あっしが隕石だったころ

大気圏をくぐり抜ける一刹那　意識を失ったあっしは、再び　内なるまなこをカッ！と見開き、目前のちっぽけな青き星に　ぐんぐん突進してゆきやした。
--------これは、あっしが前世で　隕石だったころのお話でやす。
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン！！！！！！
あっしは　星深くにめり込み、星の地殻は津波のようにめくれ、地殻津波は　今しがたあっしが通過した大気圏を突き破り、再度　地上に　あまたの岩石の矢と降りささりやす。
星は、あっしの落下エネルギーのもたらした灼熱の大気におおわれ、豊かな星中の水分は沸騰し　みる間に一滴残らず干上がり、そして　星全体は　メラメラと炎に包まれ　ありとあらゆる生命体は焼け溶け、星そのものが　マグマさながらに真っ赤にドロドロと渦巻きやす。
その後。
星は冷え、雨が降り続き------
青き星の歴史は　もっかいゼロから始められるのでやす。

星々またたく宇宙空間を、隕石以前のあっしは　こう　我が内側にシュミレーションしながら飛んでおりやした。
遥か先にポツンと見える　笑ってしまうくらいちっぽけな青い星に向かって。
これから必然的に起こる　ちっぽけ星の災難を　ちぃとだけ憂いてさし上げながら。
しかし、ここで遭ったが百光年目、あっしに選ばれたからには　もう覚悟を決めるしかありやせん。
あっしは、そんじょそこいらにゴマンと降るチリのような隕石とは　わけが違うのでやすから。
あっしこそが、隕石というものの破壊力の何たるかを知らしめることのできる　類い稀なる　宇宙より選ばれし存在なのでやす。
あっしは、己れの飛ぶ意志のみならず、何か大きな見えざる力によっても　かの星に引き寄せられてゆくのを、黒に近い灰色でちょっとゴツゴツしたこの身すべてに感じていやした。
あっしがあの星の歴史を塗り替えるのは、運命・・・否、宇宙より与えられた　使命なのでやす！
あっしが　あの星の歴史を変えねばならないのでやす！！
星の新たな歴史を　創世させねばならないのでやす！！！

そうこう思ううちにも、ちっぽけ青星は　ぐんぐん近づいてきやした。
想定してたほどちっぽけじゃなさそうで　ぶつかり甲斐があるな！　と　ふふんと笑いやした。
なかなか手ごたえがありそうで楽しめるな！　と　うなづきやした。
ちっぽけでも・・・・ない　かな・・・・と　我が内の首を　ちと傾がせやした。
けど、この　あっしにかかったら・・・・
大気圏突入ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー！！！！！
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

意識を取り戻したあっしは、きょろきょろと辺りを見まわしやした。
あっしの周囲には、あっしと同じように　黒に近い灰色でちょっとゴツゴツした　しかも大きさまであっしと同じくらいのが　びっしり　諦めたような面持ちで　どんよりと　うち沈んでいやす。
-----------・・・・・・・・・・・・・・あれ？
視線を　ぐっと上方に向けると------
何か　赤くてとんがった三角が　いくつもそびえ立ち、黒と黄のしましまの横に長いものが　あっしらを囲んでやす。
------------・・・・・・・は？
「砂利　敷き終わっだなーーーー、んなら　いーーーぐでーーーーー」
-----------・・・えっっっっ？！
真っ黒なドロリとしたものが、熱とへんな匂いを発しながら、あっしらの上に　ドローーーと　かぶさりやした。
ド・ド・ド・ド・ド・ドドドドドドドドドドドドドドド・・・・・・
何か面状のもので押さえ叩かれ、あっしは　元からここにいたあっしそっくりな奴らと一緒くたに、完全に　真っ黒なドロリに覆いつくされやした。
---------・・・・・・な、な、なーーーーんだ、あっしのシュミレーションしてたより　想定外に　遥かに　大爆笑しちまうほどちっぽけな星だったんでやすなぁ。　こんなんじゃ、あっしのエネルギーをちぃとでも使うの　勿体無いでやすよ、馬鹿馬鹿しい・・・は・は・は・は・は・はははははははははは・・・・・
「よっしゃーーー、冷えるまんで　メシ　行ーーぐかーーー」
「俺、マーボラーメン食いてぇ」
「自分、カツカレーがいいっす」
「んなら　昨日と同じ　おかめ食堂だなやぁ」
----------ははははははははははは・・・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・
プァップァー
チリンチリン
ブッブッブーーー

コメント 31

隕石と砂利石・・・いつもながら深いです！
by ラブスコール (2011-12-05 06:37) 

マーボラーメンというのを初めて知りました。
食べたいです・・・
by こはく (2011-12-05 07:19) 

あっしが○○だったころ
いつも面白いですねぇ～(^.^)
by 銀 (2011-12-05 07:26) 

面白いです～　＾０＾／
口先だけだった隕石のプライドの高さと現実がなんともおかしく哀しいですね＞
by よいこ (2011-12-05 12:10) 

粉砕されちゃったの＠＠
by サンダーソニア (2011-12-05 17:18) 

今回はこのシリーズの中でもひときわ切なく感じました。
この隕石さんは、これから長い長い時間を、
アスファルトの下でどんな夢を見て過ごすのでしょう。
by ぴぃ (2011-12-05 18:32) 

お大事に・・・ゆっくり休んで下さいね。-_-;

by macky (2011-12-05 20:45) 

ただただおかしい！
by さきしなのてるりん (2011-12-05 20:47) 

本来人間は皆平等☆上も下も無い・・・ということですよね◎
政治家諸君！！
by くーぺ (2011-12-05 21:20) 

前世シリーズ私も大好きです。
自分が何者か知った後の切なさが何とも言えず物悲しいですね。
by ＰＡＴＡ (2011-12-05 21:39) 

夢破れ、残骸は世間の中に埋もれてしまうのですね。
by さる１号 (2011-12-05 21:55) 

nise　ありがとうございます
by ra35 (2011-12-05 23:22) 

みなさん

みなさん　こんばんはでやす(◎o◎)／
今回の主人公は、あっしが鼻くそを飛ばしたくなるような　最も滑稽だと感じている像でやす。
なので、話の展開が単純なだけに　シュミレーションと現実の落差を如何に大きくできるかに　あっしなりに心を砕きやした。

いつもながら　みなさんからのコメントを読ませていただくことで　様々な発見があるのでやすが
つくづく　優しいかた多いでやすね。
あっしは自分に厳しいだけでなく他人にも厳しいので
こーいう人間に遭遇すると、面白半分　心理構造の追究半分に
ねちねちねちねち「何故、何の根拠があってそう思うのか」と追いつめやす。

で、観察してると、こういうタイプの者達に　根拠はないんでやすね。
「ただ　なんとなく　漠然と　自分って凄い！」って思いこめちゃってるんでやすね。
・・・・不思議でやす。

したがって、今回の小説にも「何故　この隕石は自身を凄い存在だと自覚してしまったのか」という理由は描かれておりやせん。
あっしが一番それを知りたい。

・・・まあ、何らかの理由を拾い上げるとしたら
理論的に考える　ということをしないタイプだから　そう思える　ということなのでやしょうなぁ・・・
と考え、「もっかい」とか「へんな匂い」とか　理論的思考の者は　およそ使わないであろう言葉が　
一見　たいそうなことを言っている中にも　ぽろぽろ出てしまうことで
その正体が垣間見えるようにしよう・・・と。

マーボラーメン、旨いでやすよん。
逆に　本格的な中華料理屋さんにはないB級グルメメニューでやすね(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2011-12-06 00:08) 

自分ではすごい存在と思っていて
ちっぽけな存在と気づいたとき
強がりをいうしかないですね（＾＾；
by 藤並　海 (2011-12-06 01:05) 

ちっぽけな星を破壊するはずが、
自分が粉砕されてアスファルトの下。。。
by まほ (2011-12-06 02:47) 

こんにちは＾＾　昨日は飛ばし読みだったので
今改めて読ませて頂きました
ぼちさんの寓話…　いつもながら深いです・・・　
可笑しくて　儚くて　切ない　
この隕石は　哀れな人間そのものですね
by キャスリーン・ケリー (2011-12-06 11:59) 

恐竜たちを滅ぼしたのは、前世の・・かと思ったら！
でも、アリンコの３匹くらいは絶滅させたのかもしれませんね・・
そう思えば、大した存在になれそうです^^;
by ｒａｎｔａｎ－ｎｙａ (2011-12-06 13:19) 

毎回、皆さんのコメント読んで物語の深さに気付きます。
大気圏で燃え尽きず、地面まで到達できただけでもすごい！…と思ったらいいのかなぁ（＾＾；
by きょん (2011-12-06 18:51) 

いつもながら面白いですね。
最後の日常が雰囲気出していていい感じです。
by 土芽 (2011-12-06 19:52) 

こんなものはいかがでしょうか？
黒くないですけどね。
http://www.aquarius-stage.com/content/stone/moldavite.html
by サンダーソニア (2011-12-06 20:36) 

みなさん

毎回、あっしが自己満足で書いてるものに　たくさんのコメント　ありがとでやすっ・ぺこりっ。
2011年　「あっしが○○だったころ」シリーズ、
「ミミズ」　「ボウフラ」　「乾燥ワカメ」　「マッチの炎」　「ケヤキの木」　「羽毛」　「育毛剤」　「ドロップ」　「モンシロチョウ」　そして　この「隕石」と　10作品をお送りしやしたが、今回で　今年はおしまいでやす。

年頭には　12作品お送りすると宣言しやしたが
地震があったために　3月下旬に予定していた「あっしがマッチの炎だったころ」は、内容的にもその時期に公開するのは　ちと不適切だと判断し
「乾燥ワカメ」の次の月に発表させていただきやした。

で、そしたら11作品というのもなんだかキリが悪いので
どこかの月で二つ公開するか　あるいは　どこかで　「あっしがシリーズ」なしの月をつくって10作品にするか　ちと考え
結果、後者を選びやした。
なので11月は　小説公開なしの月でやす。

勝手に　あっしの自由意思で思うところ・・・
やっぱ、来年も　「あっしの前世シリーズ」公開しよ~かな~と思いやす。
理由は、書きたいことが　いっぱいあるからでやす。
「あっしが雪玉だったころ」とか「あっしがウグイス」だったころとか・・・
世の中の人間を　しらーーーっと観察してて　こーいう風に寓話にしてみたいなーと思うことがあとからあとから湧いてくるからでやす。

なので来年は、月一ペースとは限りやせんが、やっぱ勝手に　前世を思い出すという形で吐露しやす(◎o◎)b

サンダーソニア さん　おぉ！　参考になる資料　ありがとでやすっ。
個人的には、チェコスロバキアってとこも　かなり気になりやす(◎o◎)b


by ぼんぼちぼちぼち (2011-12-06 23:20) 

ビー玉の青色がとっても素敵ですね・・・ビー玉の光大好きです。
こんな前世もいいなぁ・・・
by ちゃーちゃん (2011-12-07 14:33) 

仕事中にも関わらず　現実逃避でブログを見てます(笑)

この　隕石　すごい結末ですね・・・　隕石には悪いけど　笑えました。

by めいちゃん (2011-12-07 15:47) 

面白かったです。
すごく壮大な話かと思ったら、最後はおかめ食堂で終わるなんて。
隕石さんも砂利扱いされちゃいましたね（笑）
by リンさん (2011-12-07 16:28) 

ちゃーちゃん さん

画像に着目していただきありがとでやす・ぺこりっ。
あっしもビー玉大好きで、グラスに入れて飾ってやす。
で、今回は　それを撮ったものでやす。
ちぃとだけコントラストと青みを強く加工しやした(◎o◎)b

こーいう前世も　いいでやすか。
あっしは　こんな恥ずかしいの嫌でやす。(って、あっしの前世という設定で書いてるくせにでやすね)
ちっぽけならちっぽけでいいから、ちっぽけであるということ自体は恥ずべきでも何でもないので
己の存在がどんなものであるかは　俯瞰的に認識していたいでやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2011-12-07 21:45) 

めいちゃん さん

笑っていただけたとは　何よりでやすっ　本望でやすっ・ぺこりっ。
あっしは　こーいう奴が一番滑稽だと思っているので
小説にせずにはおれない　内なるエネルギーが渦巻いてやしたf(◎o◎)

by ぼんぼちぼちぼち (2011-12-07 21:55) 

リンさん さん

ありがとでやす・ぺこりっ。
展開が単純なだけに、草原や砂漠にぽつんと落下して　誰れにも発見されないで----という結末はありきたりなので
いっそ、通常つながらないであろう極めて庶民的日常的な時空に落下させやした。
決め台詞にもあたる食堂名は何がいいかな・・・と　ちと考え
やっぱ　おかめ　が　最も隕石のイメージからかけ離れていていいかな　と(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2011-12-07 22:07) 

シリーズなんですね。
初めて読んでしまいました♪
ドラマチックやなぁ。
by さくらこ (2011-12-08 01:33) 

おかめ食堂というのを見て、こちらの方にある
OKAME亭というお店を思い出しました。
こちらのお店、元はおかめ食堂という名前
だったんだそうです。
洋食屋さんなんですけどね。
by じゅりあん (2011-12-08 02:40) 

さくらこさん

へい、「あっしが○○だったころ」という前世シリーズなんでやす(◎o◎)b
今年は10話公開しやした。
で、来年は　ど~しよ~かな~と考え、やっぱ書きたいことがいっぱぁいあるので　勝手に　このシリーズ展開しやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2011-12-08 21:47) 

じゅりあんさん

洋食屋さん・・・千切りキャベツに皮をぴろっとさせたトマト
そして　赤ーいスパゲティの添え物は必須でやすね。
あぁん・・・食べたくなってきやしたo(◎o◎)o
by ぼんぼちぼちぼち (2011-12-08 21:55)