます
でも映画となると面白そうです
映画はどのジャンルも好きなので
チャンスがあったらDVDをレンタルしてみたいです
by めい (2012-11-07 23:18) 

ぼんぼちぼちぼち

めいさん

天才数学者が内なる狂気にハマリこんでゆく様を、我々観客は客観視する感じでやす。
数学に興味のない人も(事実、あっしがバリバリ文系人間でやすし~) 白黒のコントラストが強くつけられたテンポのある映像は秀逸なので、どのジャンルもお好きなら チャンスがあったら是非(◎o◎)/
by ぼんぼちぼちぼち (2012-11-08 09:38) 

ta74382

うわぁ、これずいぶん前に見逃したきりなんだよなぁ。
週末ツタヤで探してみます。
by ta74382 (2012-11-09 02:58) 

ぼんぼちぼちぼち

ta74382さん

是非~
黒地に白で「π」とだけ書かれた背表紙でやす(◎o◎)b
DVDだと日本語吹き替えも選択できるので それで
あっしは劇場で観たときより ぐっと解り易さ度があがりやした。
とにかく画創りが秀逸でやす!
by ぼんぼちぼちぼち (2012-11-09 11:03) 

ta74382

推薦してくださったこの映画、先日よったツタヤにありました。借りました。そんで観ました。
98年公開という事で、当時僕はこの手のアート系映画がずいぶん好きだった筈なのに、なぜ見逃したのか惜しまれるドンピシャの映画でした。
主人公の部屋にあるおびただしい数のモニターやにょきにょき生えてる配線だけで、『これ好き!』と思いました。

ダーレン・アロノフスキーってこういう人だったんだ。
最近じゃ『レスラー』や『ブラックスワン』とかで大物になってるけど、なんかクリス・ノーランとかの履歴を思い出しちゃいました。


by ta74382 (2012-11-19 00:43) 

ぼんぼちぼちぼち

ta74382さん

おぉ! 観られやしたか!
ドンピシャでよかったでやす。
主人公の部屋の渇いた質感よかったでやすよね(◎o◎)b

ダーレン・アロノフスキー、これでハマったので、あっしは二作目のも期待して劇場に観に行ったら、完全に商業にゆだねた作品で
それ以降 観なくなりやした。
「哀しいな・・・」と。
同じことを 「六月の蛇」以降の塚本晋也にも思いやした。
非常に高い評価を受けてしまうと、商業に取り込まれて身動きできなくなる事情はよく理解できるので「作家自身がダメになった」とは決して思いやせんが「哀しいな・・・」と。
勿論、商業映画全般を否定しているのではなく
非商業向きの監督が商業に否応なく取り込まれると、川の魚が海で泳がされるような無理を感じざるをえやせん。
元々商業向きで商業撮りたい監督は他にいくらもおられるだろうに・・・と思ってしまいやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2012-11-19 01:52) 

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