あっしがケヤキの木だったころ [小説]
サワサワサワ・・・
キラキラキラ・・・
チュンチュンチュンチュン・・・
これは、あっしが前世で ケヤキの木だったころのお話でやす。
こんもりと広がる野っ原のまん中に立つ ケヤキの巨木だったころのお話でやす。
あっしは、くる日もくる日も 野っ原の小動物------小鳥やウサギやリスやモグラやトカゲ達と 穏やかに暮らしておりやした。
動物達は みなそれぞれに あっしを慕ってくれ、あっしもまた いっしんに生きる小さな生命達を 愛おしく思ってやした。
あっしの若葉が、色濃く張りを持ちはじめた ある日-------。
「ケヤキさんケヤキさん」
あっしの背後の根っこに近いあたりで 声がしやした。
小さな小さな鈴の鳴るような、あっしの枝枝の間を毎日飛び走り戯れてくれている リスの声でやした。
「落っこっちまったんだよ、枝をつかみそこねてさ。 ひょうしに右足を折っちまったみたいで動けないんだよ。 ケヤキさんの背中側のウロの中だよ。・・・・・・ケヤキさんに助けを求めてもいいかい?」
それは大変でやす!
あっしは みぢんも迷わず答えやした。
「勿論でやす!」
「ほんとうかい? 信じて待っててもいいのかい?!」
「勿論でやすとも!! 動くとよけいに痛いでやすから そのまま待っていてくださいでやす。 今すぐ枝先ですくいやすよ」
言葉も終えぬうちに、あっしは ぐぅぅぅぅぅっっっと枝をねじりやした。
真後ろまでねじりやした。
そして、ずぅぅぅぅっっっと枝先を下げやした。
息もつかずに下げやした。
もうちょっとで あっしのかかとあたりのウロに届きやす!
--------コロン・・・
あっしの枝先の先っちょが、何か とても軽いものにあたりやした。
・・・・?
覗きこんでみやした。
-------二つの丸い穴の開いた 小さな小さな 雫型の白いものでやした。
積み重なったあっしの茶色い葉っぱを フゥ!と吹きとばすと--------
ウロの中には、右足の反対側に折れ曲がった 飛び走る格好そのままの リスの真っ白な骨があるばかりでやした。
あっしが枝を伸べ下ろすまでの 十三と半 季節がめぐった ほんの ほんのわずかな間に・・・・・・・・・・・・・・?!
ひゅゅゅゅゅゅゅぅぅぅぅぅぅぅぅ----------------------------------
あっしの枝枝の間を かわいた北風が吹き抜け、あっしの身体じゅうの葉っぱを ザザ--------------------ッと奪い去ってゆきやした。
キラキラキラ・・・
チュンチュンチュンチュン・・・
これは、あっしが前世で ケヤキの木だったころのお話でやす。
こんもりと広がる野っ原のまん中に立つ ケヤキの巨木だったころのお話でやす。
あっしは、くる日もくる日も 野っ原の小動物------小鳥やウサギやリスやモグラやトカゲ達と 穏やかに暮らしておりやした。
動物達は みなそれぞれに あっしを慕ってくれ、あっしもまた いっしんに生きる小さな生命達を 愛おしく思ってやした。
あっしの若葉が、色濃く張りを持ちはじめた ある日-------。
「ケヤキさんケヤキさん」
あっしの背後の根っこに近いあたりで 声がしやした。
小さな小さな鈴の鳴るような、あっしの枝枝の間を毎日飛び走り戯れてくれている リスの声でやした。
「落っこっちまったんだよ、枝をつかみそこねてさ。 ひょうしに右足を折っちまったみたいで動けないんだよ。 ケヤキさんの背中側のウロの中だよ。・・・・・・ケヤキさんに助けを求めてもいいかい?」
それは大変でやす!
あっしは みぢんも迷わず答えやした。
「勿論でやす!」
「ほんとうかい? 信じて待っててもいいのかい?!」
「勿論でやすとも!! 動くとよけいに痛いでやすから そのまま待っていてくださいでやす。 今すぐ枝先ですくいやすよ」
言葉も終えぬうちに、あっしは ぐぅぅぅぅぅっっっと枝をねじりやした。
真後ろまでねじりやした。
そして、ずぅぅぅぅっっっと枝先を下げやした。
息もつかずに下げやした。
もうちょっとで あっしのかかとあたりのウロに届きやす!
--------コロン・・・
あっしの枝先の先っちょが、何か とても軽いものにあたりやした。
・・・・?
覗きこんでみやした。
-------二つの丸い穴の開いた 小さな小さな 雫型の白いものでやした。
積み重なったあっしの茶色い葉っぱを フゥ!と吹きとばすと--------
ウロの中には、右足の反対側に折れ曲がった 飛び走る格好そのままの リスの真っ白な骨があるばかりでやした。
あっしが枝を伸べ下ろすまでの 十三と半 季節がめぐった ほんの ほんのわずかな間に・・・・・・・・・・・・・・?!
ひゅゅゅゅゅゅゅぅぅぅぅぅぅぅぅ----------------------------------
あっしの枝枝の間を かわいた北風が吹き抜け、あっしの身体じゅうの葉っぱを ザザ--------------------ッと奪い去ってゆきやした。
タグ:欅
うう、なんとも切ないです。。。
その思いは、きっと届いていて欲しい!
by ラブスコール (2011-06-26 10:11)
待ってたリスさんの気持ちもうれしいし、
ケヤキさんの気持ちもうれしいです。
そういう世界になったらいいのになあ。
ところで、不思議な写真はどのようにして撮られたのですか?
by elm (2011-06-26 10:38)
ご訪問ありがとうございました。
これからも宜しくお願いします。
by カリメロ (2011-06-26 11:35)
それぞれの時間の流れが噛み合わせが違うと、いろんなことがあるもんだなあ、と思います。
by COPP(コップ) (2011-06-26 12:51)
どういう展開になっていくのかなぁと思ったら
意外でした。
意外性って、大事です。
by そらへい (2011-06-26 18:04)
時間の流れは人それぞれ……
長くもあり短くもあり。
by Rchoose19 (2011-06-26 18:52)
リスさんの時間の進み方と
ケヤキさんの時間の進み方が切ないですね
物理的には届かなかったけど
目には見えない大切な物は届いてると思いたいです
東北の被災者の方と
政府に置き換えると、もどかしさを感じないでいられませんが…
by 藤並 海 (2011-06-26 20:38)
あ、あっしがシリーズ!
…え! そうだったんだ…(驚)
今昔物語集のようです…。(浦島太郎?)
by tomomame (2011-06-26 20:43)
哀しいなあ。
悪意はどこにもだれにもないのにねえ。
by ナツパパ (2011-06-26 21:33)
切ないですね・・・。
リスの声に応えようとしたケヤキ。
ケヤキを信じて待っていたリス。
吹き付ける北風は残されたケヤキの悲しみ・・かな。
by 楓〇 (2011-06-26 22:06)
ご訪問、nice!ありがとうございました。
今回は画像は直筆でしょうか。味があり、マッチしてますねぇ~。
by hanabi (2011-06-26 22:52)
短編中の短編を読みました。
リスさんは、近づいてくる枝に向かってジャンプしようとしていたのでしょうか?
by Huck_Finn (2011-06-26 23:00)
せつないお話ですね~!
涙出そうでした。拍手!
by palette (2011-06-27 06:05)
はじめまして。
切ないですね・・・。
涙がでそうなくらい、いいお話でした。
ありがとうございます。
by Rei (2011-06-27 11:55)
みなさん
みなさん おはよーございやす。
また 梅雨らしい空に戻った 東京・杉並でやす(◎o◎)/
そう、今回のお話は、互いにまるで悪意はないのに認識の違いによって生じてしまう悲劇 を
あっしなりに描いてみやした。
リスが 飛び走る格好のまま骨になった----のは、そう、ケヤキを最期まで信じ続けて待っていた
ということであり
ラストの一段の 北風が吹き葉っぱを奪い去った----は、
ケヤキのどうしようもない悲しみでやす。
特にラストは、かなり早い段階----頭の中で大きな枠組みをこさえたときから
このように 感情を状態で表わそう と考えてやした。
今回は、時間軸で話を構成してみやしたが
色々な軸に於いて このような悲劇は 世の中にしばしば起こってしまうものでやすね。
画像は、クリスマスのイルミネーションを撮って ケータイのネガ加工したものなんでやすよん(◎o◎)b
新宿東口のアルタ前広場で。
1枚めと2枚めは ブルーの豆電球が巻いてある木で
3枚めは植え込みに網状にかぶせてある豆電球。
どれも ケータイをふりふりしながら撮りやした。
結構長いことストックしてやしたが、ビッタリの記事が生まれ
日の目を観ることが出来て良かったでやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2011-06-27 12:12)
こんにちは~
それぞれの時間をそれぞれが一生懸命尽くした気持ちが
切ないです~( ̄^ ゚̄)
by ミムラネェ (2011-06-27 14:44)
こんにちは^^)
時間は皆に平等だという言葉もありますが
それぞれの寿命によっては違いますね。。。
by rtfk (2011-06-27 15:34)
いままでのご訪問とniceありがとうございます。
いつもながら、印象に残るエッセーの数々
楽しく拝見させていただきました。
by cafelamama (2011-06-27 18:32)
何とも幻想的なお話ですね。
今まで、儚いものが多かったけど、今回は長生きでしたね。
りすさんは可哀想だけど、ケヤキさんも一生懸命だったんですね。
気持ちは届いたと思います。
by リンさん (2011-06-27 18:56)
切ない話ですね。
もし、このように木と話すことができたなら、屋久杉に話を聞きたいです。
by heroherosr (2011-06-27 20:26)
いろいろやってあげたくっても、しがらみがあってもたもたしているうちに、まにあわなくなったというこうかい。だれもがけいけんしていることかもしれませんね。
by sig (2011-06-27 20:32)
ご訪問いただきましてありがとうございます☆
なんとも独特な世界観ですね~ しばし現実を忘れる
気分にひたることができました。。。
ケヤキの木 大好きです♡
by みぐみぐ (2011-06-27 20:33)
泣けてきました。
ラスト3行が好きです。
by ふにゃいの (2011-06-27 23:08)
今晩は~直感的に宮澤賢治のような温かみを感じました。
愛犬をこの2日に亡くしたばかりで、悲嘆にくれていたところでした。
決して、ネガティブな感覚ではない自分の中にある、無欲感が、早々に愛犬のもとへ行きたがっているのです。
リスの白い骨と愛犬シュウベルトの白い骨が、今も手元にありますが、重なって、リスを包み込むケヤキの温かさに涙したピッピでした。
by ピッピ (2011-06-28 00:56)
五感をとおしてすっと入ってくる文章、内容も深くて素晴らしいですね。とても楽しく読ませていただきました。
by 風船かずら (2011-06-28 09:51)
いい話ですね..
とても癒された感じです。
以前はみんな、本や小説を読み、皆それぞれ将来に希望や期待を膨らましたものですが...
今や、そんなみじんも感じられないイヤな時代ですよね。
この小説はとても奥が深く意味深い言葉があると思います。
今、面子や欲望で私利私欲に走っている、総理をはじめとする政治家や東電連中に大きな声で読ませたいものです。
by 海のアングラーしんちゃん (2011-06-28 11:22)
みなさん
みなさん おはよーございやす(◎o◎)/
あっしの自己満足の作品に 温かなコメント 恐縮でやす・ぺこりっ。
そう、「あっしの前世シリーズ」、今まで、ミミズ ボウフラ 乾燥ワカメ マッチの炎 と小さくて短命なものばかりだったので
今回は大きくて長く生きてるものにしてみやした(◎o◎)b
この作品の一番最初のきっかけになったのは お能で
---まぁ、あっしは古典芸能には明るくないんでやすが---
お能では、ゆっくりとふり向くことで何百年もの時間経過 という表現をする と聞き
それが頭にずっと残っていたので 小説に限らず 何らかの形で
ふりむいたら ものすごい時間が経っていた・・・
というのをひとつ書きたいな と考えておりやした。
ラストの3行、あっしなりにも とても思い入れ深い個所なので
そう感じていただけて とても嬉しいでやす。
あぁ、屋久杉と話してみたいでやすね。
きっと 森繁さんにエコーがかかったような声なのでやしょうなぁ。
愛犬さんの死、悲しいでやすね、合掌でやす。
あっしも 猫を亡くしたときのことを しばしば思い出しやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2011-06-28 11:39)
あちきは
何がなんでも
間にわせなきゃならないんです
血の通ったニンゲン同士なら
流れている時間もそうは違わない
結果ではなく、間に合わせたい その思いの丈
腕が千切れるくらいうんと伸ばして
季節や時間さえ巻いて巻いて
少しでも速く 助けにいくんだ!
とても素敵なお話です~
ぼんぼちさんだから書けるお話ですね(^^)
by recchu (2011-06-28 15:56)
リスの時間は短かったのですね。><
かわいそうですが、いいお話ですね。
by ぶーけ (2011-06-28 17:16)
ケヤキさんとリスさんの、時の流れの差が切ないです。
by ぜろこ (2011-06-28 21:29)
「あっしの前世シリーズ」いいですね!^^
いつも、いろんな事を気づかせてくれます。
本になったら、私、きっと買っちゃいますよ~^^v
by オレンジポピー (2011-06-28 22:52)
みなさん
みなさん、コメントありがとでやすっっっ(◎o◎)/
あっしが好き勝手に書いたものをそんなふうに言っていただけるなんて
嬉し涙ちょちょぎれでやすよん。
リスとかネズミの時間感覚って 現実にもとても早いんだろーなーと思いやすね。
よく、猫が 部屋から出たと思ったら また入れてくれと鳴いて
入ったら またすぐ出たがったり というのは
猫時間と人間時間の感覚の違いなのだそうでやすね。
人間にとってはちょっとの間が 猫にとっては ずーーーっと表にいた ずーーーっと部屋にいた と・・・
だから、リスみたいに猫より小さい生き物は もっと早いのだろーな・・・と。
ちなみに次の「あっしの前世シリーズ」、「あっしが羽毛だったころ」を勝手に公開しやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2011-06-28 23:33)
リスの血肉は養分となってケヤキの中を駆け巡り
新たな生を得たと思いたいですねぇ…
やめずに枝伸ばす努力もずっとずっと一緒に見てたと(/_;)
いつか違う姿でも再会できますように
by 夏音 (2011-06-29 00:02)
にゃんこのコメントありがとうございます。
写真が、とっても、アートですね。(^^)
by マユリィ (2011-06-29 00:21)
「ゾウの時間 ネズミの時間」を思い出しました。
木の場合、年齢はどう捉えたらよいのか分からない。
マトリョーシカ人形のようなものだから
by masakazoo (2011-06-29 00:43)
ご訪問とNiceありがとうございます(^.^)
切ないですが面白いお話ですね
最後のさいごまでどうなるのか
わかりませんでした 意外な展開でした(^.^)
では、また。
by 銀 (2011-06-29 15:28)
みなさん
梅雨はどこへ行ったやらの今日 こんばんはでやす(◎o◎)/
あぁ、いつか違う姿で再会・・・なんか、新たな作品のヒントをいただけたようでやす、ありがとでやす。
この小説、あっし自身は かなりありがちかなー と予測していただけに
意外な展開というご意見を複数いただけて 嬉しいでやす。
公開する前より この作品に対する思い入れが深くなりやした(◎o◎)b
街のケヤキの新緑も いよいよ色濃くなりやしたね。
アスファルトの照り返しの中だと もぁ~としやすが
木陰だと 若干救われたような気持ちになりやすね。
明日も暑いんでやしょうか・・・(◎o◎:
by ぼんぼちぼちぼち (2011-06-29 22:13)
物語というのは、このようにして作るのですね。このさりげなさが、とても参考になりました。
by 扶侶夢 (2011-06-29 23:21)
扶侶夢さん
あっしが無手勝流の趣味でこさえたものに そんなふうに言っていただけるなんて 恐縮でやす・ぺこりっ。
これからも あっしなりに精進しやすo(◎o◎)o
by ぼんぼちぼちぼち (2011-06-30 10:42)
ゾウの時間ネズミの時間を思い出しました。
切ないですなぁ
by 太陽の玉子 (2011-06-30 10:54)
太陽の玉子さん
そう、大きくてゆーーーーーっくり時間の流れるモノと向き合わせて立つのは
やはり こういうちっさな生き物だよなーと思いやした(◎o◎)b
言はむとしていたことが伝わって嬉しいでやす・ぺこりっ。
by ぼんぼちぼちぼち (2011-06-30 20:34)
ケヤキさんが助けに行けるの!?って思ったら、
やっぱり時間がかかちゃったのね。
毎年リスさんたちを見てたはずなのに、
13年たったら元気なリスさんでももういないかも・・・
って事に気づかなかったケヤキさんの叫びが、ちょっぴりコントみたいに思えて笑っちゃいました。ごめんなさい。
・・・でも、コント仕立てなお話に思えたの。
by お針子姫 (2011-07-01 23:17)
お針子姫さん
なるほど、コメントありがとでやす\(◎o◎)/
全ての生き物というのは、無意識のうちに 自分を基準にしている 言わば コントの登場人物のようなものかも知れやせん(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2011-07-01 23:23)
niceをもらってやって来ました。
引き込まれて読んでしまいました。
他の『あっし・・・』も、またゆっくりと、
読ませていただきます。
by KAI (2011-07-02 10:33)
KAI さん
あっしが好き勝手に書いたものに そう言っていただけるなんて 嬉しい限りでやす・ぺこりっ。
この「あっしが・・・だったころ」シリーズ、
あっしのブログ内マイカテゴリーの「小説」に飛んでいただけると まとめて出てくると思いやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2011-07-02 20:46)
生きるという期間、寿命の長さは
時間軸の違いで悲劇を生みますネ・・。
なんとも切ないです。
by つなみ (2011-07-04 16:53)
つなみさん
そう、このように どちらも悪くないのに 結果 悲劇となってしまうこと ありやすよね。
あと、もっと身近なことだと、流行歌の歌詞に時々あるように
夢を目指す男が「たった2年が待てなかったの?」
待つことだけに生きた女は「2年も待てないよ・・・」みたいな(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2011-07-04 21:43)